9.23 Penelopes Live At Peace Bar(2) ライブ手記

(mixi日記より)

 週間予報での雨との予想に自分らしいと苦笑いしていた23日、予想外に澄み切った青空にやや戸惑いながら、それでも、いつもの通り、ライブ前の繰り言を唱えている自分もまた、そこにいた。

「さあ客は一人も来ない。
これで清清しい気分で全てを終わりに出来るぞ、良かったな」

ゼロに救われる(*1)ことを夢想しながら、それでもライブが始まるのを待つのを面白がっている。いつのまにやら、Peace Barは人でごった返していた。

 演奏前、前座のBoyfriend's Deadの優しいギターの壁に浸る中、Velvet Moonのchou chouさんからかつてのフールズメイト誌(80年代前半〜半ばはNew Waveを取り扱う数少ない雑誌だった)の編集長を務めた某氏が数日前に亡くなった事を悲しげな表情で告げられる。そして、その当時の音が今夜のイベントには鏤められていて...と後は言葉にならない御様子。

b0022069_14322481.gif そう、そんな音を鏤めた夜なのだ。80年代前半の、新しい黄金の夢(*2)があった時代...その気運を呼び出すような、そんな一夜になりそうな空気を感じたのは、いらしているお客さんの多くに刻まれた年輪だけが原因ではなかったのだ。よく目を凝らせば、若い世代の方、90年代に思春期を送られたのであろう方もいらっしゃる。みんな、飢えているのだ、80年代が何であったのかについて、珍奇であろうと何であろうと、「心」ある、まともな解答例を確認しに、答えあわせしに来ているのだ。何が始まるかわからない不安な表情ではなく、その飢餓感はまるで狼のよう(*3)であっても、その期待感は月の全体(*4)を確認しようとするかのような愉しげな勢いに溢れていた。敵視するような視線は殆ど感じない。温かい...こんなのは初めてである。

 昨日の演奏を改めてMDで聴くと、後方にマイクをセッティテングしたせいで、ドラム大きめ、Vo、G小さめに聞こえるのだけれど、観てらした方にも私のギターの音が少し聞こえにくかったとおっしゃった方がいた。外にどう聞こえてるのかとは別に、自分の出してる音、人の出してる音、そしてそれらがどう混じりあってるかを把握するというのはなかなか難しい。サウンドチェックで確認していても、いざライブが始まると、お客さんが入って音の響きが全く変わってしまうから、実際は演奏が始まってからしばらくはもがく。自分が出してる音とのキャッチボールを成り立たせるための、そのもがきの中で、お客さんを楽しませつつ出来るだけ早く今進行中の「ライブ」でのこれ、という音を掴むのが重要なポイントであり、難しいところ。

 それを考慮に入れても、どうあってもいつも最初の曲は、Voが上ずり、異空間で寄る辺なく彷徨っている感じになるのが情けない。しかも今回の場合その一曲目の'Vehicle'は、モータウンやジョニー・テイラーみたいにやりたいという、そんな夢のロケット第一段階みたいな曲なのである(歌詞は内省的に、暗闇から少し陽が射す感じ)。こんなんではいけない。もう少し余裕が出る感じにしたいものだ。ナッシーのドラム、宮田のベースが後輪をパワフルに回すと、マリリンのオルガンと西出のギター(13年前はこのバンドでオルガンを弾いていた彼が、キャップにTシャツの出立ちで横に立っているのは感慨深い)がリズムに導かれ、前輪がうまく滑り始める。ハンドルがまだ頼り無いが、そろそろと、Penelopesが前進する。

 まるで阪神杉山の立ち上がりのような1曲目から、新曲の2曲目、3曲目へ。モータウンの80年代解釈風の'Melt the Snow'、バッドフィンガー(ストリングスはIcicle Worksの"Who Do You Want For Your Love?'へのオマージュ)の世界に接近する'1983'と、ニューアルバムの中でもキャッチーなものを続けて。あまり間を置かず次に、という流れは、メンバーのアイデアから出たものである。'1983 'のサビの"Somewhere deep inside..."の部分、物凄く高音を出すところがあって、いつも目眩をおこしそうになるのだが、それが自分の中ではひとつ枷を外す儀式でもあって、この高さまで行ってはじめて自分的にライブの「これ」に入って行ける気がする。当初練習中はマリリンが高音で私が低音のハモりだったのだが、無理を言って逆にして貰った。低音の出にくいマリリンさんには申し訳なかったが。

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 グライダーが無事に滑空したところでのMCはいつも難しい。あの、とか、ええっと、まぁ、という言い回しを出来るだけ入れず、簡潔でなおかつわかりやすく、不自然さのないほどよく楽しいスピーチ....というのには程遠い。そもそもが自分の地声の音程、感触が嫌いなので、ここを気分よく乗り切れた試しがない。失速しないようにするのが精一杯。

 'Frivolous'、'Evergreen'、'Sweets'、と新曲2つで1stの曲を挟んだ。最新曲が最初の設計図からどれぐらいズレないでいるのか、それでいてどれくらい成長しているのか....それを自分自身に問いつめるつもりだったのか、うまく混ぜてみたいというのもあったのか。だいたいそういう流れは無意識の動く方向で進めるのだが、後でその理由がわかる事の方が多い...実に音楽というものは、意識を映す、心の鏡という感じがする。奇しくもそう感じたのは"Sweets"の"Cause love's a mirror to me'のラインを歌っている時。いつもこの曲の途中で意識が別のところへ行こうとする。

 すぐ右手に弟夫婦がいるのがやりにくい。子供の頃の習性で、要らん突っ込みを入れないかと心配になる。いや、そもそも彼は私に頼まれて写真を撮るためにそこにいるのだ! それを忘れるというのは...やっぱり心が異空間に彷徨っているのか?

 すんでのところで集中力を保てたのは、'Evergreen'での、前座をつとめて下さったBoyfriend's DeadのBobbie氏のひときわ熱い応援のおかげである。歌ってくれるのがこちらからはっきり見えるというのは、この上ない援軍。演奏という現実に引き戻してくれた。

二度目のMCではベースの宮田もスピーチ。感極まった感謝の言葉に会場、熱い拍手。

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 最後の曲'Midday Stars'は、バンドのメンバーがおそらく一番愉しげに演奏してくれる曲。特にドラマーのナッシー。ふだん度々目を瞑り、恍惚の表情を浮かべながら演奏するのだが、ライブではVoゆえに、あまりお客さんに背を向けられない。今回はその表情をチェック出来なかったのが残念。
マリリンが工夫に工夫を重ねたキーボードアレンジも忘れてはいけない。こういうフォークロックはやっぱり今の編成では一番しっくり来る感じがする。'I Saw A Midday Star Hidden In the Sky'のラインを歌う時、これはウルトラの星の事なのか...いつも自問している私がいる(笑)。

 アンコールなどかかるとも思わず、結局'Evergreen'をもう一度。今度はBobbieさんがディランの某曲のごとく紙にサビを書いて皆さんに見せながら。私も時折サビは歌わずお客さんに歌って貰う。こういう事をライブで出来るなんて予想だにしていなかった。そのお客さんとの一体感、親密さは、藤川球児登板時の甲子園にも負けやしないと思った。
 
 思うに、たぶん今迄のPenelopes史上一番ストレスのないライブだったのではないだろうか。それどころか数少ない「心ある」ライブであり、イベントだったと思う。ライブとはストレスが溜まるもので、ストレスがあるのがライブだという認識だった自分にとっては、面映い。こういうのがある部分理想なんだな、という確信が認識出来た...そのことが一番の収穫だったような気もする。

 ライブ後の打ち上げでBobbie氏が「Attitudeのあるポップ」という表現を使ってPenelopesを評していた。"P.W.A."("Penelo with Attitude")、というのは昔からのテーマだったような...そんなこじつけが頭に浮かんだのは言うまでもない。


*1: Saved By Zero - The Fixx
*2: New Gold Dream -Simple Minds
*3 Hungry Like The Wolf -Duran Duran
*4 The Whole Of The Moon - The Waterboys
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by penelox | 2006-09-25 21:07 | The Penelopes関連


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