It's Not You - The Penelopes



b0022069_21584574.jpg 耳をつんざくようなノイズの洪水も、派手で下世話なアレンジもなく、まして何かの記号やイメージに依拠することも極力避け、ひたすらメロディーを紡ぐことに専心するポップロック。93年当時でも過剰さが売りの殆どの音楽の中で、実にあっさりとしたこの1stアルバムだったのですが、そのぶん何をしたいか、その姿勢はいまでもとてもわかりやすいかも知れません。結果的にあれこれ迷ってる風じゃない出来(実際は迷いに迷っていたのですが)になっているのが、今の自分にとってはうらやましく響きます。やはり若さゆえなのかも知れません。

 前回、前々回と同じく1stアルバム収録、またスペインのElefant Recordsからも7インチシングルとして発売された曲、"It's Not You"。

It's Not You

(注・前回の"Sick Of You"はアップを終了しております。ご了承下さい)


 当時、アメリカの音楽ガイドとして知られるTrouser Pressにはこのアルバム、とても控えめで内向的な音楽と評されていまして、それがとても新鮮だったのをよく覚えています。アメリカ人の友人が、興奮してそのコピーを送って来たのが昨日のことのように思い出されます。もちろん良い意味での評価だったのですが、日本ではそこに殊更注目されたりということはなかったですからね。非常に細かいレビューがとても有り難かったですし、日本の外でどう聞こえるかについても、はじめて考えさせられるきっかけにもなりました。

ここで読めますね。


 このシングル盤の子どもは、恥ずかしながら、3才になるかならないかの頃の私。1968年(昭和43年)撮影です。この写真を使ったのは、子どもの泣くという行為に、何か象徴的なものを、そしてこの曲との連関を感じたからなんですね。泣くという行為は、歌によく使われる根源的な心の叫びの象徴ではあるのですが、自分で物事を動かせない子どもにとっては大人の耳目を引くための手段でもある訳ですね。それは同時にまた、自分の無力さを知るがゆえでもあるからで。

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世界を作ったのは君じゃない
この世界を支配しているのは君じゃない
今こそ自分の人生に向き合うべき時
10代のおもちゃ部屋にさよならを
別の怒りがまたここにある
君がそれに気がついてくれたらいいんだけど







 その無力感の認識は、また10代の終わりにも似ているところがあって...というのが、この曲とジャケのつながりでした。幼児期が生まれ出た最初の無力さを知る時期だとしたら、18,9才もまた、現実を前にして別の意味で自分の無力さを思い知る訳で、それは言い換えれば、社会における誕生、第二の誕生な訳ですよね。世界は単純じゃない...それをわかったうえで、はじめて人は、いわば冬へと歩き出す訳ですよね(笑)。まぁ考えてみれば、22,3才もある意味そうでしたね。ですから、新しい旅立ちについての歌、と言ってもいいのかも知れません。

 この曲を書いた頃というのは、前回も書きましたように、思春期のある蒼い思いが、まだ整理されず、いわば心の奥に澱のように残っていたと思います。そろそろそれを直視し、振り払うべきものは振払おうやないの...これもまた、そんな成長のプロセスが刻まれた歌だったと思います。音楽的な影響としては、当時よく聴いていた70年代前半〜半ばのアメリカンロック-シルヴァーとかオーリアンズとか初期のイーグルスとか、あるいは最初の頃のアンドリュー・ゴールドとか、そういったフォークロック/AOR初期にある、温もりのある開放感、陽だまり感を意識したつもりだったんですが、さほどそんな感じにはならなかったですね。
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by penelox | 2007-02-27 23:59 | The Penelopes関連


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