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カテゴリ:CD備忘録( 75 )

One Mississippi - Brendan Benson (1996)

 ジェリー・フィッシュ、ジェイソン・フォークナーに世代的な親近感は感じこそすれ,新鮮さという意味では感動はしなかった私(彼ら以降歴史が塗り替えられたみたいにメディアが過大評価しているのが噓臭くて嫌だったのだ。本人たちの才能はそれなりに評価するものの)。ゆえに、やっぱりこのアルバムも既視感(既聴感)が強い。上述の人たちの70年代半ば的ブリティッシュポップ(10cc、ELO、クイーン)オマージュ感と、90年代的屈託なさ感/雑食的落ち着きなさ感に彩られたシンガーソングライター。

 そのNew Wave薄め(実際は新しい時代に合わせた意図的なものだったと思う)感が、逆に当時の若い世代には自分たち世代の音として歓迎されたんだろうなと、どうも客観的になってしまう。同じ宅録的な流れという意味ではこの作品を手伝った(多くの曲を共作している)フォークナーよりは少年ぽいVoともどもお気楽で神経質さがない。その割にはスカッとした名曲、新鮮なメロディーが見つからないのだが、これは聞き方が悪いのだろうか。あまりに各所での絶賛が多かったので天の邪鬼になってしまっているのか、私がこういう音楽の良い聞き手でないからなのか、聞き込みが足りないのか、聴いたタイミングが悪いのか・・・自分でもまだ評価のポイントがはっきりしない。1曲目"Tea"が大変良い曲なのに飽きっぽい人なのかこういうのが長続きしないのが非常に残念。09 "Emma J"、12 "House In Virginia"も良い感じなのだが、アルバムの主旋律にはするつもりはなかったようだ。デビュー作ゆえなのだろうが、まだまだ自分なりのものを探して、あっちへウロウロ、こっちへウロウロと忙しい。13 "Cherries"の幻想感はフォークナーの1stを連想した。シークレットトラックの14が一番出来が良いと思うのだが、これは良いことなのか(苦笑)。なおこの方、現在はWhite StripesのJack Whiteとのバンド、Raconteursのメンバーとして知られるようだ。
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by penelox | 2008-05-08 14:16 | CD備忘録

Nest - Odds (1996)

 カナダはヴァンクーバー出身の4人組、オッズ。変な奴ら、なんて自分から名乗るぐらいだから、よっぽどひねくれた音楽をやっているかと思いきや、ちょっと聴きには90年代のストレートなアメリカン・オルタナティヴ・ハード・ポップ(パワー・ポップのハード寄りなタイプ)。しかしながらじっくり聴いて行くと、そのアメリカ風ギターサウンドの皮膜の下に、イギリス風の繊細なメロディーと、実に意味ありげな歌詞が隠れている。このあたりの一筋縄で行かない組み合わせが実は彼等なりのひねくれ方なのかな、なかなか興味深い・・・と思ったら、これが4枚目のラストアルバムだった模様。99年に解散、その後2007年にNew Oddsとして復活し、新作が間もなく、という状況らしい。

 冒頭の曲"Someone Who's Cool"はドラマ「フレンズ」のサウンドトラックのために書かれ、収録曲のひとつ"Eat My Brain"はカナダのTV番組"Kids In the Hall"のために作られたという。それ以前から結構関わりがあったようだけれど、この番組、カナダのコント番組(スケッチショー)だったと記憶している。日本の英語教育番組でやってたのだ。そんな番組と関わるぐらいだから、やはり相当ヒネくれているのかも知れない。余談だが"Kids In the Hall"、モンティ・パイソン以降のコメディー、アメリカの"Mad TV"なんかにも似ていた記憶があるけれど、隣国アメリカを小馬鹿にしたようなところが多々あって、カナダ人の複雑なアイデンティティーを見いだせたこともまた印象に残っている。
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by penelox | 2008-05-08 13:50 | CD備忘録

New Boy - The Connells (1994)


 アルバム"Ring"からのシングル"New Boy"に未発表曲やライブなどで構成した6曲入りEP。彼等らしいのどかで土臭いサザン・パワーポップ/USカレッジギターサウンドが楽しめる。彼等の活動の初期における顛末/奮闘ぶりを描いたのが96年のジョン・シュルツ監督による映画「バンドワゴン」なのだそうだが、これを機に日本でブレイクした・・・なんて話は全くきかない(苦笑)。これはアメリカ南部のバンドの多くが日本でさほど成功しない理由と通ずるのも知れない。戦後の日本人の多くにとってのアメリカへの憧れというものが、都会への憧れ、それでなくても西海岸か東海岸の白人中流階級による心地よさげな郊外生活に偏っていて、アメリカの田舎の生活に対するものではなかった・・・この辺りに起因するのだろうと思う。しかしこの、初期REMほど鋭くはないけれど、人懐っこさが伝わって来る彼等の音楽のグルーヴは本当にほのぼのしていて、聴いてるとそんなことどうでもよくなって来る。
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by penelox | 2008-05-04 00:01 | CD備忘録

Dutch April - George Usher (1998)


 しつこめのちょっとゴツい声質に、かなり捻ったメロディー、ブックレット裏側の不気味なイラストといい、のどかでコワいゴシック感覚もどこかにしのばせている気がするフォークロック。陽光降り注ぐ爽やかな12弦ギターサウンド・・・というのとはまた違う手応えのアーティスト。元ビートロデオ、元ボンゴズでもあるらしい。そう言えばリチャード・バローンのソロアルバムに彼との共作があった筈。03 "You Better Let It Go"が出色。アメリカンポップが好きなら誰でも・・・とお薦めは出来ないけれど、アメリカンロックの草の根をより極めたい向きには聴いてみていただきたい人。
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by penelox | 2008-05-03 23:55 | CD備忘録

Rock'n Soul Part 1 - Daryl Hall and John Oates (1983)


 まさしく80年代な音! 確かにそうなのだけれど、今になってみればノーザンソウル(デトロイト、フィラデルフィア、シカゴ)の感覚を当時のポップロックのフォーマットで彼等なりに消化し展開していたというのがよくわかる、瑞々しいロックン・ソウル。曲によってはさすがにアレンジが当時のブラコン的古さもあるけれど、01、05、07、10、11などは今聴いても実に若々しく新鮮。彼等のソウルミュージックへの愛情がダイレクトに伝わって来る。25年も前に出たとは思えないベスト。正直言えば、今の年齢で一番やりたいタイプの音楽ではある。
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by penelox | 2008-05-03 23:51 | CD備忘録

Once We Were Trees - Beachwood Sparks (2001)

 ロサンゼルスを拠点とするオルタナティヴ・カントリー・ロックバンドである彼等の、目下のところ最後のアルバムとなっている2nd。これまでThe Tyde、Further、Strictly Ballroomといったバンドで活動して来た人達が結成したということで、ジャケットでのメンバーは若々しいものの、演奏歴は結構長いようだ。彼等の音楽性をもう少し突っ込んで形容すると、「コズミック・カントリー」ということになる。つまりは、サイケデリックなカントリーロック。要するに、バーズの「ロデオの恋人」("Sweetheart Of the Rodeo")、それにフライング・ブリトー・ブラザーズの影響が非常に強い音楽。実際、メンバーのルックスから、ジャケット、曲の内容に至るまで、実にそれ風で、69年〜70年あたりにいた幻のバンドのお蔵入り作品、と言われても信じてしまいそうな程。現代的な味付けなりテーマ性を探しても、簡単には見つからない。脱商業主義やエコロジー的な意識に貫かれている様に読める歌詞も、当時の音楽のヒッピーイズムと見紛うぐらい、そのまんま。しかし、30年という時間の経過があるのだ。それを考えると、その意図なり、姿勢というものがあまりに唐突。姿勢はあまりに素朴なアマチュアリズムでありながら、趣味的というにはあまりに高いクオリティー。そのギャップの極端さには、正直言って微笑ましくも当惑する。ゆえに、彼等をああだこうだと断ずるよりも、私の鑑賞プロセスを書いた方が彼等の姿の一端が伝わりやすいかと思う。


(1)ある日の印象

 聴く前に彼等に対して持っていたイメージは、この情報過多の時代にわざわざコズミック・カントリーロックをやる、という意味では、アメリカのバンドなのにスタイルに対してイギリス人のような距離感、そしてそれゆえの憧れと批評性が内在しているのではないだろうか、ということ。で、実際に聴いてみるとその距離感は感じられない。あっけないぐらい、実に屈託が無い。その時代なりに作り変えよう、というのも感じられない。まさにそのまんま。考えてみれば、アメリカだとこういう音楽はこちらが思う以上に身近にあるだろう。よって、心理的な距離もない。たとえば幼少時から聴いていたら皮膚感覚として身に付けているだろう。憧れというよりも、むしろ帰るべき心の故郷とみなしてさえいるかも知れない。だからか、批評性もない。ゆえに、楽しんで浸っているうちに、ミイラになったミイラ取りよろしく、自分達もグチャグチャになって飲まれてしまったのだろうか。否定的に捉えることもないとは思うのだが、あまりに屈託なく、あまりにそのまんまなのに当惑している。この時代を生きる人間としての部分がまるっきり見えて来ない。その趣味性の異様な高さ、なり切り方の異様さこそが現代的というべきなのか・・・わからん(苦笑)。


(2)またある日の印象

 何度か聴いてみた。いやいやそこまでひどくない。最初のイメージが間違っている。もちろん趣味性が異様に高いのは事実だが、彼等なりの自然なアマチュアリズム(=好きだからやっている)の発露であるようなのだ。ただ、それが、(おそらく表現技術が高いゆえ)あまりに完成度が高過ぎるせいで、誤解を招くのだ。パロディーでも気楽なホビーバンドというのでなく、ひたすらモロになり切ってしまっていて隙がない。アメリカのおたくが、真剣過ぎ、上手過ぎてもはやおたくではない本格派になってしまう、という感じとでも言おうか。力技でチマチマした批評性さえぶっちぎってしまうのだ。それの何処が悪いのかと言われたら、私も答えることは出来ない。今の時代、もはやプロとアマチュアのあいだに明確な線引きなど出来ないし。ただ、あまりにそれ風なので警戒してしまったとは思う。後期バーズ、フライング・ブリトー・ブラザーズが好きな人達、ということなのだから、本当に好きでやってるのだろう。しかし、あまりに唐突で、そこへ至る経緯がまるで見えないから、批評性に一定の価値基準を置いていた80年代育ちとしては、こんなに屈託なくて良いのかと驚いてしまうのである。だから、現代を生きる人々の多くと「音楽」というメディアで共振しあえるか、という意味で考えると、たとえば60年代末当時のバーズの変転の衝撃、影響度とは、くらべようがないだろう。ビーチウッド・スパークスの場合は、まさに今ある「コズミック・カントリー」というジャンルに殉じた音楽以外の何物でもないからだ。しかし、そのカテゴリーのなかでの強度はまた、かなりのものがあるのも事実。聴き返すうちに、ひっかかってくる良い曲がいくつかあった。04 "You Take the Gold"、05 "Hearts Mend"は大変印象的。しかしなんと言っても目玉は10 "By Your Side"、何とシャーデーのカヴァーである。これは80年代の音楽も聴いてたよ、とでも言いたかったのか。いや、ただ単に好きだったから、そんな言葉しか帰って来ない気もする。それぐらい、恣意性と無意識的部分の境界線の判別が難しい人達である。また、よく考えてみれば、彼等のような人達は決して特別でもない気がして来た。90年代以降のアメリカでは、新しいカントリーロック世代(最初に書いたいわゆるオルタナティヴ・カントリー・ロック)というのが実際のところ一定数いる訳で、そのシーンがこちら伝わって来ないから、唐突に感じるだけなのかも知れない。

 単に、コズミック・カントリーが好きで、やった。やったら、たまたまそっくりになった、それだけのことなのかも知れない。手癖と持ってる天然の感覚は物凄い、ただの音楽好きなのかも知れない。ただその奥に何があるかというと、自分達でもよくわかってない。そして、おそらくわかってないからこそその衝動を糧に奏で続ける・・・たぶんそういうことなのだろう。寛容で開放的なアメリカは良いが、閉鎖的で独善的なアメリカは苦手、という私にとって、この微妙なジャンルはその奥にあるものでずいぶん印象が違う。その点では、次の作品(正式に解散表明した訳ではないらしいが、事実上活動停止状態にあるようだ)が聴けないのは残念なところ。近々活動を再開するという話もあるようだし、もし作品を作るのならアメリカ社会の諸様相をもっと現代的に切り取ってみて欲しい、そう思ったりもする。
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by penelox | 2008-04-24 13:24 | CD備忘録

The Subversive Sounds Of Love - Frisbie (2000)

 シカゴのポップバンド5人組フリスビー(メンバーのひとりの名前から取っている)の3枚リリースされている作品のうち、デビューアルバムにあたる作品。同時代のパワーポップバンドに一応括られているようだが、その音楽の核心にあるのはフォークロックやハードポップ/ロック、あるいは捻り系とも、バブルガムぽさともソフトロック的なスタイリッシュ性とも違う、もっと中庸な陽だまり感とでも言おうか、70年代前半が根っこにある、耳に馴染み易いオーソドックスなAOR的ポップロックという印象。

 特に冒頭3曲はストレートなメロディーを奏でるリードVoに美しいコーラスとオルガン、ギターをあくまで寄り添うように配しており、決して轟音が炸裂したり、楽曲が意地悪くひねくれるようなことがなくゆったりと進んで行くので、日常の生活のリズムにほどよく合わせてくれる。クラシックスIVやニュー・コロニー・シックスにも通ずるような、ソウルポップ的な温かい味付けを現代風にアレンジした感じで大変に聴きやすい。前後するが05、07なんかもそうだろう(アレンジを変えたらバックストリートボーイズが歌ってもおかしくない。皮肉で言うのではなく、それぐらい幅広い層に聴かれておかしくないキャッチーさだということ)。かと思っていると冒頭の激しいギターサウンドが驚かせる04。ギターの鳴りという意味で共通するものとしては06、09、12のようなトラックもある。ドアーズのような60's後半風オルガンに、シカゴという都市の伝統を感じさせる、管楽器入りの08などはそういうギター主体とはまた別のバンドのようにさえ聞こえるし、10のオルタナぽいギターサウンドと70年代ぽさが混ざった不思議なインストも聴くと、表現欲求が旺盛なうえに、それを形にしてしまえる器用さがあるのだなと思う。シンガーソングライターが3人もいるという意味では、カナダのスローンやスコットランドのティーネイジファンクラブと比べてみるのもいいかも知れない。

 一枚の作品として聴いた場合、アルバムの構成という点が唯一に気になるけれど、原因はやはりそのソングライターが複数いるせいと、最初の作品ゆえの「ぶちこみ過ぎ」というやつだろう。意欲が勝ち過ぎなのはバンジョーが印象的で途中からジャズになったりする13のような落ち着かない曲を最後に入れることでもわかる。名刺代わりの一曲、というほど傑出したキラーチューンは見つからないけれど、個人的には02、03、05、07の甘味が好きだ。決して派手ではないけれど、好感の持てる1stアルバム。
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by penelox | 2008-04-16 11:18 | CD備忘録

Tantilla - House Of Freaks (1989)


 ハウス・オブ・フリークス。この名前をきいて反応するのは、よっぽどアメリカのインディー音楽に興味のある人なのかも知れない。私にしても、名前こそもう長いこと記憶の片隅に残ってはいたけれど、たぶんカレッジ系でも、特にペイズリーアンダーグラウンドの流れを汲む世代ではないのかな・・・そう思っていた程度で、REMの登場以降大きく増えたアメリカ全土のアンダーグラウンドで活動する多くのアーティストの80年代における数え切れないほどのリリースと同様、とてもその作品を聴くところまで行かなかった。当時は聴きたくてもとても追い付かなった、こんな作品を、いまこそしっかりと聴こうと思っている次第。

 ニューオリンズファンクぽい打楽器のアレンジメントに導かれる中毒性のあるポップチューン"When the Hammer Came Down"を一曲目に配し、英国人ジョン・レッキーによってプロデュースされたこのアルバム(おそらくストーン・ローゼズのあのデビューアルバムと同時期にかかわっているはずである)は、彼等の2枚目にあたるらしく、興味深いことに多くの歴史的発掘で知られるRhinoから出ている。再発専門というイメージのこの西海岸のレーベルから出ただけに、マニアックに知的に、アメリカ音楽の深部を探っている・・・そう予想していたのは間違いではないようだ。所謂ルーツ音楽-フォーク、ブルース、カントリーといった音楽が大きくその底にあるのだが、そこに研究家よろしくただどっぷりと浸かって悦に入っているのではなく、それらを使って再構成し、自分達ならではのポップミュージックにまで高めているところが良い。ベースレスで、ブライアン・ハーヴェイ(Vo/G)とジョニー・ホット(Dr)のふたりだけというまことに変わった編成で、アコースティックなタッチのギターサウンドとよく考えられたリズム解釈、そして大変ポップで上手い曲作りをするハーヴェイ氏による若々しくシャウトするVoがが特徴的。そして、何と言っても、どこかニヒルな佇まいを見せる全体の音像。全体に纏われたブルーズ感覚のせいだと思うが、人の良いアメリカーナ・ミュージックにならず、どこかにバンド名通りの悪魔性というか、南部の音楽の深部に潜むダークな感覚を救い上げようとしている気配がそこかしこに滲んでいる。個人的にアメリカン・サザン・ポップに無意識に惹かれるのはその影の部分ゆえなのかも知れない。たとえば、02 "The Righteous Will Fall"はキリスト教右派としてしばしば問題視される南部バプテスト派の支配について(その支配側の思考プロセス、権力を失う恐怖をシュミレートしたような内容だろうか)、08 "Kill the Mockingbird"はハーパー・リーの小説「アラバマ物語」("To Kill A Mockinbird")へのオマージュなのだそうだ。初期のREMにも感じられたけれど、一聴のどかだがじっくり聴けばどこかに、何百年ものあいだに白人、黒人、ネイティヴアメリカンといった様々な立場の人達を巡る、人種差別、貧困、宗教を巡る対立、そして暴力が生み出した血や汗や悲しみ、怨念、無数の人々の思いが微熱をもって混じりあい、もはや言葉にさえならないような無力感と失望感にとしてその土地に染み付き、その果てと思しき倦怠感が、暑く湿気を孕んだ空気となって立ち上り、まるでマイクロフォンで拾い上げられるかのように音に刻み込まれている・・・ヴァージニア州リッチモンド出身の彼等はそんな南部の空気感を纏いつつも、あくまで客観的な語り手としての立場を崩さず物語を紡いで行く。そんな、60年代後半にアメリカ全土を揺らした左翼的学生運動とある意味地続きの誠実な姿勢がまさに80年代の、まだ極端に商業化する寸前のカレッジ音楽らしくて良い。個人的に、彼等が描く世界がその基底において、私が仕事柄体験することも多々ある日本におけるそういった立場の人々-つまり被差別部落や在日の人々、宗教に翻弄される人々-とオーバーラップすることがあるから、またそういった方面についての本に最近触れることが多いから余計そう思うのかも知れないが、もっとも重要なのは、作られている音楽が決して古びていないスタイル、むしろ当時としては早過ぎたぐらい現代的なところ。今ではホワイト・ストライブスに代表されるような、ある種お洒落な売れ線として消費され尽くしてしまった感もある、変則デュオによるオルタナティヴなルーツ音楽探訪 - 20年前のそんなスタイルのプロトタイプとして、彼等を若い世代に知っていただくのもまた良いかと思う。

 最後に大変残念なことをひとつ。中心メンバーのブライアン・ハーヴェイ氏、2006年1月に地元リッチモンドで起こった連続殺人事件に巻き込まれ、家族全員とともに遺体となって発見されたという。関わっていた犯人達が黒人であることが、この作品で感じられる姿勢、深みを考えると、何より残念な思いに立たされる。合掌。
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by penelox | 2008-04-13 23:03 | CD備忘録

Be Yourself Tonight - Eurythmics (1985)


 80年代を代表するアーティストのひとつであるユーリズミックスの4thアルバム。ソウル/R&Bへの愛情を本格的に明らかにした最初の作品のようだ。ようだ、と曖昧な表現をするのは、私にとって当時の彼等は作品が出たら常に買う、というアーティストではなくて、MTVでチェックする程度だったから。シングルはたいてい注目していたし、そのどれもが印象的だったけれど、10代終わりにありがちな自己アイデンティティー形成、特に私の場合、その後の音楽活動に繋がる、見本としての音楽が優先されていて、男女二人組というフォーマットの彼等はその意味では遠かったのだと思う。"Sweet Dreams"や"Here Comes the Rain Again"など初期におけるクールなエレクトロニクスサウンドはもちろん好きだったが、当初からアニー・レノックスの歌はソウルフル(当時の自分の表現レベルで言うと「歌めっちゃ上手い人」!)で、陰鬱な音像が似合いそうに思っていた彼女の声が明るいカリプソサウンドと溶け合うと不思議な魅力があった"Right By Your Side"などは、特に好みだったことを思い出す。彼等がR&B/ソウルの下敷きを持っているというのは、たぶんこうやって小出しにはしていたのだろうが、アメリカでの成功からかの地での人的交流が増えるにつれ、自然とその資質に本格的に向き合うようになって行ったのだろう。あくまで後付けにはなるけれど、きっとこの路線もあったからこそ現在の彼等の世界的名声があるのだろうし。その辺りをちゃんと聴いて確かめておきたいと思った次第。

 当時は大ヒットした02 "There Must Be An Angel"(スティーヴィー・ワンダーのハーモニカが聴けるのは話題になったものだ)がよく流れていたし、自分自身はこれとアレサ・フランクリンが共演した04 "Sisters Are Doin' It For Themselves"(今聴くとアニーの歌い方は結構アレサの影響を受けている気がする)しか知らなかった。で、それらだけでずいぶんアメリカっぽくなったなぁ、という印象を漠然と持っていた記憶があるのだけれど、19ハタチの頃にアルバムに触れず、二十年も経って今はじめて聴けるというのは、もしかしたらこれはこれで良かったのかも知れない。(若い頃は特にそうだが、メディアに評価を預けてしまっているがゆえの)凝り固まった偏見に惑わされることなく、新譜のように大変新鮮に、かつソウルへの愛情の深みも感じる作品として聴けたのだ。今考えてみれば物凄いゲスト参加があった豪華なアルバムであり、それまでの世間的なイメージを考えれば大きな路線転換に打って出た大変な意欲作だったのだなと思う。アニー・レノックスの声が実に味わい深いのと、ギターサウンドと時折あらわれるエグいシンセサウンドの絡みが心地良い。もちろん80年代半ばなりのソウル路線だから、楽器の音やアレンジには時代を感じるのは事実。今ならもっとエレクトロニクスを減らし、ヴィンテージな楽器を使ったいかにもソウルっぽいサウンドになったかも知れない。けれど、そうじゃないからこそ(ダサ格好良いシンセが絡んで来るからこそ)当時らしくて愛おしい音、というのが、80年代育ちの偽らざる感想。01 "Would I Lie To You?"はそういう折衷感覚がまだ、ストレートな古き良きソウル感覚の添え物風なところがあるけれど、このアルバム以後の新しい彼等の代表曲となった02を挟んで03以降になると徐々に当時のブラックミュージックの彼等流解釈としてのエレクトロ・ソウル/ファンクいう趣に傾斜して行く。06 "Adrian"でエルヴィス・コステロとデュエットしているというのも、恥ずかしながら当時は知らなかったし、知っていたら違和感を覚えたかも知れないけれど、今考えるとソウル/R&B好きな両者だから別に不思議ではない。あと、トム・ペティー&ハートブレイカーズのメンバーが演奏に参加しているのも、のちのトム・ペティーの作品でのデイヴ・A・スチュアートの貢献を考えると興味深い・・・とまあ、当時のことを色々思い出せて楽しめたけれど、若い世代の方にはどう聞こえるのか、それも興味深いところ。
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by penelox | 2008-04-10 11:57 | CD備忘録

The Icicle Works - The Icicle Works (remastered expanded edition/2007)

Disk One

01. Chop the Tree
02. Love Is a Wonderful Colour
03. Reaping the Rich Harvest
04. As the Dragonfly Flies
05. Lovers' Day
06. In the Cauldron of Love
07. Out of Season
08. Factory in the Desert
09. Birds Fly (Whisper to a Scream)
10. Nirvana


 リマスタード盤になって何が変わるかというと、やはりひとつひとつの楽器の音の輪郭がスッキリして、狙いや仕掛けが分かりやすくなるということだと思う。そのぶん、80年代の録音技術の限界も現在の耳でわかってしまうだろうし、全体としてのダイナミズムとしてはどうだろうか、単に録音レベルの差で揚げ足を取るような程度の低い批評に巻き込まれたら可哀想だなというのもあるけれど、そもそも音楽に対する印象と言うもの自体が、いわば一定のおおまかな形はあれど厳密には刻々と千変万化して行く川面のようなものなのだから、あまりあれこれ比較し過ぎても詮無いことだと思う。できるだけ、まずはこれはこれで興味深い、新たに出た作品として聴いてみようと思う。

 シングルB面やBBCセッション、ライブトラックなどを加えた2枚組としてあらたな装いを施されたこのリヴァプールのトリオ、アイシクル・ワークスの1984年のデビューアルバム。オリジナルLPは20年以上も前から、もう何度も聴いているこの作品(当初は"Reaping the Rich Harvest"が"Waterline"に差し換えられた米国盤。のち英国盤も入手したが、アメリカ盤の方が流れが良い気がする)。86年春の来日公演も行った。だから、どうしてもノスタルジーから逃れるのは難しい。それに、「ネオ・サイケデリック」の名盤としての一定の評価が一般的にはなされていて、逆に言うとそれ以上に広がらないのが大変残念な作品でもある。それは結局のところ、そのあと彼等が当時比較されたU2やREMのように世界的バンドになれなかったことに起因すると思う。日本ではあまりそういう比較はされず、初期はどちらかというと同郷リヴァプールのエコー・アンド・ザ・バニーメンやカメレオンズといった、所謂そのカテゴリーの代表的バンドと目される人達と音の傾向からくらべられることが多かったと思うが、いまリリース全体を俯瞰して、このCDのブックレットでの元マネージャーのトニー・バーウッドによる述懐や、当時の英国での彼等の位置付けを振り返ってみても、そういった見方-U2、REMになれなかった80年代のバンド-の方がわかりやすい。それは、もちろんこのアルバム後に、そのサウンドを変転させたことが商業的大躍進に結びつかなかったせいもあったろうし、レーベル、マネージメント、そういったものも含めた(特にアメリカ進出に関しての)運・・・これらが彼等をそう運命付けてしまったのだと思うけれど、今言ってどうこうなるものではない。それよりも大事なことは、ここで聴ける可能性、瑞々しいエネルギー、センス、演奏力、それに大変ポップなメロディーを書くイアン・マクナブのソングライターとしての才能、これらがこの作品に見事に刻み込まれていて、かつ20数年経ったいまなお現在進行形であることを皆様にお伝えすることであろう。私の判官贔屓は差し引いても、マクナブ本人がブックレットで認めざるを得ないと言うように、彼等最初の作品にして最高傑作、のみならずポップロック、ポップミュージックの名盤の一枚に数えるべき素晴らしい作品ではないかと思う。

 スケールの大きいロマンチシズムをたたえた彼独特の夢見るような音楽の出発点。どの曲も身体に染み込んでしまているので全曲がお薦めだが、ヒットした名曲の02 "Love Is A Wonderful Colour"や09 "Birds Fly( Whisper to A Scream )"、それにこれぞ個人的ネオサイケデリック、勢いのある演奏とメランコリックな叙情性という彼等らしさが存分に味わえる01 "Chop the Tree"、"04 As the Dragonfly Flies"、08 "Factory In the Desert"、10 "Nirvana"、このあたりがとりわけ印象的。

Disk Two

01. All Is Right
02. When Winter Lasted Forever
03. Love Hunt
04. Reverie Girl
05. Gun Boys
06. Love Is a Wonderful Colour [Long Version]
07. Waterline [USA Version]
08. In the Dance the Shaman Led
09. Devil on Horseback
10. Mountain Comes to Mohammed
11. Birds Fly (Whisper to a Scream) [Frantic Mix][Mix]
12. Scarecrow
13. Ragweed Campaign
14. Atheist
15. Nirvana [Live]

 アイシクル・ワークスのコアなファン、特に1stをこよなく愛する向きにとって、このDisk Two-1982年〜1984年のラジオセッション、ミックス違い、B面曲集-は最高の贈り物である。01、02は1982年1月26日のBBC Radio One、ジョン・ピール・ショーでのセッション。若さと勢いで迫る、まさに1stアルバムの原石のようなネオサイケデリックな楽曲、演奏だが、イアン・マクナブならではポップセンス、ダイナミックな歌心は既に脈打っている。03は聴き覚えがあるが、一体どこで聴いたのか思い出せない。1982年11月25日のBBC Radio One、デヴィッド・ジェンセン・ショーでのセッション。サビで爽やかに抜けて行くマクナブ節はまさに彼等そのもの。どんどん1stに近づいて来ているのがわかる。

 04、05の2曲は1983年の名シングル"Birds Fly"のSituation Twoからの初期盤B面に収録されていた。彼等の作品に捨て曲がないということは、こういう曲を聴けばわかるのでは。やっぱり1st周辺の曲は格別の魅力を湛えているなと実感する。

 ヒット曲"Love Is A Wondeful Colour"のロングバージョンである06を聴きながら相変わらず自虐と自尊の明滅する、それでいてユーモアを忘れない、いかにもイアン・マクナブらしい自らのライナーを読んでいると、不覚にも胸が詰まる。

「2006年6月にリヴァプールの雨の夕刻、リスニングルームに坐り、この新たにリマスターされた輝くようなヴァージョンをヘッドフォンで聴きながら、何が心に浮かんだか?  何と自分が若く純真無垢だったか。何と無邪気だったか。何と頭デッカチだったか。何と利口で、何と愚かで、何とキュートで、何と才能に恵まれているか、ということだ。」

「80年代はポピュラーミュージックにとって最悪の10年である。それはその時代が作り出したアーティスト、それにその時代が記録し表現した方法という点からしてだ。アイシクル・ワークスは80年代のエンターテイメントのいくつかの罪を犯した。しかしおそらく、商業的な売り上げと批評筋での評価の点で我々をしのいだ多くのアーティストよりも、その罪は少なかっただろう。我々のバンドにはボノのようなダサいマレット(左右が短くて後ろが長い髪型のこと)はいなかったが、時代という恐怖には屈した。たとえば、大袈裟なゲートリヴァーブのかかったスネアドラム(ブルース・スプリングスティーン)に、シューシュー言うデジタルキーボード(殆ど皆がそうだった)、遠回しで間抜けで、いかにも深遠であると考えたがる歌詞(エコー・アンド・ザ・バニーメン、REM)、もう見ることが出来ない糞ビデオ(デュラン・デュラン)。しかしそのどれも本当は問題ではなかった・・・。我々はそこにいた・・・君たちもそこにいた・・・それはまるで魔法のようだった・・・」

本当に。魔法のような時代だった、80年代。


 07はアメリカ盤LPに収録されたバージョンらしい。シングル"Love Is A Wonderful Colour"のB面に収録されていたバージョンともちょっと違う気がするのだが、どうなんだろうか。リズムボックスと美しい12弦のアコースティックギターが奏でる08は、その"Love"のB面曲。まさにその80年代の魔法。ネオサイケデリックな幻想の世界に連れて行ってくれる。09はそのシングルのダブルパックバージョンにしか収録されていない曲。尽きることなく湧き出て来る曲想がまさに若さの証。10はBBC Radioのデヴィド・ジェンセン・ショーでの1983年11月29日のセッション。割と荒いソングライティングかと思いきや、サビでまさにアイシーズならではの展開に。11は06とともに名曲のロングバージョン。当時の「12インチシングル」というフォーマットを懐かしく思い返すことができる。12、13は再録音され84年に再びリリースされた"Birds Fly"のB面曲。12弦ギターが心地良い12、さらにスケールの大きくなった13ともに、既に2ndアルバムに向けて動きだしていることがよくわかる。14、15は実は2ndアルバムのシングル"Holow Horse"のB面曲で、特に14はここではずいぶん毛色が違って聞こえるけれど、これはもう2ndの世界に入って来ているからだ。たぶん15が1stの曲"NIrvana"のライブ(クレイジーで素晴らしい! ヘッドセットマイクを付けたマクナブが目に浮かぶ)なので一緒に入れたのだと思うけれど、ここにこれらの曲まで入れてしまうということは、2ndアルバムはリマスタード盤として出す予定はないのだろうか? もしそうだとしたら、ちょっと残念。
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by penelox | 2008-04-08 22:43 | CD備忘録