人気ブログランキング | 話題のタグを見る

The Mommyheads - The Mommyheads (1997)

 70年代のアメリカンロックの自分なりに惹かれるところと言えば、シンガーソングライター的スタイルの内省的な歌、ロックンロール、フォーク、ソウル、カントリー、ファンクといった音楽が、陽だまりを感じさせるオルガンと寄り添うようなギターの穏やかで丸みのある音像のなかで溶け合い、味わい深いまろやかさとして醸造される、そしてそれはアメリカという国のその時代の光と影を象徴するものゆえの苦味を伴っていて・・・といった辺りだろうか。思春期にリアルタイムで聴いた音楽ではなく(子供時代のちょっとした懐かしさはあるけれど)、New Waveを通過した後に80年代末から90年代初めになって見直し、その良さを認識したような立場なので、87年にニューヨークで結成され、アバンギャルドミュージックからスタートしたというこのバンドの、5枚目となるこの97年のアルバムで展開される音楽は、実にそんな世代ならではの解釈のアメリカンロックで、大変親近感を抱かせる。

 2ndアルバム以降サンフランシスコに拠点を移したという彼等、中心人物アダム・コーエン(レナード・コーエンの息子とは同名の別人)の書く、決して軽く弾けない、しかし重くもなり過ぎず、爽やかだが悲しみの影を常にその奥にのぞかせるメロディアスな楽曲、少しジュールス・シアーも連想させる高音で、時折感情的になるけれど決してそこに溺れず、物語として誠実に紡いで行くVoスタイルは、シンガーソングライターとしての体質を強く感じさせる。プロデューサーのドン・ウォズはきっと彼のそんなキャラクターに焦点を合わせ、このメジャーデビュー盤を70年代アメリカンロック風の味付けでまとめあげたのだと思うが、それ以前の彼等を聴いたことがない立場(XTCと比較されていたというからこれは聴いてみたいもの)からすると、実に良い感じでまとまっている。ここでよく紹介する音楽の例にもれず彼等もまた、突出した派手なヒットソングを出した訳ではないけれど、ここで聴かれる音楽は誠実なアメリカンロックのエッセンスを継承していると思う。

 残念ながらこの作品、当時のゲフィンの社内人員整理に巻き込まれてしまい、ろくにプロモートされなかったらしい。結果チャート的には惨敗、リリース翌年となる98年にはバンドは解散している。その後アダム・コーエンは(上記の同名アーティストとの)混乱を避けるために名前をアダム・エルクと改名、ソロ活動に乗り出し、現在はTVコマーシャルの音楽で成功しているという。またメンバーのひとりジェフ・パーマーはのちSunny Day Real Estateに加入したとか。ここからバンドが先に進めなかったのは残念だけれど、その解散の引き金になったであろう当時のレーベルのゴタゴタが作ったマイナスイメージと、作品そのものの魅力は全く別の話である。どちらかというと中年を迎えようかという向きにお薦めの、味わい深い傑作。01 "Jaded"、02 "I'm In Awe"、03 "Bellhop"、06 "Sad Girl"、09 "Monkey"、11 "Corky"が個人的お気に入り。
by penelox | 2008-04-01 16:02 | CD備忘録


<< The Statue In t... You've Gott... >>