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天空のリヴァーブに包まれたモダンワールドの天啓・・・Close Lobsters

Watanabe's Pop Picks 186
"A Prophecy" - Close Lobsters
from the album "Foxheads Stalk This Land"(1987)


 このところバタバタしていてなかなか更新できませんが・・・

 このところ、ちょっとばかり80年代後半英国の所謂「インディー・ギターポップ」に寄り道したい気分になっているので、そのあたりを色々と。

 「インディー・ギターポップ」という括りは、今では変に色が付き過ぎている気が私などはしていて、たとえば自分の音楽を聴いてもらうには一番便利な名称だけれど、正直言うとある程度距離を置いておきたい・・・と思うことがよくあります。というのもそもそもこの言葉は、単にインディペンデント(独立系)レーべルに所属した、ギターを中心としたアレンジのポップミュージックを指すというよりも、ある時代を象徴する、ある世代の思い入れに依拠した言葉だったからなんです。つまりは、パンク/New Wave進化論に基づいた時代精神 - 良質のアマチュアリズム(アート性とマス・アピールのバランスの維持)の継続- を、80年代半ばから後半において負託した音楽を指す言葉と言いますか。ところがいまでは、この音楽が象徴する精神的潮流も、またそれを成り立たせていた時代も、ずいぶん遠いものになってしまった。それゆえに、カタチだけが一人歩きして、今じゃもう、本質からずいぶんずれたものをそう呼んでる・・・当時を知る者としてあまりこの括りを口にしたくない、複雑な心境になるのは、ある意味仕方ないとは言え、そんな気がするからなんですね。だから正直言って、あの時代の音をそのままやられるのには大変な抵抗があります。その時代、地域の空気を吸ってれば違って来るのは当然なのだから、むしろ、違っていて欲しいぐらいなのです。あまりに似ていると、その狙いに却って懐疑的になりますよね。ただのコスプレに徹していることがその本質、というのならそれもアリだとは思いますけれど、それでも私なんぞはやっぱり何より、本当に良いものを創ろう、という気持ちが勝っていて欲しいと思うのです。カタチより中身。スタイルより心/気概。で、すべてが出尽くしているように見えてしまう情報過剰な時代だけに、そういう作品を成立させたり、見抜いたりっていうのがまた難しいんだろうなとも思いますが。だからこそ、あくまで自分の主観ではあるけれど出来るだけ音の背後で蠢く気概を客観的に見抜ける観察眼は磨いておきたいし、また客観的に聴きつつも熱意には共振できる、そんな情熱も失いたくない・・・そういう二面の並立を、常に意識したいなと思う次第。


 話が逸れましたが、要は、87年にこの曲を収録した1stアルバムを出したスコットランドはペイズリー出身のクロース・ロブスターズもまた今聴くと、C86とかギターポップなんて括りは忘れて欲しい衝動に駆られる、ということ。音の向こうに気概や気骨、それにモノ作りの意欲がしっかり根を張っている人達で、それこそが、上に書いた時代精神を象徴するものだったと思うから。




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 1987年という好条件もあったとは思いますが、彼らがギターを使った、いわば使い古されたスタイルを使いつつも、意欲的な攻めの音楽であったことは強調しておきたいものです。ちょっと聴きだとフェルトやコクトーツインズ、パステルズにも時折通ずるような、リヴァーブの効いたドリーミーなギターサウンドに乗った爽やかなVoスタイル・・・しかしそこで留まってないのが重要なんですよね。表層だけで捉えていると、彼らの本質を見失う気がしてしまう、重層的な、独特の攻撃性を秘めたバンドだったと思うのですよ。何しろこういう音を以てして、1stアルバム(上)のタイトルが"Foxheads Stalk This Land" - おおざっぱな理解として、「詐欺師どもがこの国に忍び寄る」 - だったのですから(ちなみに、2ndは"Headache Rhetoric" - 頭痛を起こしそうなレトリック・・・これもまた、やってられねえな的思いの詰まった、ロックとして素晴らしいタイトルだと思いませんか?)。この国というのが、英国全土を指しているのか、スコットランドを指しているのか、また、詐欺師どもとは誰なのか、当時のサッチャリズムに象徴される拝金主義者のことか・・・この曲のタイトルの「天啓」からもイメージできるような神秘さで歌詞にはっきりと示されないまま、天空のごときリヴァーブがすべてを謎のままに包み込んで進んで行く。しかしそれでいて、底に巣食っている観察眼や怒りはやはりじわじわと伝わって来るんです。音の夢幻性と現実を見つめる冷静さの重層構造(乖離、距離といってもいい)が音楽を大きくしている・・・これがいま思うに、当時22の私にはあくまで漠然とではありましたが彼ら独特の個性と感じられた部分ですね。20年経って今聴いてもやっぱりあの頃の私の神経が目を覚ましたところが音のそこかしこに潜んでいて、恥ずかしいのもまた事実なのですが、同じ時代じゃないからこそなのは重々承知のうえで、それでもいま出て来る似たような音楽の多くにも持っていて欲しい気概、意欲、挑戦心が感じられる・・・それも事実なのです。そういう意欲的な挑戦という意味で、あの時代のバンドとしては、初期のエコー&ザ・バニーメンやREMと比べてみたい要素が多い好バンド。


'Cause you don't know what you're doing
It's not surprising since you don't know what to do
だって君は自分が何をしてるのかわかってない
何をすべきかわからないんだから驚きもしないけど

And you don't know what you're saying
It's not surprising since you don't know what to say
それに君は自分が何を言ってるのかわかってない
何を言うべきかわかってないんだから驚きもしないけど


■I Kiss the Flowers In Bloom



■Let''s Make Some Plans
これはアルバム未収録だったと思います。





■Nature Thing

こちらはラストとなった2ndアルバム"Headache Rhetoric"(1989)から。



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by penelox | 2009-10-19 09:24 | Pop Picks


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