「ほっ」と。キャンペーン

カテゴリ:本( 42 )

「隠される原子力 核の真実 原子力の専門家が原発に反対するわけ」(小出裕章・著/創史社)

b0022069_0422333.jpg



 こちらPENELOGは、基本的にThe Penelopesの音楽にまつわる日常をずっと綴っていますが、さすがに最近はそればかりという訳に行かなくなって来ました。目の前で起こっている現実、つまり東日本の大震災と、福島第一原発事故後の一向に収束しない原子炉の状況、放射性物質流出によるとめどない我々の環境への汚染の厳しさなど・・・をみていると、音楽がどうこう以前に人間としてこの事態をどう受け止めるのかが問われていると強く感じるからです。ですので、音楽創作も最近は少し停滞気味です。


 でも、この事態を適当に受け流して音楽を作るなどというのはちょっと私には考えられませんので、これも自然なことと受け止めています。もとより、最初から音楽でメシを食うというレベルにならなかったので、ただ自分の生活のなかで、人生で必要な営為(つまりカッコつけますとライフワークです/笑)として音楽をやる結果になっていますので、音楽を停滞させることで生活に困るということもないのですが、その分、音楽には時に重たいものであっても、自分の人生で考えていることを常にヴィヴィッドに反映させたいというのがありまして。

 そういうのがある分、現在の状況に自分なりに向き合って作品を作りたい訳でして、今はどうしてもこの現実は避けて通れないのです。


 アマゾンで注文した「隠される原子力 核の真実 原子力の専門家が原発に反対するわけ」(小出裕章・著/創史社)が到着しましたので、早速読み始めています。今回の原発事故でも、もっとも信頼出来る解説をして下さる京都大学原子炉実験所助教・小出裕章氏による今回の原発事故以前に書かれた本書は、原子力の基礎的なところから広い視点で、それこそ専門家としての科学的分析のみならず、過去の歴史的経緯、現在も続く政治的思惑、そして未来の展望までもが、非常に丁寧、かつ完結にまとめられています。mixiで私の最近のつぶやきを御覧になる方は、たぶん私が最近この話に関する情報ばかり紹介させていただいているのはご存知だと思いますが、福島第一原発が一体どうなっているのか・・・不安に思われる方も大変多いはずである今だからこそ、皆様にぜひご一読いただきたいのです。

こちら


 小出裕章氏につきましては、以下の番組が参考になると思います。MBS(毎日放送)で2008年に放送されたドキュメンタリーです。
「なぜ警告を続けるのか〜京大原子炉実験所・”異端”の研究者たち〜」


 また、こちらも。4月30日に放送されたビデオニュース・ドット・コムの、ジャーナリスト神保哲生氏、社会学者宮台真司両氏による「第524回マル激トーク・オン・ディマンド: 5金スペシャル・原子力のこれまでとこれからを問う」のPART1でも小出氏がインタビューされていますので、ぜひ。
[PR]
by penelox | 2011-05-02 00:45 |

絵本の日々から 05

「ゆきのひ」
作・絵: 加古 里子 / 福音館書店 (1967)


b0022069_16241751.jpg


 もうすぐ一年が終わりますね。月末はいつも仕事関係でバタバタするのに加えて、年末は特に色々小さな事が増えてしまいますが、大晦日の晩はせめて穏やかにしたいものです。

 大晦日と言うと、NHKの「紅白」はもう既に我が家では定番ではなくなって久しいですが、その後の「いく年くる年」は必ず観るんですよね。騒がしいカウントダウン番組よりはやっぱり静かに除夜の鐘が聞きたい。遠いどこかにあるお寺の、大晦日の寂寞。穏やかに深い余韻をもってじんわりと鳴る鐘。そこで雪が降ってたら最高です。
そうやって日本でしか味わえない季節感、というのは確かにあって、年々それをより深く味わいたくなって来ています(ある意味オヤジ系雑誌の絶好のカモかな/笑)。

日本人の暮らしにとって雪は特別な存在・・・そういうことを感じ始めたきっかけが、この絵本だったのかも知れません。

 兵庫県南部に生まれ育ち、雪にそんなに馴染みがなかった子供からすると、この本の「かまくら」なんかは大変なあこがれでした。作者の加古里子(かこ・さとし)さんという方は工学博士という側面もあるからでしょう、理科的アプローチの教育絵本をたくさん出されていて、いずれにも子供の頃ずいぶんお世話になりましたね。

 それにしてもやはり思うのは、色使いの良さ。この絵本を今見てももやっぱり派手さはなくて、控えめでテカテカしてない色調が素晴らしいです。思うに、日本人の色彩感覚って、特にこの20数年で極端に変わった(悪く言うと劣化した)ような気がしてならないんですよね。それはおそらく色が持つ繊細なメッセージ - それこそ温かみも悲しみも含んだ、くすんだ色合い - の喪失と関係があったのでしょうね。たとえばお寺や城に行っても感じられるような、また着物にある感覚にしても、またあるいは映画を観ても、たとえば昔の大映作品のような色調は、日本人ならではの良さが出ている気がするのですが、生活のなかから、そんなくすんだ色合いの味わい深さの多くが、今現在どこかに行ってしまったままになってる気がしてならないですね。
[PR]
by penelox | 2009-12-29 16:25 |

絵本の日々から 04

「ぶたぶたくんのおかいもの」
作・絵: 土方 久功 / 福音館書店 (1970)


b0022069_0541310.jpg


 アナグマ、犬と来ると次は豚・・・なんてつもりはないのですが(笑)、絵本で動物と乗り物は避けて通れませんよね!

 しかし、私が5歳だった1970年に発売されたこの絵本の魅力を語るのはなかなかに困難な作業です。物語自体はシンプルで、お母さんに頼まれて、買い物に町を回るだけなんです。最後のページで回ったコースが俯瞰されていて、それが幼児にとって楽しい、というのは確かにあります。でも、この本の魅力はどうもそれだけではないように思うんですよね。

 そもそも主人公の「ぶたぶたくん」が決して世間的に見て可愛いらしいとみられる動物ではない・・・これも奇妙なんですが、絵もまたどこか変なのです(笑)。いや、くすんだ色調も子供向けとしたらあまり普通ではないし、出て来る人物も売られてる商品も愛らしくない(顔つきパン!)。けったいなお店のけったいな人物達。出会う友達も特に仲がいいようにも思えない。何より、ぶたぶたくんが本名ではなくて、お母さんもホントの名前を忘れてしまったという・・・そんな、あちこちのねじが何本かずつ外れていることに、大人になって見ると不気味な感じがするのだけれど、子供の頃を思い出すと、十分現実的で、共感出来てたんですよね。その証拠に、この絵本を見ると幼少時、母に連れられて逆瀬川の商店街を回ったときのことを思い出すんです。当時の逆瀬川というのは、いくつかの商店街が無秩序に並んでいて、今から考えたらよくもまああんなところに・・・と思うような奥まった場所に奇妙な店があり、不思議なおばはんがいて、変なものが売られていたのですから。そしてそんな空間で、偶然特別仲良くない友達と会ったりして、それで何だか流れで同行してみたりして、また探検が続く・・・。80年代に入ってすっかり姿を消してしまうそういう商店街での、不思議な、だけど今となっては貴重な日々が浮かんで来ます。洗練とはほど遠く、どこでどう繋がってるのか訳がわからないような無秩序さなんだけれど、エネルギーのなかに温かみも冷たさも内包した迷路・・・そんな商店街が、子供の目には、遊び場として面白くて仕方なかった。

 今絵で生計を立てている弟が一番入れあげていたこの絵本に対してオフクロは、よく読まされたけど気持ち悪かった、あんたら何であんな本が好きだったんかねぇとか言うのですが(笑)、作者のベストセラーで、福音館の売り上げベスト100でも上位にランクしているらしい。子供の視点(の、言葉を介さないがゆえの自由さ)を思い出すのに良いのかも知れない、これもまた別の意味での古典なのかも知れません。
[PR]
by penelox | 2009-12-28 00:55 |

絵本の日々から 03

「どろんこハリー」("Harry the Dirty Dog")
ジーン・ジオン(Gene Zion)・作 / 絵: マーガレット・ブロイ・グレアム(Margaret Bloy Graham) / 訳: わたなべ しげお / 福音館書店 (1967)


b0022069_013314.jpg


 犬のお話を少ししたので、こちらも挙げたいですね。この1956年刊行のアメリカの絵本(日本では1967年、まさに私の子供時代)も古典と言って良い、いまだ根強い人気を誇る名作。

 で、私が良いなと思う絵本は、たいてい色調が派手じゃないんです。むしろ今の子供向けの感覚からすると渋いぐらい。でも、子供の頃にあんまり原色のテカテカしたものばかりに馴染ませるより、味わいというか、深く心に染み込んでくるような色合いの絵本の方が良いと思うんですけどね。

 この本の色調、ぜひこちらで御覧下さい。

 色調のことばかり書きましたが、物語も、とってもわかりやすい。心配させて最後に解決する、そのカタルシスが子供にとって良いのでしょう。

「ハリーは黒いぶちのある白い犬です。ハリーはおふろが大嫌い。おふろから逃げ出してあちこちで遊び、どろだらけになってしまいます。あんまり汚れて、白いぶちのある黒い犬になってしまいました。おうちに帰ってきたけれど、自分がハリーだとわかってもらえません。途方にくれるハリーでしたが、ふとひらめきました。そうだ!おふろできれいにしてもらおう!...
きれいになったハリーのしあわせそうなこと。ああ、おうちっていいなあ...」

YouTubeにアニメがありました。


 正直絵本の方が想像力を刺激するとは思いますが、原画を大事にしてますので、これはこれでありかも。
[PR]
by penelox | 2009-12-27 00:02 |

絵本の日々から 02

「おやすみなさいフランシス」("Bedtime For Frances")
ラッセル・ホーバン(Russell Hoban)・作 / ガース・ウィリアム
ズ(Garth Williams)・著 / 松岡享子・訳 / 福音館書店  (1966)


b0022069_0131373.jpg


 この本も、特にクリスマスや新年の頃に合うという訳でもないのですが、何故か冬のある時期のメンタリティーになると思い出す気がします。小さいお子さんへのこの時期のプレゼントなどに良いのかも知れませんね。特に、なかなか寝付けない子供にはぜひ寝る前に読んであげて欲しい本。

 こちらをぜひごらん頂きたいのですが、絵は実に繊細なタッチの鉛筆画。色も殆ど白黒で、カラフルさとはほど遠い。でも、だからこそ良い様に思うんですよね。華やかさがない分、却ってイマジネーションが広がる。それに、夜という暗闇のなかで心細くなる子供の気持ちが実に上手く汲み取られているように思いませんか。

 子供時代に馴染んでいたこのアメリカの絵本をいま見ますと、何故か昔飼っていた犬に時折やっていたことを思い出します。夜中に何が原因か知らないが外でわんわん吠えている。行ってみると特に理由はなくて、何か風で揺れた草木だとか、動いた虫だとか、その程度のことで神経質になって寝付けなくなったらしく、ただぐずってるだけなのでした。で、横に行くとおすわりして何やら不満そうに鼻を鳴らす。おおそうかそうかと、身体を優しく抱いてやり、なでながら話しかける。静かにしないとみんなが迷惑するでぇ~とか、意味などもちろんわかる訳がないのだけれど、穏やかに諭していると、耳はこちらに向けていて、そのムードに影響されるのかだんだんと落ち着いて来る。そして、子守唄を歌ってやる(ホントに、ね~んね~んころりよ・・・とやるんです/笑)と、しばらくすると眠くなって来たのか犬小屋に自分から入って行き、寝てしまったのでした。寝付けない時にスキンシップでほっとしたいというのは、甥っ子や自分の子供の頃がそうだったように、犬も、はたまたこの本のアナグマも一緒なんでしょうね。

 大袈裟な展開がある訳ではないですが、さりげない親子のスキンシップの大切さを思い出させる一冊。
[PR]
by penelox | 2009-12-26 00:14 |

絵本の日々から 01


「チムとゆうかんなせんちょうさん」("Little Tim and the Brave Sea Captain")
エドワード アーディゾーニ(Edward Ardizzone)・著 / せた ていじ・訳 / 福音館書店


b0022069_23524255.jpg


 クリスマスですね。
 クリスマスと言うと、正直言って大人の事情なんかよりも子供のことを考えたいと思うんです。子供が幸せな思い出を作ってくれたら良いなと。というのも、子供がケーキを食べたり、プレゼントを開けて楽しそうにしていること自体はやっぱり見てて良いなと思うからなんです。幸せそうで良いじゃないですか。私の家、育った時代のせいなのか、個人的には子供の頃クリスマスが特に楽しかったという経験はないんだけれど(なぜなら、毎日がクリスマスみたいなもので・・・ちょっと大袈裟ですがね!)、子供というのは大したもので、たとえば絵本なんかで疑似体験したことで、それなりに楽しい思いをしていたりするのです。

絵本による疑似体験。

 子供時代に絵本で想像力を広げて、行けない場所や世界に思いを馳せたりするのは悪くない・・・どころか、とっても良いことなんじゃないかと思います。私自身、この時期に思い出すカラフルな記憶は絵本の世界のなかにあったんだなぁと、そのことを実感する今日この頃なのです。


 子供の頃大好きだった「チムとゆうかんなせんちょうさん」。最近偶然みつけて思い出した名作のこの部分。今にも沈もうとする船の上で、船長がチムにこう話しかける。

「…なくんじゃない。いさましくしろよ。わしたちは うみの もくずと きえるんじゃ。なみだなんかは やくにたたんぞ」

 荒れ狂う海の上でチムは覚悟を決めて、船長と手を握る。ここで幼い心がグッと来たのを今でも覚えているんですよ。何度も何度も、絵を見て、その部分を読んでは生まれたてのある感情を反芻していたんですよね。英語のサイトを見ると、原文では船長はこう言っていた。

"Come, stop crying and be a brave boy. We are bound for Davy Jones's locker and tears won't help us now."

子供向けの絵本で、子供に対してこんな言い方をしてたんだなぁ・・・。子供に厳しく、大人になれと促す、いかにも英国らしい本だったんですねえ。わかる。また、瀬田貞二氏の翻訳も素晴らしかったんだなぁ。

 そして、最後に救助されたあと、チムが飲む熱いココア! これが本当に味わってみたかったことも思い出します。

 こういう疑似体験を子供にぜひして欲しいものです。そこでの感動はたぶん一生忘れないんじゃないかな。
[PR]
by penelox | 2009-12-24 23:54 |

最近読んでいる本(2009.11.28) 「XTC ソング・ストーリーズ」

b0022069_23153542.jpg


 mixiで知り合った方から頂いたこの本、「XTC ソング・ストーリーズ」が取り憑いたままです。

 自分でも興味深いのは、何度も読むにつれ、今までいつもお気に入りのレコードのトップに挙げていた"Black Sea"や"English Settlement"よりも、"The Big Express"や"Mummer"への思いが強くなって来ていること。たぶんこれらの作品の制作プロセスや歌詞の解説を読んで、ああ、これで良いんだな、同じ事をやってたんだな・・・というような確認が色々と出来たからだと思います。楽曲にイラストなどのビジュァルイメージが書き添えられたりしているのは未熟なレベルとはいえ自分もやってたことだし、歌詞にこれだけ丁寧な解説が付いていると、自分も歌詞をもっともっと良くしたい、と思えるようになります。何より、彼らの苦しい時期に作られた作品だけに、その内幕をのぞけたことがとても励まされたと言う感じでしょうか。

 最近はレコーディングモードだからか、指導しているときもずっと、作りかけの曲が頭のなかでループしていて、いつ良いラインが出て来るかわからないという感じ。だから、歌詞ノートは手放させないのですが、これからはもっと丁寧にイラストやイメージを書き込もう・・・そんなことも思ったり。要するに、これほど作り手として励まされ、インスパイアされる本もありません、ということです。16歳で出会って以来、XTCはもう30年近くもずっとこうやって、自分の行こうとする道の向こうで励ましてくれる存在だったんですよね・・・。

b0022069_23154721.jpg


"All You Pretty Girls" - XTC
from the album "The Big Express" (1984)





 いちびって(=調子に乗って、というニュアンスの関西弁です)人気ブログランキングなるものに登録してみました。もしよろしければクリックして下さいませ。
人気ブログランキングへ
[PR]
by penelox | 2009-11-28 23:19 |

最近読んだ本(2008年秋から2009年前半)

 自戒も込めて、マスメディアの垂れ流す俗説、偏見に踊らされず、冷静に客観的に判断する能力を磨く・・・という意味で必読、という気がする本ばかりでした。ぜひお読み下さい。最後の本はちょっと前になりますが、紹介したかどうか自信がないので。


■読書術 / 加藤周一・著(岩波現代文庫)
■私にとっての20世紀 / 加藤周一(岩波現代文庫)
b0022069_1321275.jpg

 2008年12月に亡くなられた加藤周一氏によるこの2冊はまさに心の栄養。今後何度も読み返すと思いますね。後者は、生前最後のインタビューも収録しています。自分の生まれ育った足下もしっかり把握した上で、世界に出して行く表現・・・というものを模索する上で、この方の発言はいつも刺激的で、インスパイアされることばかりでした。個人的に10代の終わりから近年に至るまで、朝日新聞に時折掲載される「夕陽妄語」を必ず読んでいた・・・というのも今更ながら思い出します。







■石原慎太郎よ、退場せよ! / 斎藤貴男・吉田司(洋泉社新書)
■橋下「大阪改革」の正体 / 一ノ宮美成+グループ・K21(講談社)
b0022069_13214339.jpg

 東京、大阪の両知事の危うさを知るための好著2冊。支持されている方も是非。「石原慎太郎よ・・・」は、斎藤貴男氏による2006年までの石原都政の報告と言える「空疎な小皇帝 「石原慎太郎」という問題(ちくま文庫)と併せて読まれることをお薦めします。










■差別と日本人 / 野中広務・辛淑玉(角川oneテーマ21)
b0022069_13221432.jpg
■山口組概論 / 猪野健治(ちくま新書)
 どちらも関西、兵庫県に住む人間には避けて通れないテーマを扱っていました。日本という国のある側面を知るためにも、そして日常のなかで様々な視点を与えてくれるという意味でも、刺激的な二冊です。
[PR]
by penelox | 2009-06-18 13:27 |

面々授受 - 久野収先生と私 (佐高信・著/岩波現代文庫)

 戦中戦後を通じての言論活動、特に戦後の市民運動をリードしたことで知られ、明治以降日本が生んだ偉大なるリベラリストのひとりとしての評価は揺るぎないとは思うけれど、それよりも私にとっては「週刊金曜日」の命名者であることや、柔らかい関西弁の言葉のなかに溢れ出るしなやかなリベラリズムが一際印象深かった哲学者・久野収。

(wikipediaを中心にネットでのプロフィールを引用させていただきます)

久野収(くの・おさむ、1910 - 1999)
哲学者。1934年京都大学文学部哲学科卒業。日本で初めての人民戦線運動を組織し、1937(昭和12)年、治安維持法違反で検挙される。戦後は昭和高商、京都大、関西学院大、神戸大、学習院大などで、論理学・哲学を教え、平和問題懇話会、憲法問題研究会、ベ平連などで指導的役割を果たした。哲学者としての体系だった著作や、いわゆる「主著」と呼ばれるものがないものの、多くの評論や対談などを通じて、戦後日本の政治思想や社会思想に大きな影響を与えた。また、「戦後民主主義」の形成に寄与した人物の一人である。久野を理解するキーワードは「市民」であると言われている。大阪・堺市の出身であることから、2004年、旧蔵書約2,000冊は大阪府立中央図書館に寄贈された。

b0022069_0505597.jpg

 慶応大学の学生時代にその学習院大での講義を"盗聴"し、以来師弟関係となった評論家佐高信氏による、久野収の哲学への良きガイドブック。引用したいところは多々あれど、今心に刺さって来たのはこの一節。

「日本の教育の一番いけないところは、インタレストの入り込む余地がなくて、教育というのはただ努力せよ、教育は勉強であり、努力だと思っている。教師から始まって学生に至るまで。しかし、どのようにしてインタレストと、エフォートを、つまり興味・関心と努力を、重ね合わせて持続させるかという問題では、やはり根本の選択のところに、インタレストが働かないといけないと思うんです」
「日本のジャーナリズムは、アカデミズムと同じで、興味のかわりに使命感のような態度で編集している。この使命感がどんなにひどい転向を示したか、ぼくは戦争中に、この眼でいやというほど見ました。使命感や正義や人道のための闘いの決意は、一度くずれると眼も当てられん惨状を呈するのは、敗戦時の皇軍が実物教訓するとおりです」

 もう亡くなって10年近くなるのが信じられないが、心の柔らかさや寛大さ、瑞々しさは年齢とは関係ないのだということを身を以て示した人だと思う。柔らかさはまた簡単には折れない強さでもあるのだろう・・・著作を色々読んでみたくなった好著。
[PR]
by penelox | 2008-06-10 00:57 |

遠い崖 - アーネスト・サトウ日記抄」(萩原延壽・著/朝日文庫)1、2巻

 私なんぞが敢えて言うまでもない必読の名著。19世紀後半の日本が目に浮かんで来て、(不可能だけれど)訪れてみたい気にさせる。読み出して以来、インスパイアされること数えきれず。改めてイギリスがこの国の開国に果たした役割の大きさを感じ入ってしまった。ここでの外交的手腕に現れるイギリス人の国民性というのは、100数十年ぐらいではそうは変わらないのだな・・・日本人のその間の変わりようと比べるにつけ、実に地に足がついた人たちだなぁという印象を新たにした。何しろ、私が知る現代の英国人ともさほど違わないのだから。まるで、今そこでやっているかのようなリアリティーがある。

b0022069_14503640.jpg

 それに、日本の作家による幕末維新の小説(やそのドラマ)で触れるのとはまた違う視点なのが新鮮。それはもちろん書き手がまさにその時代を目撃した外国人であり、かつ英国から派遣され登場人物に必要以上の思い入れや利害関係を持たない若き通訳が、誰かに気兼ねすること無く綴る日記だからだが、それにしても常に冷静客観的な観察眼で、当時の日本の様子-幕府、薩摩、長州、庶民と役人の対比のみならず、横浜の外国人社会の内側などなど-がバランスよく描かれるのは実に貴重な資料だなと思う。
[PR]
by penelox | 2008-06-08 14:58 |