from album "Shouting Quietly"(1989)
12/11 久々にまる一日休みが取れたので、部屋の掃除をして、ずっと密かに温めて来たプロジェクトを開始。 プロジェクトというと大げさだけれど、あの戦争の事について、当時直接経験した人達の肉声を記録しておきたいのだ。と言うのは、今の高校生を見ていて、親も戦争は経験してないし、その親自体何も子供に伝えてないから、知識もなければ想像力も使えない...そういう恐ろしい状況が進行していることを日々痛感しているからだ。自分はもちろん直接経験はしていないけれど、子供の頃から何かというと戦中派である両親に教えられたし、また良きにつけ悪しきにつけそんな戦争文化、語り継ごうという文化はまだ、昭和40年代から50年代には盛んだった気がする。 しかし1980年代に入りバブルへと向かい、団塊世代がメディアの実権を握りはじめると、語る事自体が忌避され始めたというか、妙に日本の「戦後民主主義」を否定しようとする動きとともに、戦争を真摯に語ろうとする文化が攻撃を受ける事が増えた。それは、経済大国にのぼり詰め「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といった意識を持つに至った段階での傲慢さともセットになっていたとも思う。 よく当時はお題目のように戦争反対、と唱えられていただけで、だから実際は何も考えて来なかった...なんて言い方がされていたが、聞いていた立場の自分たち戦後世代がちゃんとそれを咀嚼し、次世代に伝えてないのがまず大きな問題のような気がするのだ。親の世代に反発するばかりで、何も学んでなかったんじゃないのか...だからたとえば最初の戦後世代の親に育てられたいわゆる団塊ジュニアにはあまり伝わっていないのかな、と。 最近の30代半ばから30前後ぐらいの人達は、歴史に関して自分ぐらいの年代とはずいぶん違う空気を持っているなぁと思うことが多い。それは、結果的に言えば非寛容な保守と言っても良いが、戦争、戦後という状況に対して、そこで培って来た反戦意識、違う価値観への理解、民主主義の重要性への理解度、そういったものへの敬意、関心が異様に薄いな、という気がするのだ。 それは、親が既に団塊世代(昭和20-23,4年生まれ)、もっというと戦後第一世代(戦後生まれ、というのではなく、戦争が終わった時に物心がついていたかどうか、つまり昭和20年の段階で何歳だったか、である程度分けられると思う。昭和14,5年生まれあたりが分かれ目かな、という気がする。このあたり以降だと、リアルな戦争体験、戦争はこりごり、という記憶が植え付けられていない人が多いのだ)だから、というのもあるだろう。特に団塊世代だと、その両親は戦争世代で、直接戦場にいった父親もいるだろう。そこで何がしかが語り継がれたら良かったのだが、思い出したく無くて語らない人もいる訳だ。その子供となった団塊世代の多くは上の世代への反発、もしくは企業戦士になって企業の論理に同化してしまったということもあって、親世代の戦争体験をしっかり聞き、検証し、想像力を使うことを忌避したまま来てしまい、まして自分の子供達とはそういう会話に関しては乏しかったのではないか。だからその団塊ジュニアには何も伝わってないし、今の高校生(親が自分とほぼ同世代になりつつある)に何も伝わってないんじゃないのか。全てそうだと言い切るつもりはないが、傾向としてはだいたいそんな説明が出来ると思う。 そして、これは非常にまずいと思う。たとえば今の日本の「オール小泉自民支持」みたいなファシズム的状況は、過去への無関心、過去とのつながりで現在がある、という意識の希薄さが大きいと思うからだ。絶えず「今」のムードと「未来」への不安(未来への不安は過去への無知が作り出すということをどれだけの人が知っているのだろうか)に流されているだけ、という。 それで、まずは周りの人間にインタビューし、過去とのつながりを形に残して行きたいと思うようになった。 それでまずは、オフクロから大連での暮しについてきいている。なかなか面白い。ちょっとした日常の話が特に。清朝最後の皇帝であり、満州国皇帝となった溥儀(ふぎ)が日本から戻って来る(おそらく天皇との会見後)際にお迎えに大連港に駆出されたそうな。ある意味歴史の生き証人なのだなぁと思い知る。 ルポであれ、小説であれ、もしそれを将来本にまとめられたら...というのは夢だけれど、間違いなくそれを元にした音楽は作るつもり。そのために久々に曲作り。これはたぶん、3枚先の作品になると思うので、何年先かはわからないけれども...。 まずは机の前にMDレコーダーとマイクを置いて、アコギと声だけで3曲ほど。やっぱり、これが何より楽しい。歌詞の内容はきっとヘヴィーになるが、曲の明るさがそこにより開かれた視点を与える - それが音楽の面白いところであり、可能性でもあると思う。 上のBradfordの名曲、まさにタイムレスであり、エヴァーグリーンな、時を超えた1曲なのだが、音楽そのものが過去と切り離されている訳ではないし、現在と切り離されている訳でもない。受け継いだものがあり、未来に投げかけたものもあった。 切り離すのは人間であり、力がそうするのだ。それは、音楽業界で言えば、メディア。 それは恐ろしいことだと、もっと意識すべきではないだろうか。自分だけが力から一時的に逃げ切れたらいいとか、そういう類いのものではないのだから。 音楽もまた、歴史の生き証人である。
by penelox
| 2005-12-11 23:59
| New Wave
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