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The Statue In the Stone - Bronze (2002)

 「ノーザンソウル・ロックンロール・ギターバンド」-80年代に英国New Castleを拠点に2枚のアルバムをリリースしたフラー!の元メンバー、ポール・ハンディサイドの新しいプロジェクトであるBronze(ブロンズ)を一言で形容するとこうなりそうだ。

 ノリの良いモータウン風ギターソウルで賑やかに迫る01 "Let It Rain"からして、前のバンドにあった熱がそのまま継承されていて、嬉しくなる。リッケンバッカー12弦ギターの幽玄な響きが心地良い02 "Presence Of Greatness"にしても、パワーポップ的な03 "How Long"にしても、親しみ易いメロディーを基盤に、彼の熱いボーカルはレイドバックすることなく、その英国北部の風景が目に浮かぶような引き締まった表情を崩さない。それに何より、抑えようとしてもとめどもなく湧き出すといった感じの、夢見るような心の疼きをそのまま音にしたかのような音像・・・このあいだやっと聴けたフラー"の1stの20年前と何ら変わっていない熱。フラー!と敢えて比較すれば、もちろんハンディサイド氏のみの世界だという違いや、メジャーとインディーの予算の差による音質の違いはある。が、キャリアを積んだがゆえにその表現はより濃密かつ多彩になっており、ヒューズ氏が書き歌う高音が印象的な柔らかな歌と並立していたフラー!とは違う統一感と、年輪を重ねた豊かなニュアンスがある。それに、時にキース・ムーンのごとく暴れるドラミングのかっこ良さがやはり現代的で、80年代よりもボキャブラリー的に自由な気がする。とは言え、あれやこれやとややこしいことをしている訳ではなく、基本はストレートなギターサウンドで、核にソウルが感じられるところがアイリッシュバンドにも通ずるロックサウンド- 結局、フラー!のDNAが現代でも本人の手でしっかり受け継がれ、その世界が深められていることが一番確認出来たところだと思う。

 上記の曲以外にもイアン・マクナブにも通ずる盛り上がりを見せる05 "Heart Of the Sun"、ストレートな07 "Just A Lie"、せつない08 "That's Not Me"、01と同じくモータウンを思わせる(これはまた英国伝統的リズムとさえ思う)シャッフル系の堅牢なビートに引っ張られて行く10 "Motel Of Love"、ソウルフルなブリティッシュロックとして捉えるとポール・ウェラーや70年代のフーが好きな向きにもお薦めな11 "Feel It Now"、アメリカンパワーポップ/フォークロックが好きな向きにぜひ聴いて欲しい12 "Time Won't Set You Free"など、溢れんばかりのエネルギーに満ちた逸品多数の好盤。
by penelox | 2008-04-02 22:34 | CD備忘録


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