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世界の収穫はいつになるのか

Watanabe's Pop Picks 097
"Harvest For the World" - The Christians
from the single "Harvest For the World" (1988)

Harvest For the World



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 リヴァプールの良心的ポップミュージックの魂。これがソウルスタイルで展開されれば、そりゃ素晴らしいに決まってます。

 ロジャー、ギャリー、ラッセルのクリスチャン三兄弟というボーカリスト(ロジャーはアルバムリリース前に脱退しますが)と、ソングライティングと打ち込みを担当するヘンリー・プリーストマンからなるクリスチャンズ。

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 80年代後半に盛り上がって行く英国ソウル(これは80年代前半のNew Wave - 特にネオアコースティック/AOR、ブルーアイドソウルムーヴメントの発展・継承した先にあったものなので、個人的には大変感慨深いのです)の歴史に鮮やかな功績を残した彼らもまた、リヴァプール出身。何と言ってもファーストアルバムと、アイズレーブラサーズのカヴァー"Harvest For the World"が私の心のなかでは永遠の光彩を放つ人達ですが、マネージャーが以前紹介したWah!と同じということもあって、リヴァプールシーン馴染みの人達と人脈的にかぶるのでさらに思い入れが加わってしまうのです。まぁ、私のそんな個人的思い入れは抜きにしても、80'sリヴァプールの層の厚さはもちろんのこと、音楽そのものの奥深さ、幅広さはまたこういったソウルバンドでもよくわかるのではないでしょうか。

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 全英2位まで上昇した1stアルバム"The Christians"(1987)からの曲を当時のTOTP出演時の映像から。


■"Forgotten Town" -
 音自体は実にソフィスティケートされたポップソウルなのですが、社会を見据えた歌詞の真剣さもまた好きでしたね。




■"Ideal World"
まさしく名曲。




■"Hooverville"




 なお、彼らは長い休止期間(正式に解散はしていなかったようですが90年代は事実上そんな状態でした)を経て、ギャリーひとりを中心に新ラインナップで再編、再活動中の模様。プリーストマン氏の楽曲でないのだとしたら、これはまただいぶ違うのかも知れません。


 3曲聴いて、タイトルでもわかりますが、彼らの歌詞が当時の政治的状況にコミットしたものであったことを思い出しました。上のシングルが出た88年辺りの英国というのはサッチャーの保守党政権がほぼ10年を迎えており、今だ日本では検証・反省さえ出来ない新自由主義(この時代の英国だとサッチャリズム)による古き良き福祉国家としての英国の破壊が進み、英国のアーティストの多くは懸命に抵抗の声を上げていた時期でした。20年前、日本のみならずアメリカでも、スタイル・カウンシルやブロウ・モンキーズ、それに彼らのような英国のソウル系アーティスト達にある政治性は殆ど理解されなかったと記憶していますが、現在の世界的金融危機から発した経済状況を考えるに、彼らの当時の姿勢(何に反応し、何に抵抗したのか)を含めたその音楽的評価もまた、今後見直されて来るのではないかと思うのです。さて、日本では?




世界の収穫はいつになるのか_b0022069_1063466.jpg クリスチャンズのソングライターであるヘンリー・プリーストマン(元ヨッツ、元イッツ・イマテリアル、元ワー! / 現在ではマーク・オーウェン、メラニーCのプロデューサーとして知られる)が昨年スティッフ(今ではZTT傘下だというのも驚き)から出したソロアルバム"The Chronicles Of Modern Life"からの曲を。こちらを見たところでは、ヨッツ時代の曲もセルフカヴァーしていて興味深いです。少し捩じれた、ディラン風のボーカルになかなか味があり、彼の音楽的ルーツを見る思いです。






■"Don't You Love Me No More?" - Henry Priestman



■"Old" - Henry Priestman





■"Suffice To Say" - Yachts

 そのソロアルバムでプリーストマン氏がセルフカヴァーしているYachts(ヨッツ)時代のこの曲は、スティッフからのデビューシングルでした。プロデュースはウィル・バーチ(レコーズ)、そもそもヨッツがこの契約に至ったのはエリックスでのエルヴィス・コステロのリヴァプール公演の前座を務めたからで・・・いちいち書いてて興奮します(笑)。




■"Love You, Love You" - Yachts

同じくヨッツのデビューアルバムからのシングル。捻りの効いたパワーポップが粋です。




 ※mixiでずっと連載しているこのpop picksシリーズ、こちらのPENELOGでも、加筆編集し連載中。楽しんで頂ければ幸いです。
by penelox | 2009-04-17 10:12 | Pop Picks


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