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生きて行けば行くほど

Watanabe's Pop Picks 096
"The More You Live, The More You Love" - A Flock Of Seagulls
from the album "The Story Of A Young Heart"" (1984)



 リヴァプールは良質のポップミュージックの宝庫・・・色々紹介して来て、私のそういう表現にどれほど説得力が増したか、正直なところわかりません。

 私が考えるのみならず、普通良質のポップミュージックとは何かとなれば、それはきっとスタイル的なものではなくて、姿勢を問われるんだと思います。つまり、良心が込められた、心あるポップミュージックと言い換えても良いかも知れません。所謂「趣味が良い」「良く出来た」ポップミュージック、で終わるものと違うのは、そこに良心、それも単に子供が自然と持つ屈託のない良性というよりも、(個人もしくは共同体が)清濁併せ飲んだうえでなお持とうとする、普遍的に人間が持っているであろう善性への理解と期待 - つまりは人間存在への愛情。それを音楽に託そうとする、折れる事なく強靭で、気高い意志。私などはこれを魂(ソウル)と呼びたい訳ですが、要はそういう、しなやかな、ある意味大人の良心がこもっているかどうか・・・甚だ主観的、心情的ですが、私はそう考えてますね。そして、そういう意志のバトンが、心ある音楽を介して世代を超えて渡され、価値判断の基準として根付き、音楽創作の原動力の一角になるからこそ、その音楽は強度を増す。人間存在への愛情に裏打ちされた音楽だからこそ、どんなに遠回りしても、結局音のどこからかにじみ出て来て、人間が普遍的に持つ心の良性に訴えかける・・・こういった法則を意識的かあるいは無意識にか、リヴァプールの人達にはわかっている、もしくは忘れないでいられるようなコミュニティー(共同体)が残されている・・・そこに強さがあるのかなぁと、今のところ思うのはそんなところです。

生きて行けば行くほど_b0022069_22462480.jpg 80年代前半にアメリカを中心に成功を収めたこのフロック・オブ・シーガルズも実はリヴァプールのバンド。失礼ながらこのルックスからはなかなかイメージしにくいかも知れませんが、しかしこの誠実なポップミュージックは、やはり一回聴いて終わりではない深く聴かせるものがあるし、聴けば聴くほど、またこの冒頭での歌詞についてのインタビューを見れば見るほど、作り手として(試練を乗り越えて来た果てに残ったのであろう)誠実な願いのようなものが伝わって来て、いかにもリヴァプール産の良心的ポップミュージックと呼ぶに相応しいという印象が強くなります。


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 彼らの近未来風というかSF風の見た目から、シンセ色が強いイメージがありましたが、いま聴くと実はかなり伝統的なギターバンドでもあることを確認。私にとっては彼らもまた、10代の終わりの、古き良き思い出ではありますが、いつでも聴けるような普遍的魅力があるのは、そんな伝統的側面もあったからなのかも知れません。




 それにしても、「生きて行けば行くほどもっと人を愛せるようになる」(個人的意訳)なんて、ニクいこと言いますわ。




 こちらはアメリカで成功した1stアルバムから。トップ10入り(全米9位)を果たし、一躍第二次ブリティッシュ・インヴェイジョンのホット・アクトのひとつとなった頃の曲ですね。


■"I Ran"
from the album "A Flock Of Seagulls" (1982)




■"Space Age Love Song"
from the album "A Flock Of Seagulls" (1982)




こちらは2ndアルバムからのシングル。

■Wishing (If I Had A Photograph Of You"
from the album "Listen" (1983)




 こうして見ると、楽曲自体はホントにクオリティーを落としてないのですが、最初の見た目先行が災いして、後々地味な評価になってしまった・・・そういう不幸な面はあったのかも知れません。

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 ※mixiでずっと連載しているこのpop picksシリーズ、こちらのPENELOGでも、加筆編集し連載中。楽しんで頂ければ幸いです。
by penelox | 2009-04-15 22:52 | Pop Picks


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