1983

(Track 02 - from album "Summerdew Avenue" by The Penelopes)

 1949年に書かれた有名なオーウェルの近未来小説「1984年」を少し匂わせてみたくてわざわざこんなタイトルにしたのですが、それは、あそこに描かれた未来の管理社会の恐さとはかけ離れた、思春期ならではの強烈で切ない恋心や、揺れる思いが、そのたった一年前の地方都市に暮す少年の世界にはあったという、まぁ当たり前なんですけれどそんな昔と変わらない苦さ、儚さを綴ってみたかったからなんですね。1940年代終わりの人から想像した1984年頃というのがあんな感じだったとして、実際世の中はもっとひどくなっていたのかも知れないけれど、いや、まだまだ悲しいぐらい普通の人間らしさも残ってたんだよ、オーウェルさん(笑)、と...そんな風に、21世紀から俯瞰して、自分の当時感じたほろ苦さやせつなさをちょっとトリビュート風のタイトルで短編小説風に振り返ってみた作品です。ですから、直接「1984年」と関係ある訳ではないんですけれど。

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b0022069_104901.gif 1983年には言うべきことが多すぎる....という、中年になった主人公の心の呟き。彼にとってこの時代は、忘れようのない青春時代であって、その時に出会った女性と、お互い何かを感じていながら結局は結ばれる事もなく、時間が流れて行った事が、いつまでも心のどこかにひっかかっていましてね。20年経って偶然再会した時、彼女にはもう子供がいて、当然ながら、お互いがもはや別の世界に暮していることを自覚せざるを得ない。しかしこの再会はまた、お互いがそれまでを振り返る機会にもなり、正負いずれであろうともともかくは、エネルギーを与えてくれるものでもあった。子供の手を引き、一見冷静を繕い、距離を置いた硬い微笑を浮かべる彼女。日常の中に埋没しているように見えた彼女も、話をしてみると、実は埋没しているというより、そうやってかろうじて堪えているだけで...。多くは語っていませんが、結局のところはふたりとも、様々な感情に蓋をし、苦さを抱えたまま、またこれからも日常を生きて行かざるを得ないと思う。しかし、それもまた、ある種人生の妙味なのかも知れない、とか...。そんな物語を先に組み立てて、そのBGMになるように作って行きました。たぶん、それと似たような話が周囲から洩れ聞こえて来る年代になったから、というのも書く契機にはなったと思います。

 ところで、本当にあった話なのかというと、ある部分までは実話です。実際は私が15歳、1980年にあったある強烈な片思いが、20年後にある結末に至った、その事がベースになっています。当時のあの胸の高鳴りや、心の叫びはいまだに心の奥底の小さな疼きのように覚えていて、あんな風に好きになることは、もう二度とないような気がどこかでしていたのです。それが、何故かある日、何の因果か思いがけず突然、その件に結末がもらえた。あの時ほど自分が、運命か何か、目に見えない力に導かれている気がしたことはありませんでした。で、それを少しいじって、"1980"とはせず、1983年に舞台を変えてみた訳です。

b0022069_16322848.gif 曲全体としてはバッドフィンガーやラズベリーズへの思い-彼等の音楽は若い頃特有の甘酸っぱさをたっぷり含んでますよね-を、賑やかなパワーポップで詰め込んだ感じで、歌詞の苦さと拮抗するせつなさを強調しようとしました。

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イントロのアレンジにはアイシクル・ワークスの"Who Do You Want For Your Love?"(87年の3rd "If You Want To Defeat Your Enemy..."に収録)へのオマージュを入れてみたつもりです。

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by penelox | 2006-11-14 23:59 | The Penelopes関連


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