"Nocturnal Me" - Echo & The Bunnymen
from the album "Ocean Rain" (1984) こちらはライブバージョン。 実は先日MySpaceでTrash Can Sinatrasにフレンドリクエストを出したところ、John氏から承認とともに「It's Immaterialのファンに出会えて嬉しいよ」というメッセージをいただいた。The PenelopesのFave Artistsの欄に書いていたからだけれど、う~ん、さすがわかってらっしゃる・・・と、嬉しくなってしまうとともに、改めて80年代リヴァプール派の存在の大きさを感じたのでした。TCSのような、まず楽曲ありきなアーティストにとって、思春期(あるいは音楽をはじめるきっかけ)にああいう良心的なポップミュージックが周りにあったというのは、とても重要なことだったと思う。 そういう音楽が、たとえ90年代の音楽シーンの真ん中に出て来なかったとしても、途切れる事なくあり続けたのもまた事実であり、とても重要なこと。ひとつの国の音楽なり、芸術なり、文化なりがあるレベルを保つというのは、ひと一人一人、バンドひとつひとつが、こういう良心的な作品に触れ、感銘/影響を受け、そしてそんな音楽を作ろうと活動を続けて行く・・・こんなプロセスがとても重要なのだ。目立たなくても、そんな良心的な音楽作りが地道に繰り返されることで層を厚くし、一定の質に繋がって行くのだということを忘れたくない今日この頃。 80'sリヴァプールと言って、このエコー・アンド・ザ・パニーメン(略称:エコバニまたはバニーズ)を紹介しないで何とする・・・それぐらい、当時日本での人気というとリヴァプール勢の中ではダントツでしたし、彼らのカリスマ性(アイドル性も)、音楽性含めた支持が、かの地をNew Waveシーンのなかでも特別な聖地にしていた気がします。のちのち私自身は、強力なシンガーソングライターのいるバンド(作詞作曲をひとりでやって歌うところまでやる人を中心とするバンド-XTC、エルヴィス・コステロ&ジ・アトラクションズ、ジャム、アイシクル・ワークス、ペイル・ファウンテンズ、プリファブ・スプラウトなど・・・もっと遡ればビートルズやキンクス)の方が、分業制を取っているバンド(ソングライティングをひとりでやらないバンド)よりも思い入れが強くなって行ったので、そういう意味では後者の系統にあたるバンド(スクイーズ、スミス、REM、スキッズ、アンダートーンズ、フィクス、マイクロディズニーなど・・・遡ればストーンズやドアーズ)であるエコバニは、現在の思い入れという意味ではほんの少し遠い印象ではあるのですが、同室にいたふたつ違いの弟がとても好きだったこともあって、当時はかなり聴いてましたね。 今もイアン・マッカロクとウィル・サージェントのふたりを中心に再結成し活動を続けている彼らですが、個人的に思い入れが一番強い作品となると、この4thアルバム"Ocean Rain"の頃ということになります。1stから3rdまでがネオサイケデリックと称された、何処までも蒼いギターサウンドで前へ前へと突き進んだ時代だとすると、ここでは少しスピードを落として、じっくりとマックの歌を聴かせる、いわば歌ものとしての変貌を遂げ始めた作品じゃないでしょうか。それていてその歌には、トップバンドとしての余裕もあってか、あるいは新しい方向へのフレッシュなチャレンジ精神のなせる技か、変な邪心や計算もなく、無意識に彼らの本質的な歌心や人間味ある温もり(温もりといっても、そこは彼らしいひんやり感もありますが)が感じられる。そんな、素朴なロマンチシズムに彩られた作品という気がするんです。 それ以降の作品(ベストでの"Dancing Horses"や87年のアルバム"Echo & The Bunnymen")の方がもちろんより完成度が高い、よく出来たポップロックで、いわば90年代以降の英国北部的なニュアンスのポップロックのよき雛形として普通に評価するのですが、ヒネクレ者の私としてはそのよく出来た感が少し邪魔に感じられる時があって、彼らに関しては未完成な頃の方が却って好みだったりするのです。簡素な演奏のなかでむき出しになった彼らの、雑念のない素朴な歌心に胸を打たれた思い入れで、やはり"Ocean Rain"。私にとっては今でもこの作品が特別です。 このアルバムのドラムやギターサウンドの簡素で素朴な味わいはなかなか良いと、最近改めてよく思うんですよ。ギターバンドとして見ると前作"Porcupine"のエネルギーはないのですが、それは年相応の変化であって、とっても自然に思えます。 "Silver" それに、曲に柔らかい表情が出て来ていた事もあとあととても好感が持てました。人間生きていれば、永遠に思春期の青い感傷にとどまっていることなど出来ない訳で、ロックミュージックのある部分がかなりの割合でその年代の心象風景に依存していることも理解しつつも、私がより惹かれる音楽は、その後成長し、それなりに苦しむなかで出て来る柔らかい表情だったりします。この時期の彼らの楽曲に、そのけだるい、退廃的なムードのなかにも成長してそういった柔らかな表情、おだやかな光が入り込みはじめていた・・・それを見つけられるのが好きなんですよね。 "The Killing Moon" "Seven Seas" ※mixiでずっと連載しているこのpop picksシリーズ、こちらのPENELOGでも、文章も多少変えて連載中。楽しんで頂ければ幸いです。
by penelox
| 2009-04-02 21:55
| Pop Picks
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