主題歌「故郷は地球」 (作詞: 佐々木守/作曲: 猪俣公章/歌: 柴俊夫、ハニーナイツ)
5/7 ファミリー劇場の「シルバー仮面」を録画、30数年ぶりに鑑賞。興味深い! シルバー仮面とは。 「月光仮面」で知られる宣弘社が、円谷プロの照明担当であった小林哲也氏が中心になって設立した「日本現代企画」、同じく円谷作品に関わった実相寺昭雄氏や大木淳(淳吉)氏らが設立した企画プロダクション「コダイグループ」、このふたつの協力のもと製作された番組で、1971年(昭和46年)11月28日から1972年(昭和47年)5月21日までTBS系で毎週日曜日19:00 - 19:30に全26話が放送された。放送初期は等身大ヒーロー物であったが、11話よりから巨大ヒーロー物に変更され番組の題名も『シルバー仮面ジャイアント』に改められた。 (wikipedia他による解説を補足、編集) ちょうど私の幼稚園年長時から小学校1年時に放映されたこの番組、一話一話きっちり覚えている訳ではなかったが、何故か細かい設定も知っていたし、かっこいいなぁと思っていた。敵が怪獣じゃなくて宇宙人ばかりなのも、「ウルトラセブン」みたいで大人っぽい印象だった。よく「ミラーマン」と放送時間がかぶっていた事が云々されるが、どちらが好き、とかはなくて、どちらも好きだったし、どちらも観た覚えはある。まぁ、自分にはチャンネル権など事実上なかったから(兄貴が観ていたら観れる...それだけのことだった。いずれにせよウチは常にNHKにしてあって、なんとか両親の目をかい潜るしかなかった)、ほんの限られたチャンスでガチャガチャとチャンネルを回し、両者を一生懸命目に焼きつけていたのであろう。「巨大」篇のCM、「シルバー仮面が大きくなった!」なんてスポットをやっていたのも記憶に残っている。 何より忘れられないのは、「シルバー仮面」のレコードの事だ。当時6歳の私はこの主題歌「故郷は地球」が大好きで、初めて欲しいと思って買ってもらったレコードなのだ。しかしそれは私だけのものとしてではなく、兄弟みんなのものとして買ったように思う。買った場所は確か阪急宝塚南口駅の下にあったレコード店。 ところが、誰がその主題歌を最初にかけるかで兄弟で大げんか。取り合いになり、かける前にレコード盤がグニャニャに曲がってしまったのだ。泣きながらかけた、反り返り歪んだドーナツ盤。この光景はいまだに忘れない(恨んでる、というのではない)。 実際はどういう曲なのか、アタマの中で一生懸命思い出し、反芻しながら、ジャケットにあった宇宙人の名前(チグリス星人とキルギス星人)と写真を食い入るように見ていた...シルバー仮面とは、私にとってはそういう、子供時代の記憶の中の大きなピースなのであった。電球を見るとキルギス星人を連想したりといった具合に。 だから、最近になってインターネットでこの番組に関する資料、批評などを読むことできるようになって、いやはや凄い時代になったなあと、感慨しきりなのである。 私自身、最近は特に、特撮に限らず昭和40年代のドラマ全般を興味深く観ているのだが、どうやら同好の士も多いようだ。ちょっと検索するとそういったページが次々に出て来るのだが、だいたい運営されている方の年格好も同じぐらいで、それもどこかわかる気がする。 テレビドラマは、日本の変化を視覚的、感覚的に知ることができる貴重な資料、手かがりのひとつなのではないだろうか。もちろん、単なるノスタルジーの要素もあるのは否定しないが、過去に色んな忘れ物をしている現代日本人の、未来へのヒントが、過去の作品には常に隠されている気がしてしまう。えらい大袈裟にきこえるかも知れないが、真剣にそう思う。 で、この「シルバー仮面」、先日二日に渡り、前半の「等身大」篇の10話が放映されたのだが、今の視点で観ると「特撮ヒーロー物」というフォーマットが固定されていない時代(「変身ブーム」「怪獣ブーム」という言葉はあったが、「特撮ヒーロー物」なんて言葉はまだなかったのでは?)がゆえの自由さ、チャレンジ精神、揺れ動いた世相を如実に反映した、改めていかにも1971年らしいドラマだなぁという印象である。いわゆる昭和46年組の「帰ってきたウルトラマン」「スペクトルマン」「ミラーマン」「仮面ライダー」、そしてこの「シルバー仮面」といった番組が、この年から始まる第二次怪獣ブーム(変身ブーム)を中心とした子供文化を牽引した事はよく知られているけれど、その中でも「シルバー仮面」の立ち位置はかなり独特で、しかもチャレンジ精神に溢れた意欲作、異色作だったのだなと、改めて思う。「視聴率」という怪獣には破れ去ったのかも知れないが。 60年代から70年代にかけてのTVというメディアの社会的地位を考えてみれば、60年代初めから中頃までは、娯楽の王道と言えば(徐々に低迷しはじめていたとは言え)まだまだ映画であり、TVはそれに比べてマイナーな存在だった。それゆえ、様々な実験的な番組を作る余地がまだあったんだろうなと思う。スポンサーからの圧力も今ほどではなかったのだろうし(余談だが、番組コンテンツの少なさや、映画界の五社協定という体制ゆえに、TVは海外のドラマを放映する事が多かったようで、それゆえに新劇の若手俳優がTVに進出し、声優としても多数起用され、それがいわば日本の特撮文化、海外ドラマの声優文化、アニメ文化の隆盛につながったというのは興味深い。子供向けと目されるこういった番組が当初これほど豊かだった理由のひとつであろう)。 それが、60年代末を境に、映画界の不振、斜陽が進み、主役はTVへと一気に移り変わって行く。それはまたこの新しいメディアに、露骨な商業主義、視聴率至上主義が急速に浸透して行くことも意味していたのだろう...東宝映画の匂いが残っている「ウルトラマン」「ウルトラセブン」と、TBS色の濃い「帰ってきたウルトラマン」では、4年という時間以上の変化が読み取れるのである。そして、その時代の変化が、71,2年のこういった番組での実験→後退、その後の露骨な子供向けへのフォーマットのパターン化、といった動きに集約されているようで興味深いのだ。つまり、「シルバー仮面」が2クールで終わったのも、たとえば「ウルトラマンA」が男女合体変身という設定を廃してしまうのも、色々な要素が急速に失われ整理されて行く71,2年の象徴ではないのかな、と。 だから、もしこれを読んで興味を持たれる方が万が一いらっしゃるとしても、くれぐれも、怪獣や宇宙人(侵略者)から地球を守る正義の味方による「ヒーロー特撮」、というカテゴリーを当てはめても、あまり楽しめないということは留意していただきたい。上に書いてあるような、「ヒーロー物」という見方さえ、無理がある気がする。そこからはみ出して来るドラマ性の方が重要に思えるから。 むしろ、怪奇SF色の濃い特撮や変身、宇宙人との闘い(しかしこれもあくまで、地球人による将来の宇宙侵略を警戒して宇宙人が地球に来て邪魔をしている、という設定である!)は大前提としてあるけれども、兄弟愛を縦軸に、人間の心に潜む弱さ、欲望などを横軸とした基調で、苦難の中での兄弟の人間ドラマを紡いで行く、SFロードムーヴィー、「春日兄弟放浪記」といった趣き...そう思って観ていただいた方が楽しめるであろう...あくまで前半10話を観た感じではそんな印象を持った。ちなみに実相寺氏の著作によれば、当時日本でも人気のあったアメリカのドラマ、「逃亡者」がベースになっているそうだ。 「ウルトラマン」の名作のひとつに数えられるエピソード「故郷は地球」(宇宙飛行士ジャミラの復讐劇)と同タイトルを持つこの主題歌。ちなみにウルトラマンでその話の脚本を担当した故・佐々木守氏(ちなみにその話の監督は実相寺氏)がこの曲を作詞したのはやはり何か故あっての事のだろう。作曲は演歌界の大御所、故・猪俣公章氏。歌うは現在「レディース4」の司会でお馴染み(?)の、主演・柴俊夫氏。ちなみにこのシルバー仮面でも第1話(「ふるさとは地球」!)、第2話はこの佐々木-実相寺コンビによる作品となっていて、それも面白い。 この歌に話を戻せば、昭和という時代を強く印象づける、哀愁のメロディーの光る名曲。やっぱりこの時代の特撮ドラマの音楽はつくづく豊かだと思う。
by penelox
| 2006-05-07 23:59
| 懐かしいテレビ番組/主題歌など
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