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子門真人を褒めちぎる(3)

Watanabe's Pop Picks 103

「戦え! 電人ザボーガー」(「電人ザボーガー」( 1974年/製作・ピー・プロ/友映、放映・フジテレビ系)主題歌)

作詞:上原正三、作曲:菊池俊輔、歌:子門真人





 前回の(3)で書いたようなアンサンブル、引き締まった管楽器のアレンジをバックに、子門氏がソウルフルに哀愁のメロディーを聴かせる好サンプルといったら、これも。「電人ザボーガー」、これもまたリアルタイムで全部観たという記憶はないのですが、断片的には覚えているのは、きっと再放送時の記憶と混濁してるんでしょうな。それにしても、脚本は一部参加なのに、主題歌の作詞が上原正三とは驚き! 上原正三というと、金城哲夫とともに初期円谷プロを支え、「帰ってきたウルトラマン」でメインライターを務めた人。のちの「ロボコン」「ゴレンジャー」「ゲッターロボ」といった東映系の特撮/アニメで確固たる地位を築くのだけれど、私のなかでは断然「ウルトラ」の人。ウルトラシリーズにあったマイノリティーからの視点や、悲しみをたたえた作風は、特にこの方の貢献・・・という勝手な思い込みがあって、それがこの歌の悲しい旋律と歌詞、楽観主義にならないところとピタッと合って、妙にひっかかる。

 余談だけれど、小説にせよ、映画にせよ音楽にせよ、70年代前半の日本の表現物の多くに触れる度、何かしら強い哀感というか、悲しみが底に渦巻いている気がする。それは滅び行くものの悲しみとでも言うのか、昔からずっと感じていて、一体何で、何故なのか、今までも時折色々ものの本を読んだり、考えたりしていた。そこに引っかかるのはもちろん、子供の頃がまさにその時代だったからだが、その悲しみが今でも心のどこかで共振するのは、子供時代のうっすらとした記憶 -あさま山荘事件や、「列島改造」の名の元に、古いものがどんどん破壊され消えて行った視覚的記憶- が、今では一方で70年安保を契機とした変革の気運が単なるリンチ事件として処理される事で潰され、一方で権力側の横暴と管理がより進むことで国民全体に無力感が浸透し始めた時代だった・・・そうわかるにつれ、当時やたら多かった夕暮れの映像に託した想いを考えると余計切ないからだ。60年代半ばまでの闇雲なオプティミズムや、60年代後半の問題意識や改革への気運を経て、70年代半ば以降は陽だまり感・・・という風に、この国の時代ごとの容貌はどんどん変化して、先に書いたその悲しみは特に70年代前半に特に強く現れ、あっと言う間に表現物から消えて行く。日本全体がオプティミズムを失って行くのは、先に書いた管理強化や、高度経済成長の時代の終焉と無関係ではないだろうが、もっと気になるのはその悲しみが、何故こうもあの時代の特撮やアニメといった子供向け番組にまで色濃かったのか。それはやっぱり、時代の空気を吸っていたからだろう。殆どの当時の子供番組に関わっている人達のそれまでの軌跡や、その後の経路を考えてみても、覆いつつある閉塞感のなかで、誠実であろうとした表現者たちが、大人の世界で表現し切れなくなって来たテーマを子供の番組を隠れ蓑にして、託していたのだと思わずにはいられない。

 体制側の管理強化は70年安保の終了をもって以降激しくなる。また、資本主義のさらなる発展が競争の名の下に表現物のある側面での質の低下を招く・・・映画から娯楽の王道の座を引き継ぎながらも可能性を持ったメデイアであったTVももちろんその例外ではなく、あっという間に視聴率競争に飲み込まれ、質的低下を起こし始める。大人のドラマにおいて社会の不正や変革に真っ向から立ち向かうものは徐々に減って行き、刑事物でも学園物でも時代劇でも、体制を是とすることを前提にした作りが増えて行った・・・子供の頃親しんだものでも、今見返すとそういう作りの作品が年々多くなっていることに驚く。その先にあったのが80年代であり、私がアレルギーを起こしたのもまた、当然だったのだなと、今ではわかる。たぶん67年~72年ぐらいの子供向け番組が奇跡的に真摯であり得たのは、「ジャリ番組」とみなされたがゆえにその間隙を縫うことが出来たからだろう。その真摯な悲しみが、今は愛おしいのも事実なのである。


 その70年代前半の悲しみで符合するといえば、主演された山口暁(のち豪久)氏も何かそういう、悲しみが似合う役者さんだったと記憶している。前々回で書いた岸田森にも通ずる、どこか脆さと強さが共存していて、単にカッコ良いだけのヒーローの明るさ、単純さとは違う闇のようなものを、複雑な何かを子供心に感じる人だったということだ。当時もこの人どこかで観たことあるなと思っていたが、のちに、「仮面ライダーV3」のライダーマンこと結城丈二であり、「ウルトラセブン」の「栄光は誰れのために」のアオキ隊員であることがわかって驚き、大いに納得したものだ。どちらも翳りのある、性格俳優が似合う役どころだった。山口氏が既に20数年前、何と40代になるかならぬかで癌でお亡くなりになっているというのも、何だか悲しくもあり、しかし失礼ながらもこの伝説の俳優の物語にどこか相応しい気もしてしまう。


 ここでテーマにしている子門氏にせよ、80年代初めに亡くなられた岸田森氏にせよ、70年代前半の悲しみを伝えてくれた表現者達が、もし80年代を越えて90年代、そして今もご存命だったり、現役で活動してたら、どうなってたのだろうか・・・ そんなことをよく考える。時代に合わせて、軽く軽く変貌して行かざるを得なかったか、それとも本質を変えることを拒んでいたか・・・それはわからないけれど。

 それはともかく、生身の人間が作り演じるからこそあるあちこちにあるズレ、伸びしろと言うか、そのおかげで時に言葉にならないぐらい複雑で繊細な感覚を伝えられる、そんなポテンシャルが生き、表現者たちが真剣に子供向けの特撮番組に取り組むことで、時に意図する以上のものになっていた60年代末から70年代前半。その時代に居合わせたおかげでもらったメッセージは、決して子供向けのみに留まるものではなかったなぁと、YouTubeなどを観ては勝手に得心する深夜。



■「おれの兄弟 電人ザボーガー」(EDテーマ)
作詞:上原正三、作曲:菊池俊輔、歌:子門真人



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by penelox | 2009-04-30 17:39 | Pop Picks

子門真人を褒めちぎる(2)

Watanabe's Pop Picks 102

「ゼロテスター」(1973年/製作・関西テレビ、創映社、放映・フジテレビ系)主題歌
作詞:鈴木良武、作曲・編曲:山本直純、歌:子門真人



 何より「科学忍者隊ガッチャマン」で知られる子門真人氏。彼の歌う70年代前半~半ばのTV主題歌の素晴らしさといったら、ともかく高揚感、爽快感な訳ですが、そのメカニズムは、

(1)何よりソウルフルな歌唱
(2)日本人離れした英語の発音のカッコ良さ
(3)乱打されるパーカッション、ワウを多用したギターとグルーヴ感溢れるベースのアンサンブルが織りなすファンキーな70's前半~半ばの歌謡ロック・サウンドをバックに、マイナー調で哀しみや切迫感をギリギリまでためて、最後には心地よく一気に解決するドラマチックなメロディーライン


 ・・・これらが組み合わさって生まれるものでありましょう。そう考えると、(3)のようなファンキー歌謡曲ではなくマーチングタイプながら、特に(2)が冒頭で炸裂するのが上の曲。ぜひHQで聴いてみてください。何か凄い緊急事態のような気がしませんか(笑)。それに比べて後期のOP(2:54~)は、類型的なオコチャマ合唱団のコーラスで、今聴くとそれなりに良い歌ですが、前期OPとくらべると当時は迫力不足というか、子供騙しとして馬鹿にされてるような気がしたものです。子供ってそういうのは敏感なんですよね。


 余談ですが、EDの歌(「愛する大地」1:37~)は子門氏によるものではない(ロイヤル・ナイツ)のですが、この頃の作品としては特別に記憶に残っています。2分25秒あたりから震えるニニ・ロッソ風のトランペットには、いまだに落涙を禁じ得ません(笑: ちょいと大袈裟)。

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 余談ついでに「ゼロテスター」。今ではガンダムのクリエイター達がそれ以前にやっていた作品という点での評価と、合体メカ+和製サンダーバードっぽいアニメ、という説明がわかりやすいようです。当時出ていたプラモデルも人気があって、弟が持っていたと記憶しています。この番組についてはこちらに詳しいページがありますので、ご参照下さい。

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 子門氏に戻って、彼の英語のカッコ良さというと、これも。「ウルトラセブン」の英語バージョン。何か別のドラマみたく、完全な子門ワールドになってしまってますね(笑)ハワイで放映された「ウルトラセブン」OPより。


■"Ultra Seven" - Masato Shimon


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by penelox | 2009-04-30 11:02 | Pop Picks

子門真人を褒めちぎる(1)

Watanabe's Pop Picks 101

「ファイヤーマン」(1973年/製作・円谷プロ、放映・日本テレビ系)主題歌
作詞:阿久悠/作曲:小林亜星/編曲:ボブ佐久間/歌:子門真人



「地球が 地球が大ピンチ」
と、冷静に歌われるよりも
「ちきゅうがちきゅうがどぁいぴぃんちい」(「う」はwの音を含む)
と、歌われる方が真に迫って来るに決まっている・・・(笑)


 どういう訳か一年のある時期だけ、突然子供の頃の特撮とか、アニメの主題歌を無性に聴きたくなる。特に連休の頃そうなりがちな気がする。風薫る5月の声を聞くと、既に街で見かけるこいのぼりが、眠っている童心に火を付けるからであろうか? 闇雲に血湧き肉踊るモノを求めてしまうのは、普段のその真逆な日常ゆえか?(笑)

 はたまた、小学生としまじろうのシール貼りをやってるうちに、ガキんちょの正体不明のグルーヴに空気感染したのか?(苦笑)


・・・ともかく、その手の曲をここらでまたちょいと聴きまくり、死にかけの心に燃料補給する日々。特に最近は、子門真人!

 ヘトヘトに疲れて思考が続かない心の、数少ない栄養。彼の歌と「素浪人花山大吉」の連続放送がなかったら、正直危ない日々(苦笑)。


こちらがTV放映時のオープニング。


 前にもこのPENELOGのどこかで書いたと思う「ファイヤーマン」、リアルタイムでは数回観ただけだったと記憶している。1973年だから小学校2年生の頃。好きな物が四方八方に広がって、特撮/怪獣ものどころではなかったのか、それとも、ことTVに関しては時代はアニメやロボットもの中心へと移行しつつあったから興味自体そちらに移って行ってたのか・・・よくわからないけれど、ともかくちゃんと観た記憶はなかった。

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 しかし、近年全部観て、色んな意味でなかなか興味深かったのもまた覚えている。円谷プロ10周年を記念して制作されたということもあり、原点回帰(つまり初代「ウルトラマン」)をある意味目指したらしく、特に初回あたりは、「ウルトラマン」が持っていたセンス・オブ・ワンダー感というか、ミステリアスな感覚が、東宝特撮の匂いを感じさせるメカニックとともによく出ていた(余談だけれど、たぶん、同時期に作られた「ウルトラマンタロウ」が初代の持っていたメルヘン的側面を掘り下げたのだろうな)。

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 あと、ともかく岸田森! この方が出るだけで、こういうドラマの盛り上がり度は全然違うのだけれど、12話「地球はロボットの墓場」では脚本を書き、主演もしていて(これが彼自身は無言劇!)、非常にアヴァンギャルドと言うか、意欲的な作品だった。これだけでもぜひ観て欲しいものです。
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by penelox | 2009-04-30 10:53 | Pop Picks

ダブル・ドキュメンタリー

Watanabe's Pop Picks 100
"You'll Start A War" - The Pale Fountains
from the album "Pacific Street"(1984)




 088以降、80'sリヴァプールに絞ってこのひと月あまりの間に様々なアーティストを挙げて来ましたが、ひとまずリヴァプール特集はこの人達で区切りを付けたいと思います。もちろん他にも色々取り上げたい人達、作品はありますが、それはまたいずれ。


 このペイル・ファウンテンズは、80年代の彼の地のアーティストのなかで一番思い入れがあるぶん、一番最後の紹介となりました。一番美味しいものは最後に取っとくタイプでして(笑)。


 まずは、当初LPでは"(Don't Let Your Love) Start A War"というタイトルだったはずの1stアルバム"Pacific Street"からの曲を挙げてみました。


b0022069_17525468.jpg それにしても、彼らについて客観的に語るというのはなかなか難しいことです。音自体があの時代の記憶 - 82年から84年ぐらいの、十代後半の自分の心象風景 - と密接にリンクしているので、心がザワついて来るというか、とても冷静にはなれないんですね。特にこの1stの浮遊感。この内省的で淡く、甘いくせつない音像は、リアルタイムで経験してると、心が条件反射なのか、自動的に急性思春期落ち込みごっこ(苦笑)をやってしまうので危ない。あの頃の想い、あの人、あの街並、あのやるせない日々・・・とかが甦るんですよね。それに比べると、2ndのよりダイナミックな世界の方がより気楽に、頻繁に聴けるのですが、それは、聴いていた自分の成長ゆえ、より距離を置いて、客観的に聴けるようになっていたから・・・最近はそういうことに思えるんですね。つまり、クオリティー云々の話というよりも、1stはより私自身の自己形成のプロセスに関わってるぶん、まるで10代の日記を開くようなもので、それで聴くのが気恥ずかしいんじゃないかと。音楽が自己を映し出す鏡だというのは、こういう時によく感じる次第。ペイル・ファウンテンズの2枚のアルバムを聴くと、彼らにとっての成長だけでなく、聴いていた自分の成長をもはっきりと映っているのが確認出来る・・・聴き手として同時代を歩んだ者からすると、彼らの音楽はそんな二重のドキュメンタリーでもありました。

 と言う訳で、しょっちゅう聴く訳ではないですが、それだけに大切しておきたい秘密の場所。それが私にとってのペイル・ファウンテンズの84年の1stアルバム。

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1stならびにそれ以前のシングルからの珠玉の名曲達。

■"Reach"




■"Unless"




■"Thank You"





■"Something On My Mind"





 85年の来日公演を収録した当時のラジオ番組で初めて聴いた曲。彼らやアズテック・カメラ、プリファブ・スプラウト、スタイル・カウンシル、ロイド・コール&ザ・コモーションズ、ロータス・イーターズ、チャイナ・クライシス・・・挙げだしたらキリがないですけど、このあたりに刺激されまくりだった1984、5年。

■"Palm Of My Hand"





 これはベルギーのクレプスキュールから82年に出た12インチ"(There Is Always) Something On My Mind" / "Just A Girl" / "Lavinia's Dream" で聴いたのが最初。当時弟が画塾に通っていて、その通り道にあった実にマニアックなレコード屋の影響で、日々彼のレコードコレクションが増えて行ったのですが、そこからこっそり盗み聴きしたもののひとつが82年に出たこれ。こういう恥ずかしい沢山の思い出とともにあるのが彼らのレコードなんです(笑)。

■"Just A Girl"





b0022069_17531717.jpg 以下ふたつは当時の英国の音楽番組"Old Grey Whistle Test"からの映像。これらの曲はアルバム未収録トラックを集めたコンピ"Longshot For Your Love"に収録されてるそうですね。実はまだ持ってないのですが・・・このコンピを聴くのは老後の楽しみと考えてるんです(苦笑)。








 最初の"Hey There Fred"は2ndアルバムの某曲に似てる気がするのですが・・・習作というか、のちに2ndの曲に生きたのかな、とか考える数秒。

■"Hey There Fred"




■"Free" (Deniece Williams)





 ※mixiでずっと連載しているこのpop picksシリーズ、こちらのPENELOGでも、加筆編集し連載中。楽しんで頂ければ幸いです。
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by penelox | 2009-04-25 17:57 | Pop Picks

反逆者達と踊れ!

Watanabe's Pop Picks 099
"Dancing With the Rebels" - Original Mirrors
from the album "Heart Twango & Raw Beat" (1981)

Dancing With the Rebels promo clip

 リヴァプールの音楽シーンを何より世界に知らしめたのは60年代のビートルズで、70年代末から80年代初めのNew Wave/Post Punk期における新世代爆発の導火線になったと言えばこないだ紹介したエコー&ザ・バニーメン。となると、そのつなぎ役となり、後者の下地を作った大きな存在として、忘れてはならないのがデフ・スクール。


 それにしても、デフ・スクールと言って反応する方がどのくらいいらっしゃるのか・・・正直言えば、なんでここまで知る人ぞ知る存在なのか、そっちの方が気になりますが、気を取り直して。話はは70年代半ば、Punkという括りがメディアの中で成立する1976年の寸前、グラムロックやプログレッシヴロック、ブルース/ハードロックの流れに収まり切らないたくさんの音楽たちがありました。そのなかで、ポップなメロディーを持つものは時にモダンポップと呼ばれ、一方パブシーンに個性的なアーティストが集い、Punkの導火線となった現象はパブロックと呼ばれた。このふたつのカテゴリーというのは実はどこかではっきりと区切るというものでもなく、時に並立し時に混在していたものなのだと思うのですが、ともかくその両方をまたにかけてたくさんの個性的なアーティストがメジャーからマイナーに至るまでいて、ノスタルジックとも未来的とも言える摩訶不思議な音楽を奏でていた・・・おそらくそのなかで一番メジャーな存在といったら10ccであり、セイラーやスパークスもそうでしょう。その佇まいからパブロックに括られるといったらカーサル・フライヤーズ。で、そんな中のひとつにこのデフ・スクールもいた。そういう理解するとわかりやすいように思います。


 1975年にリヴァプールのアート・スクールで結成されたこのバンド、活動中には3枚のアルバム - "2nd Honeymoon"('76)、"Don't Stop the World"('77)、"English Boys/Working Girls"('78)-をリリース。80年代末に再結成ライブを行い、近年も地元で再結成ライブを行った模様。


 彼らの特徴はもちろん、上に書いた様な独特のノスタルジックなアート・ポップ - クレバーで意欲的なポップロックと言ってもいいかも知れません-な訳ですが、それともうひとつ大事なポイントは、メンバーのその後の活動。リヴァプールの音楽シーンのみならず、英国ロックシーンを時に裏方として支え続けて行くことで、その後のこのバンドの名声を高めたとも言えるのでしょう。最もよく知られるのが、ギタリストのクライヴ・ランガー。プロデューサーに転身しコステロやモリッシー、ロイド・コール&ザ・コモーションズの数作、なによりマッドネスを手掛け、80年代には一世を風靡しました。ソロとして活動した女性Voのベット・ブライト、プラネッツを結成してポリス・ミーツ・トム・ロビンソンな好アルバムを2枚リリース(実はこちらも紹介したかったのです)したベーシストのスティーヴ・リンジー、他にもプロデューサーとなったイアン・リッチー(Sax etc)も知られるところですが、忘れちゃいけないのがVoのエンリコ・キャデラック。本名のスティーヴ・アレンに戻し、イアン・ブロウディー(もちろんあのライトニング・シーズの人)やジョナサン・パーキンズ(元XTC。バリー・アンドリュース加入前のキーボーディスト)らと結成するのがここで紹介しますオリジナル・ミラーズ。

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 ここで聴ける音から察するに、彼がオリジナル・ミラーズに求めたものは、パワーポップ的なニュアンスを残しつつも、時代の波 - Punk/New Waveに刺激されたポスト・パンクなものだったと思います。時代的にまだネオ・サイケという括りが成立する寸前であり、そう言い切るところまでのわかりやすい完成度には至りませんが、そこに繋がる過渡期の音として十分評価出来るものだと思います。熱情に溢れたVoスタイルからすると、そのベクトルはのちのU2やシンプルマインズなどにも通ずる80年代の地方型ロックサウンドという方向に向いていて、ということは、活動期間からして少し早すぎた音だったのかも知れませんね。もう少し活動が続いていたらネオ・サイケ・バンドの一角に成り得たかも知れません。

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■"Chains Of Love" - Original Mirrors
from the album "Original Mirrors" (1980)



■"20,000 Dreamers"(12 inch version) - Original Mirrors




 今聴くとどの曲も結構ポップで良いですね。ポストパンク当時らしい硬質な音もまた、新鮮に聞こえるのでは。


 デフ・スクールの音源でもっとも有名なものを。英国ミューシック・ホールの伝統を捻った小粋なアート・ポップですね。

■"What A Way To End It All" - Deaf School




ソロに転進したベット・ブライトの曲を。のちマッドネスのサッグスの奥方になったとか。

■"Hello, I'm Your Heart" - Bette Bright





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by penelox | 2009-04-22 21:48 | Pop Picks

ダルジールとは 俺のことかとディエル問い

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 ケーブルのミステリーチャンネルというのを観ていたら、「ダルジール警視」("Dalziel & Pascoe")というドラマをやっていて、ついつい引き込まれてしまった。英国のドラマでダルジールだなんて、何系の人が主役なのかと思ったら、いかにも彼の国らしい叩き上げノンキャリ・ワーキングクラス警視とエリート・ミドルクラス部長刑事のコンビが出て来て、非英国性を売りにするような内容ではないので、どういうこっちゃと。



 で、そのダルジールというのはDalzielと綴るのだが、番組の終わりに「ダルジール」という表記にしていることについてのおことわりが出ていた。調べてみたら、これはスコットランド系の名前で、実は「ディエル」と発音するのだそうだ。そういえば、ダルジールなんて呼び名、一度もセリフに登場して来なかった。ミステリー小説というのを読まないのでわからないのだけれど、どうやら日本では既に小説でこの読み方が定着しているので、それゆえそのままにしている、ということのようだ。


 それにしても、Dalzielでディエルと読むなんて、スコットランド好きながら知りませんでした。勉強になります。ケルト系の名前は奥が深い。


 このアンドリュー・ダルジール(ディエル)警部を演じているWarren Clarkeは、あの映画「時計じかけのオレンジ」("Clockwork Orange"/1971年)でDimを演じた人。

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「ダルジール警部」に戻ると、本筋も面白いのだけれど、英国刑事物によくある、階級間の軋轢、地方都市の鬱屈感、主人公も含めた私生活のリアリティあるちょっとした味付けが、作品に陰影を与えている。10年前の作品だけれど、高齢者問題なんて個人的に身につまされるところもある。これは「フロスト警部」シリーズでも感じたところ。



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このミステリーチャンネルの英国推理物は、色々面白いドラマがありそうで楽しみ。
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by penelox | 2009-04-21 14:05 | 日々雑感

汝が谷は緑なりき

Watanabe's Pop Picks 098

"How Green Is Your Valley" - 16 Tambourines
from the album "How Green Is Your Valley?" (1990)




b0022069_13737100.jpg このバンドは90年に一枚だけアルバムをリリースしてシーンから姿を消したので、知名度はあまり高くはありません。どちらかというとマンチェ期にその横でひっそり咲いた良質な「ギターポップ」バンドのひとつとして見られがちなのかも知れませんが、スタイル・カウンシルにも通ずる、セミ・スタイリッシュなR&B/ソウル/ジャズを下敷きにしたポップサウンド、アメリカのペイズリーアンダーグラウンド期の好バンド、スリー・オクロックの曲から取ったというバンド名から察するに、むしろ「少しデビューが遅れた80年代派」と見た方がわかりやすいのではないでしょうか。彼らもリヴァプール。それにしても楽曲構造、音色の配し方、唱法・・・個人的にはあまりにいちいちわかる音楽なんで汗かきます(笑)。

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16 Tambourines MySpace page

ここを御覧になるとおわかりになると思いますが、影響を受けた音楽が全く同じなんですわ(笑)


 この作品は以前Multicoloured Shadesというレビューサイト(更新が停止していて申し訳ないです)でも取り上げてますので、ぜひ御覧下さい。

"How Green Is Your Valley?" review on Multicoloured Shades


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by penelox | 2009-04-20 13:12 | Pop Picks

歌劇の街宝塚には女性市長が似合う


 そして、昔から社会党(社民党)が比較的強い阪神間には、社民党出の市長が似合う。高齢者が多い阪神間、自民よりは福祉に意識がありそうな社民に期待をかけるのは必然。だからこうならなきゃおかしいとずっと思っていた。

 わが町宝塚の市長選。一票を投じた中川智子氏が当選して本当に良かった。
 これからが大変なのだろうけれど、まずはめでたい。

元衆議院議員の中川智子氏、宝塚市市長に当選

こういったことが来る総選挙へ、そして自公政権の終わりへの弾みとなることを祈る。
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by penelox | 2009-04-20 00:55 | 日々雑感

世界の収穫はいつになるのか

Watanabe's Pop Picks 097
"Harvest For the World" - The Christians
from the single "Harvest For the World" (1988)

Harvest For the World



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 リヴァプールの良心的ポップミュージックの魂。これがソウルスタイルで展開されれば、そりゃ素晴らしいに決まってます。

 ロジャー、ギャリー、ラッセルのクリスチャン三兄弟というボーカリスト(ロジャーはアルバムリリース前に脱退しますが)と、ソングライティングと打ち込みを担当するヘンリー・プリーストマンからなるクリスチャンズ。

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 80年代後半に盛り上がって行く英国ソウル(これは80年代前半のNew Wave - 特にネオアコースティック/AOR、ブルーアイドソウルムーヴメントの発展・継承した先にあったものなので、個人的には大変感慨深いのです)の歴史に鮮やかな功績を残した彼らもまた、リヴァプール出身。何と言ってもファーストアルバムと、アイズレーブラサーズのカヴァー"Harvest For the World"が私の心のなかでは永遠の光彩を放つ人達ですが、マネージャーが以前紹介したWah!と同じということもあって、リヴァプールシーン馴染みの人達と人脈的にかぶるのでさらに思い入れが加わってしまうのです。まぁ、私のそんな個人的思い入れは抜きにしても、80'sリヴァプールの層の厚さはもちろんのこと、音楽そのものの奥深さ、幅広さはまたこういったソウルバンドでもよくわかるのではないでしょうか。

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 全英2位まで上昇した1stアルバム"The Christians"(1987)からの曲を当時のTOTP出演時の映像から。


■"Forgotten Town" -
 音自体は実にソフィスティケートされたポップソウルなのですが、社会を見据えた歌詞の真剣さもまた好きでしたね。




■"Ideal World"
まさしく名曲。




■"Hooverville"




 なお、彼らは長い休止期間(正式に解散はしていなかったようですが90年代は事実上そんな状態でした)を経て、ギャリーひとりを中心に新ラインナップで再編、再活動中の模様。プリーストマン氏の楽曲でないのだとしたら、これはまただいぶ違うのかも知れません。


 3曲聴いて、タイトルでもわかりますが、彼らの歌詞が当時の政治的状況にコミットしたものであったことを思い出しました。上のシングルが出た88年辺りの英国というのはサッチャーの保守党政権がほぼ10年を迎えており、今だ日本では検証・反省さえ出来ない新自由主義(この時代の英国だとサッチャリズム)による古き良き福祉国家としての英国の破壊が進み、英国のアーティストの多くは懸命に抵抗の声を上げていた時期でした。20年前、日本のみならずアメリカでも、スタイル・カウンシルやブロウ・モンキーズ、それに彼らのような英国のソウル系アーティスト達にある政治性は殆ど理解されなかったと記憶していますが、現在の世界的金融危機から発した経済状況を考えるに、彼らの当時の姿勢(何に反応し、何に抵抗したのか)を含めたその音楽的評価もまた、今後見直されて来るのではないかと思うのです。さて、日本では?




b0022069_1063466.jpg クリスチャンズのソングライターであるヘンリー・プリーストマン(元ヨッツ、元イッツ・イマテリアル、元ワー! / 現在ではマーク・オーウェン、メラニーCのプロデューサーとして知られる)が昨年スティッフ(今ではZTT傘下だというのも驚き)から出したソロアルバム"The Chronicles Of Modern Life"からの曲を。こちらを見たところでは、ヨッツ時代の曲もセルフカヴァーしていて興味深いです。少し捩じれた、ディラン風のボーカルになかなか味があり、彼の音楽的ルーツを見る思いです。






■"Don't You Love Me No More?" - Henry Priestman



■"Old" - Henry Priestman





■"Suffice To Say" - Yachts

 そのソロアルバムでプリーストマン氏がセルフカヴァーしているYachts(ヨッツ)時代のこの曲は、スティッフからのデビューシングルでした。プロデュースはウィル・バーチ(レコーズ)、そもそもヨッツがこの契約に至ったのはエリックスでのエルヴィス・コステロのリヴァプール公演の前座を務めたからで・・・いちいち書いてて興奮します(笑)。




■"Love You, Love You" - Yachts

同じくヨッツのデビューアルバムからのシングル。捻りの効いたパワーポップが粋です。




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by penelox | 2009-04-17 10:12 | Pop Picks

生きて行けば行くほど

Watanabe's Pop Picks 096
"The More You Live, The More You Love" - A Flock Of Seagulls
from the album "The Story Of A Young Heart"" (1984)



 リヴァプールは良質のポップミュージックの宝庫・・・色々紹介して来て、私のそういう表現にどれほど説得力が増したか、正直なところわかりません。

 私が考えるのみならず、普通良質のポップミュージックとは何かとなれば、それはきっとスタイル的なものではなくて、姿勢を問われるんだと思います。つまり、良心が込められた、心あるポップミュージックと言い換えても良いかも知れません。所謂「趣味が良い」「良く出来た」ポップミュージック、で終わるものと違うのは、そこに良心、それも単に子供が自然と持つ屈託のない良性というよりも、(個人もしくは共同体が)清濁併せ飲んだうえでなお持とうとする、普遍的に人間が持っているであろう善性への理解と期待 - つまりは人間存在への愛情。それを音楽に託そうとする、折れる事なく強靭で、気高い意志。私などはこれを魂(ソウル)と呼びたい訳ですが、要はそういう、しなやかな、ある意味大人の良心がこもっているかどうか・・・甚だ主観的、心情的ですが、私はそう考えてますね。そして、そういう意志のバトンが、心ある音楽を介して世代を超えて渡され、価値判断の基準として根付き、音楽創作の原動力の一角になるからこそ、その音楽は強度を増す。人間存在への愛情に裏打ちされた音楽だからこそ、どんなに遠回りしても、結局音のどこからかにじみ出て来て、人間が普遍的に持つ心の良性に訴えかける・・・こういった法則を意識的かあるいは無意識にか、リヴァプールの人達にはわかっている、もしくは忘れないでいられるようなコミュニティー(共同体)が残されている・・・そこに強さがあるのかなぁと、今のところ思うのはそんなところです。

b0022069_22462480.jpg 80年代前半にアメリカを中心に成功を収めたこのフロック・オブ・シーガルズも実はリヴァプールのバンド。失礼ながらこのルックスからはなかなかイメージしにくいかも知れませんが、しかしこの誠実なポップミュージックは、やはり一回聴いて終わりではない深く聴かせるものがあるし、聴けば聴くほど、またこの冒頭での歌詞についてのインタビューを見れば見るほど、作り手として(試練を乗り越えて来た果てに残ったのであろう)誠実な願いのようなものが伝わって来て、いかにもリヴァプール産の良心的ポップミュージックと呼ぶに相応しいという印象が強くなります。


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 彼らの近未来風というかSF風の見た目から、シンセ色が強いイメージがありましたが、いま聴くと実はかなり伝統的なギターバンドでもあることを確認。私にとっては彼らもまた、10代の終わりの、古き良き思い出ではありますが、いつでも聴けるような普遍的魅力があるのは、そんな伝統的側面もあったからなのかも知れません。




 それにしても、「生きて行けば行くほどもっと人を愛せるようになる」(個人的意訳)なんて、ニクいこと言いますわ。




 こちらはアメリカで成功した1stアルバムから。トップ10入り(全米9位)を果たし、一躍第二次ブリティッシュ・インヴェイジョンのホット・アクトのひとつとなった頃の曲ですね。


■"I Ran"
from the album "A Flock Of Seagulls" (1982)




■"Space Age Love Song"
from the album "A Flock Of Seagulls" (1982)




こちらは2ndアルバムからのシングル。

■Wishing (If I Had A Photograph Of You"
from the album "Listen" (1983)




 こうして見ると、楽曲自体はホントにクオリティーを落としてないのですが、最初の見た目先行が災いして、後々地味な評価になってしまった・・・そういう不幸な面はあったのかも知れません。

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 ※mixiでずっと連載しているこのpop picksシリーズ、こちらのPENELOGでも、加筆編集し連載中。楽しんで頂ければ幸いです。
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by penelox | 2009-04-15 22:52 | Pop Picks