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8月10日 デモクラシー・ナウ! 「ヒロシマからフクシマへ:日本の原子力の悲劇」 エイミー・グッドマン

 8月10日に更新された、アメリカの報道番組「デモクラシー・ナウ!」の司会をつとめるエイミー・グッドマン氏のコラムです。

音声をもとにした動画(日本語訳付き)がありましたので、ぜひ御覧下さい。




 1945年、米国は原爆の報告書をもみ消し、2011年、日本は福島の放射能汚染を隠蔽。我々はいつになったら学ぶのか?

エイミー・グッドマン

 福島第一原子力発電所の構内で高濃度の放射線が観測され、1カ所では毎時1万ミリシーベルトという記録破りのレベルに達したことが分かった。原子炉の持ち主で信用ガタ落ちの東京電力が報告したこの数字は、実はガイガーカウンターで測れる上限値だったにすぎない。実際の放射線量は、文字通り、計測可能な範囲を超えていたのだ。1万ミリシーベルトの被曝は、ほんの短時間でも致死量で、数週間以内に死亡しかねない(ちなみに、歯科用X線による被曝量は0.005ミリシーベルト、脳のCT スキャンは、5ミリシーベルト未満だ)。ニューヨークタイムズ紙の記事によると、日本政府は、数十万人におよぶ可能性がある住民の退避にはお金がかかるため、それを避けようとして原発事故後の風向きと天候により放射性核降下物がどこに向かって運ばれていく可能性が高いかの公式予測の発表をひかえた。

 「秘密主義は一度採用すると病みつきになる」――日本政府の原発事故への対応を語るのにぴったりのこの言葉は、実は世界で初めて投下された2発の原子爆弾を創った主要人物の一人である、原子力科学者のエドワード・テラーが口にした言葉だ。「リトルボーイ」というあだ名をつけられたウラニウム爆弾は1945年8月6日に日本の広島市に投下された。3日後には、2発目の「ファットマン」と呼ばれたプルトニウム爆弾が、長崎市の上空で投下された。巨大な爆風と直後の余波で25万人近くが殺された。大勢の生存者を苦しめた苦痛に満ちたやけどから後になって起きた原爆症やガンにいたるまで、その後に続いた死と病いの全貌は、誰にもつかめていない。

 広島と長崎の原爆の歴史は、米軍の検閲とプロパガンダの歴史でもある。映像の公開差し止めに加えて、軍は爆心地への記者の立ち入りを禁止した。ピュリツァー賞受賞ジャーナリストのジョージ・ウェラーがなんとか長崎に入り込んだが、彼の記事はダグラス・マッカーサー元帥によって個人的に握りつぶされた。オーストラリア人ジャーナリストのウィルフレッド・バーチェットは、原爆投下から間もなく、広島にしのびこみ、「世界への警告」と題した報道を行い、広範に広まった病いを「原爆の疫病」と記述した。

 軍も独自の報道を展開した。ニューヨークタイムズ紙の記者ウィリアム・ローレンスは、米国陸軍省にも雇われていたことが、いまではわかっている。ローレンスは「日本が『症状』と呼んでいるものが、本当にあるとは思えない」という米国政府の見解を忠実に報じた。悲しむべきことに、ローレンスはこのプロパガンダでピュリツァー賞を受賞した。

 グレッグ・ミッチェルは、何十年にもわたって広島と長崎の原爆の歴史とその後遺症について書き続けている。今年の長崎の原爆記念日に、彼の新著『原爆隠蔽工作―2人の米兵、広島と長崎、そして作られることがなかった偉大な映画』(Atomic Cover-Up: Two US Soldiers, Hiroshima and Nagasaki, and the Greatest Movie Never Made)について、ミッチェルに話を聞いた。

 「核兵器または核エネルギーに少しでも関連したことはすべて抑圧され、社会への危険にされるのです」とミッチェルは語った。長年にわたり、彼は原爆投下後の数カ月間に米軍が撮影したニュース映画の映像を探し求めた。高齢化しつつある映画制作者たちを追跡し、数十年にわたる政府の機密扱いをものともせず、彼は驚くべきカラーフィルムのアーカイブスを公表したジャーナリストのひとりになった。米国の戦略的爆撃調査の一環として、映画班は両都市の荒廃だけでなく、子供も含めた民間人の重度のやけどとケロイドをクローズアップで見せる臨床記録も映像におさめた。

 ある場面では、一人の青年が治療中の背中の赤く生々しい傷をみせている。ひどいやけどと治療が数ヶ月も遅れたにもかかわらず、青年は生き延びた。現在82歳の谷口稜曄(すみてる)さんは、長崎の原水爆被害者団体協議会の代表だ。ミッチェルは、日本の新聞に掲載された、原爆と福島の事故をつなぐ谷口さんの最近の言葉を見つけた。

 「核と人類は共存できない。それは私たち被爆者が、はじめから言っていること。それを『平和利用』とごまかして進めてきた。天災はいつどこで何が起きるか分からない。『原発事故が絶対ない』なんてことは言えないんですよ」。

 新旧の惨事が皮肉に重なり合う中で、私たちはその両方の生存者たちの声に耳を傾けるべきだ。

(翻訳:大竹秀子)
調査協力:デニス・モイニハン


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 ここでお話に出て来る、グレッグ・ミッチェル氏については、その前日の9日に放送された「米国が隠したヒロシマとナガサキ」を当ブログでも12月7日に紹介致しましたので、ぜひご参考下さい。

8月9日 Democracy Now! 「米国が隠したヒロシマとナガサキ」
by penelox | 2011-12-27 22:45 | 震災/原発関連+社会全般


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