Sick of You - The Penelopes



from album "In A Big Golden Cage"(1993)


 初期の曲は、何か他にはない面白いものを作ろうという意気込みと、アイデア、テーマがたくさんあり過ぎて、それを整理し切れない状況がもろ反映される...その、実に当たり前ながらなかなか気付かないことを最近色んなバンドを聴き直して改めて思い知っています。

 ある意図に基づいてある種意識的に「曲を表現の道具として使おう」とスタートしても、無意識に出て来る決意表明、意気込みの熱量もまた大きく、それらに押し切られてしまうことが多いのでしょう。私の場合そうなったのは、たぶんまだ当時は音楽を作るということが、思春期に出せなかった思いを吐き出すプロセス、としての要素が強く、真に意図や計画性を持った創作にはまだ達していなかったからなんだろうなと思います。それに、作品を果たして作り続けられるのか、その不安のほうが強く、要するに余裕がなかったんですね。ですから当時としては自然ではあるのですが、どうにもぎこちなく、今聴くとピントのズレやちぐはぐさが目立ち、恥ずかしく思えてしまうのです。まあでも、否定しても仕方ないのですが。ともかく、これもそんな類いのひとつでした。

27歳の時に出した1stアルバム、"In A Big Golden Cage"から。

Sick of You

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(注・前回の"Evergreen"はアップを終了しております。ご了承下さい)



このアルバムのブックレットには訳詞がついていなかったので、ここに書いてみます。本邦初公開、こんな感じの内容でした。


ああ 君にはうんざりだ
だってわかってくれないから
教えてほしいよ 一体誰が
君にわからせるんだろうな

ああ 君にはうんざりだ
だって わかってくれないんだもの
教えてほしいよ 一体誰が
君を苦しめられるんだろうか

ああ 君にはもううんざりだよ
だけど ひとりぼっちにはならないで
だって君は
ひとりぼっちの時間がゆっくり過ぎてゆくってことがわからない
いつか君は僕に感謝するだろう
ひとりぼっちじゃなかったことを


b0022069_23151334.jpg 最初はラブソング - むしろルージング・ラブ・ソングと言うべきか...うまく行かないままフェイドアウトして行く状況を前にして、自己嫌悪や苛立ちを抑え込もうと強がり、自尊心だけは必死に守ろうしている(最後の二行は特にそんな感じです)...まぁある意味、どこにでもいる人間の歌 - のつもりで書いていたのですが、書いてるうちに当時無意識下にあった思い - 当時の、バブリーな方向に流れる一方の世の中へのフラストレーションと、それに抗すべくある種の決意表明のようなもの - が出て来て、変わって行ったんですね。結局日常を切り取るような一行も全く浮かばないまま、どっちに強意を置くのかも整理出来ないまま、熱量で押し切ってしまった...そんな感じの作品になってしまったんですね。たぶん当時歌詞に関してひどく落ち込んだのはその未整理がいやだったんだなと、今となっては思いますが、それでも出すしかなかったんですよね。

 つまりは、結局のところでき上がった作品は、表の顔は中途半端なルージング・ラブ・ソングで、裏の顔もまた中途半端に社会からの孤立感に悩む...そんな年代なりの、日本への愛憎相半ばする思いを書き綴った末に、自分の住む世界へ失望感とともに宛てた生真面目な手紙...そんな、中途半端の二重構造になった訳です。しかも宛名をちゃんと書かなかったせいで、自分のところに戻って来てしまった...そんなところなんですね(笑)。結果的に悲喜劇なのが実に自分らしくて、いつまでも苦い思い出として残る曲。

 もともとは90年初め頃に書いた作品で、パステルズや初期プライマル・スクリームにインスパイアされたようなフニャフニャな歌い方をしていたのですが、やたらとそういうスタイルがもてはやされ始めたので正式録音の際にはやめましたね。簡単に乗って来る向きや流行を信じてなかったというか...まぁ当時はそんな感じで素直になれないというか、疑り深かったですね。ギターサウンドは弟Satoshiなりの83年の頃のピーター・バック・スタイルの解釈、といった趣きです。全体として、ホントにシンプルなアレンジで今聴くと驚くんですが、当時は全然そうは思ってなかったんです。時間が経つと色んな角度からものが見えるようになるものです。
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by penelox | 2007-02-18 23:16 | The Penelopes関連


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