人気ブログランキング | 話題のタグを見る

遠い崖 - アーネスト・サトウ日記抄」(萩原延壽・著/朝日文庫)1、2巻

 私なんぞが敢えて言うまでもない必読の名著。19世紀後半の日本が目に浮かんで来て、(不可能だけれど)訪れてみたい気にさせる。読み出して以来、インスパイアされること数えきれず。改めてイギリスがこの国の開国に果たした役割の大きさを感じ入ってしまった。ここでの外交的手腕に現れるイギリス人の国民性というのは、100数十年ぐらいではそうは変わらないのだな・・・日本人のその間の変わりようと比べるにつけ、実に地に足がついた人たちだなぁという印象を新たにした。何しろ、私が知る現代の英国人ともさほど違わないのだから。まるで、今そこでやっているかのようなリアリティーがある。

遠い崖 - アーネスト・サトウ日記抄」(萩原延壽・著/朝日文庫)1、2巻_b0022069_14503640.jpg

 それに、日本の作家による幕末維新の小説(やそのドラマ)で触れるのとはまた違う視点なのが新鮮。それはもちろん書き手がまさにその時代を目撃した外国人であり、かつ英国から派遣され登場人物に必要以上の思い入れや利害関係を持たない若き通訳が、誰かに気兼ねすること無く綴る日記だからだが、それにしても常に冷静客観的な観察眼で、当時の日本の様子-幕府、薩摩、長州、庶民と役人の対比のみならず、横浜の外国人社会の内側などなど-がバランスよく描かれるのは実に貴重な資料だなと思う。
by penelox | 2008-06-08 14:58 |


<< 面々授受 - 久野収先生と私 ... レコードスリーヴへの愛、止まず >>