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バブル・サマーと「想いが染み込んだ街や通りの歌」随想・・・・The June Brides

Watanabe's Pop Picks 185
"This Town" - The June Brides
from the single "This Town E.P."(1986)

 街や通りについて織り込んだ歌というのが好き。スタイルは様々だけれど、ビートルズ("Penny Lane"、"Strawberry Fields Forever")、キンクス(何と言っても"Waterloo Sunset")の昔から、ヴァン・モリソンなんて大御所中の大御所("Cyprus Avenue"とか)、コステロ("New Amsterdam"の一部かな)やXTC("Small Town"、"Respectable Street"もそうか)、スクイーズ("King George Street")、ジャム("Man In A Corner Shop")、ジョー・ジャクソン("Home Town")、マッドネス(特定出来ないけれど"Our House"を中心とした頃にそういうムードあり)、ジェットセット("Vaudeville Park")、80年代のインディーポップに至るまで、そういうスタイルというのはずっとあって、私自身、音楽を始めてからもずっとそういうタイプの楽曲にはインスパイアされて来たし、実際そういう曲を書いたこともあります。

 それはしかし、この街が、通りが好き・・・というような真っ直ぐな応援歌だからではなくて、作り手も含め、人々の、時には相反する感情が共存するような、単純ではない思いが染み込んでいる街や通り。そういう匂いを楽曲にも染み込ませようとしている人の営為を見つけるのが愉しみだからなんです。

 前回のウルフハウンズで裏通りや袋小路を想起したから書いてしまってるのかも知れないけれど、フィル・ウィルソンが率いたこの80年代英国のインディー・ギターポップバンドのThe June Brides(ジューン・ブライズ)のレパートリーにも、そんなスタイルのお気に入りがありました。




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 歌詞の一部をバックスリーヴにデザインとして記載していただけなので、そこから読み取れるメッセージはかなり主観に偏りますけれど、音楽を併せて伝わって来たのは、街への諦め/無力感と愛着がないまぜになった複雑な想い・・・といったところでしょうか。歌詞や歌い方からも当時前向きにイメージされる要素は殆ど窺えなかった。しかしそれでも、そもそも愛着がなかったら最初から(それもこんな快活なビートに乗せて)歌うはずがないという事実は残ります。甚だ主観的な思い入れではありましたが、そういうスタイル/方法論は当時の私にとって大変大きかった。

 これを聴くと、今でも即座に聴いていた頃、心の多くを占めていたこと - 自分の国(もはや街だけじゃなくて!)への愛憎ゆえに失望していたこと、英国留学に必死になっていた1987年の夏 - 当時京都にあったブリティッシュ・カウンシルに行っては留学のための資料集めをしていた慌ただしい日々のこと - を思い出すのです。まぁ、今から考えたら相当にナイーヴでしたが、21かそこらでしたからねえ・・・そんなもんでしょうよ。

 そんなナイーヴな失望と熱情の記憶とも共鳴するこの音は、いまでも妙に懐かしく、気恥ずかしく、そして目映い。この楽曲を熱心に聴いていた時代もまたいわば、私にとっての複雑な思いが染み込んだ街や通りでもあったことに気づかされるのでした。

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by penelox | 2009-10-15 13:19 | Pop Picks


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