長々と前フリを失礼しました。
個人的なところから色々と書きましたがNew Wave。それまでの音楽と何が違うの、どうやって成立したのってことになりますと、細部にこだわるとかえってそれ以前の音楽との共通項の方が見えて来たりして、なかなか簡潔に言い切るってのが難しいですね。だいたいのところで一番よく言われるのが、パンクロックが1976年に英国で起こり、それが77年半ばになるとさらに音楽的に色んな人達が出て来たのでPunk/New Waveという大きな呼称になって・・・というのもの。しかし、本当を言えばそれもひとつの見方に過ぎなくて、New Waveのオリジネイターはグラム・ロック、デヴィッド・ボウイやロキシー・ミュージックらだとする意見もあります。79年あたりから登場するポストパンクと言われる流れには、正しい意味でのプログレッシヴロックとの繋がりもありますよね。パワーポップ(アメリカのそれとはまた違うものです。スティッフあたりの人達)と括られた人達の多くは実際はベテランで、パブロックと地続きでした。そもそもが英国パンクの中心的存在であったセックス・ピストルズ自体、ニューヨークのグラムロックバンド、ニューヨーク・ドールズからのコンセプトを(マルコム・マクラーレンが)そのまま持ち込んだと言われていますし、その後もニューヨーク・パンクと呼ばれた、大学生的なアート的側面の強い動きにいた人達-テレヴィジョンやパティー・スミス、トーキング・へッズ、もっと言えばそのルーツといえるベルベット・アンダーグラウンドやドアーズ、アメリカのガレージパンク-からのインスピレーションは大きいですし、英国勢特有の政治性の高さには74年頃の英国経済のどん底状態の影響もきっと加わっているはずです。とまあ、あまりに色々な要素がその底流には渦巻いてますね。そこが、今になっても興味の尽きないところでもあります。 と言う訳で、とりあえずはパンクと呼ばれる動きから1年経ち、ひとつの山を越えてNew Waveと呼べる人達が登場して来る1977年夏あたりからの全英チャートを見てみようと思っているのですが、それまでの概略を。1976年の夏にストラングラーズとラモーンズがフレイミング・グルーヴィーズの英国公演の前座をつとめ、次の日のラモーンズのライブにピストルズとクラッシュのメンバーが登場、これが英国にパンクがもたらされた最初と言われているようです。そしてそれがチャートに反映されるのは同年12月の、御存知セックス・ピストルズによる"Anarchy In the UK"のヒット。これが38位を獲得、センセーションを巻き起こします。そこから半年後の77年6月に"God Save the Queen"が全英2位になるまでのあいだ、この動きに目を付けたレコード会社はたくさんの「パンク」シングルを発売し、メディアもフィーチャーして行く訳ですが、実際のところ、全英シングルトップ40にはあまり記録が残っていません。残っているのを書き出してみますと、こんなところ。 ■1977年3月 The Pink Parker EP - Graham Parker & The Rumour(38)("Hold Back the Night"を核とする4曲入りEP) (アルバム) Damned Damned Damned - The Damned(36) Marquee Moon - Television(28) ■1977年4月 White Riot - The Clash(38) Marquee Moon - Television(30) (アルバム) The Idiot - Iggy Pop(30) The Clash - The Clash(12) IV (Rattus Norvegicus) - The Stranglers(4) ■1977年5月 In the City - The Jam(40) Peaches / Go Buddy Go - The Stranglers(8) Sheena Is A Punk Rocker - Ramones(22) (アルバム) In the City - The Jam(20) ■1977年6月 God Save the Queen - Sex Pistols(2) Anything that's Rock'N'Roll - Tom Petty & The Heartbreakers(36) Exodus - Bob Marley & The Wailers(14) (アルバム) Sneakin' Suspicion - Dr.Feelgood(10) Tom Petty & The Heartbreakers - Tom Petty & The Heartbreakers(24) Exodus - Bob Marley & The Wailers(8) カッコ内は最高位 のちのNew Waveに関わりがあると思われる人達も含め、いくつかは映像も加えてここにあげてみましたが、意外に少ないんですよね。もちろん、トップ40が全ての基準てはないですし、チャートインしないシングルでも重要なものは沢山あったと思いますが。おそらく、Punkというイメージだけでは危険な上に大した商売にならない・・・レコード会社とメディアの溜息がこの半年のあいだに広がったのが想像できますね。暴力的なイメージがあまりに強いと、逆にそれがマイナスになりかねない。これまでその暴力的イメージを上手く利用して商売しようとして来たけれど、結果を見ると・・・たぶん、そんな計算が売る側にもたげて来たのは事実でしょうね。まああざといと言えばあざといのですが、所詮売る立場はそんなもんですよ。ちなみに個人的にはまだ小学生だった私、覚えているのは、朝のニュースで、ロンドンでは若者が荒れてます・・・ということでこの動きがちらっと報道されていたことだけなのですが。ですのでこのあたりはみんな後から知ったことです、念のため。 ただ、パンクのイメージがついていた人達でも、曲がちゃんと書けてると順調に滑り出していたのも事実のようで、それはアルバムの方を見て頂くとわかるのでは。ですから、そういうアーティストと長期契約を結び、アルバム主体で売って行こうとしている感じはあったんでしょうね。トラブルメイカーというレッテルが貼られてアルバムリリースに手間取っているピストルズを尻目に、ダムド、クラッシュ、ストラングラーズ、ジャムといった人達は、そうやって、今後New Waveの動きの核となって行きます。特にストラングラーズは、群を抜いたチャートアクションを示していて、その存在感は侮れませんね。そしてアメリカ勢の健闘。テレヴィジョン、ラモーンズといったニューヨークPunkの人達が熱い支持を受けているのは、次の動きと関係があると思いますし、トム・ペティーの人気は、グレアム・パーカーとともに、スティッフ・レーベルが出して来るような、パブロックと地続きのシンプルでルーツに根ざしたロックンロール音楽の支持者の層の厚さを思わせます(スティッフは76年に設立されたインディー・レーベル)。イギー・ポップもアルバムがャートインしているのが面白いですね。ボブ・マーリーも入っていますが、この人もNew Waveには物凄い影響を与えてますね。New Wave世代としては自然に馴染む音楽なのでは。 Television "Marquee Moon"(album) The Jam "In the City"(album) The Stranglers "IV (Rattus Norvegicus)"(album)
by penelox
| 2007-11-23 21:22
| New Wave
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