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大橋巨泉氏のオフィシャルサイトに、週刊現代のコラム「内遊外歓」終了についてのメッセージが。 こちらがそのコラムの最終回。 で、こちらがその反響を受けての巨泉氏からのメッセージ。 唐突な終了に、各方面からかなり反響があった模様。やっぱりあのコラムを目当てに「週刊現代」を読んでた人は多かったのだと思う。コンビニで買える雑誌では数少ない真っ当なコラムのひとつだったので、残念に思う人は多いだろう。コンビニで買える、というのは、常に移動している私にとってはとても貴重なのだ。何しろまともに本屋がない町もあるし、時間帯によっては本屋がもう終っている場合もある。 (ちなみに前の私の日記で書いた経緯は私の見間違いでした。実際は新編集長が直接会って話すこともなく、メールで通知、と書いてしまいましたが、電話一本でただ終了を告げて来た、という事です。いい加減な事を書いてしまいすみません) 彼の文章にいつも貫かれているなと思う思念は、特にこの部分に現れていると思う。 引用になりますが。 ボクが議員になったのも、発言を続けているのも、ただただひとつの使命感のためである。皇国少年として洗脳され、「兵隊さんになって、天皇陛下のために死ぬんだ」と本気で思っていたボクに訪れた8月15日の敗戦は、信じられない程のショックだった。ひと口に百八十度の価値観の転換というが、今の人には想像がつくまい。昨日まで正しいと教えられて来たものが誤りで、黒と言われて来たものが白になるのである。少くとも11歳の少年にはムリであった。終戦の日から約1年間の時間の記憶は、ボクの72年間の人生の中から完全に抜け落ちている。少年は少年なりに、懸命に適応させようと、考え続けたのであろう。 '47年になって疎開先から帰京した頃には、少年は民主主義を享受していたと思う。平和憲法ほど、ボクの心を躍らせたものはない。「これでもう兵隊になって死ななくても良いんだ」。“敵性”と禁じられていた野球も出来、ジャズも聞ける。国のための個人でなく、世界は個人の集まりで出来ているIIこの価値体系は死ぬまで守って行こう、と決心した。そして多少の紆余曲折はあったものの、この国はそれに添って進んで来た。それが怪しくなって来たのである。ボクが憲法改正に反対なのは、短かい人生の中で、価値観の転換は二度できないからだ。あの大転換、1年の空白を体験した人間は、それを続く世代に伝えてゆく義務がある、という使命感である。 私が子どもの頃、親から絶えずきかされていた事、思春期に色々と反抗し、無視し、反発し、自分の生き方を貫こうとしても、結局忘れることが出来なかったのが、実はここに書かれている事と同じだった。私の両親は1932年(昭和7年)生まれ、巨泉氏の2つ上。学年にすると父がふたつ違い、母はひとつ違い、ということになる。上にもあるような価値観の凄まじい転換を経験した世代を親に持つ私達の多くが、戦後世代の親に育てられた世代とはかなり違う教育を受けていた事-論理だけではない皮膚感覚として叩き込まれた、権力への盲信を常に懐疑する姿勢、自分のアタマを使って粘り強く考える事の大事さ、民主主義への前向きなビジョン...それらを自覚し始めたのは、私自身はある程度の年齢になってからであり、それを次世代へのバトンとして渡されていた事に気付いたのもまた最近の事だった。 かつては昭和40年代や50年代を、子ども時代のノスタルジー、として想起する事が多かったが、最近は、戦中世代の文化が開花した時代、としてもう少しよく見るべきだな、という思いが強くなって来ている。少なくとも、団塊世代の文化が開花した(?)昭和60年代の拝金主義的陳腐さよりは、よっぽど見るべきものが多い。 この巨泉氏の姿勢の一端である、昭和40-50年代に司会を務めた「11PM」などにおいて強調されていた当時のレジャー指向の側面については、上記のような前提で考えるべきなのだが、それが下の世代にちゃんと伝わったとはとても思えない。たとえば、テリー伊藤氏が養老孟司氏との対談本の巻頭で次世代(この場合ご自身の団塊世代以降)への悪影響を揶揄気味に(つまり、巨泉氏がさんざん日本人に享楽指向を煽った癖に、引退したら今度は逆の事を言いやがって、みたいな)語っているところにも窺える。おそらくテリー氏のようなひと世代下の団塊世代からすると、昭和ヒトケタ世代の理想主義、戦後民主主義への思い入れとそのブレなさが、羨望と尊敬、しかし同じ皮膚感覚としての経験を持たないがゆえに反発を引き起こし偽善に映るのであろう。全共闘世代としての恨みもあるのだろうし。たとえばビートたけし氏にしても、ひたすら巨泉氏を揶揄するのは、もちろん愛情も籠っているけれど、この世代全体に対して無意識に出るコンプレックスと反発心に見える。 昭和60年代というのは、そんな団塊世代の、昭和ヒトケタ世代への反発が原動力になっていた要素もあるのだろう。
by penelox
| 2006-05-21 23:59
| 本
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