ネオサイケ後期はカレッジ系ギターバンドの原型・・・かな

Watanabe's Pop Picks 129
"A Million Things" - The Lucy Show
from the album "Mania"(1987)




 80年代の個人的未踏の地への探訪、引き続き。
 おそらく60年代のアメリカのコメディー番組からその名を取ったのであろうこのザ・ルーシー・ショーも、名前自体は知っていて、輸入盤屋で何度か見かけたものの、結局当時は入手することなく終わった人達。私の当時のイメージは、と言うと、どこか遠いバンド・・・これが正直なところだったと思い出します。もちろん音は聴けなかった訳ですから、入れられているコーナーだけの判断でネオサイケなんだろうなとは思っていたのですが、その割には何かその系統の音とは少し違う雰囲気がジャケットにあったのもまた忘れられないんですね。具体的に言うと国籍不明な感じ。濃厚な英国の匂いが(当時としては)少ない。暗さがあまり強く感じられない。しかし耽美性が鮮烈、という訳でもない。かといって荒くれ風でもない。その辺りの微妙な空間に浮かんでいるのがネオサイケだとすると、彼らにはそこから少しずつ外れた雰囲気があり、それがちょっとした違和感に繋がっていました。それに加えて、日本盤が出ていなかったこと、中古盤の出回りの少なかったことや値段の高さもあって、きっと余計手に取るのに勇気を感じてたんでしょうね。で、この歳になって初めて聴いてみても、英国産のネオサイケと考えると何かが遠い。興味を持てない、という意味ではなくて、かの国のバンドとして聴くと、何かあの、特有のこじんまりしたもっちゃり感が感じられない。


 余談ですがネオサイケデリックというのは、80年代前半から半ばの英国地方都市の白人ロックのひとつのアイデンティティー表現 - つまり、当時どんどん浸透して来る黒人音楽/ダンスミュージックに対する対処の仕方として、黒人音楽を基本的に露骨に取り入れない、という態度を取ったタイプ - だったと思うのですが、87、8年ぐらいになると、さすがにその方法論も無理が生じて来る気がします。つまり、ハウスなどの機械的な細かいリズムの影響がもう抵抗しきれないぐらいにアンダーグラウンドな白人インディーロック/ポップにまで広がって来てしまうんですよね。これを全面的に取り入れてしまうとそれはもはやもともとあったネオサイケ的なものではなくなってしまうのですが、そういうリズム面を洗練させる方向に行かなかった多くのバンドは、おそらくアメリカンロック的なアレンジメントにアイデンティティーの活路のひとつを見いだして行ったんではないでしょうか。おおらかで単調なリズムが次第にグルーヴになって行くというのはアメリカンロックの専売特許な訳ですが、こうやってネオサイケ勢の多くは、たとえばREMにあったようなそれを取り入れて行くことで、たとえばマンチェ的な音を横目に見ながら、同時に英国産バンドなりのカレッジチャート的音、というのを80年代末から90年代初めにかけて築き上げて行ったと、そう思えるのです。まぁもちろん、第二次ブリティッシュ・インヴェイジョン以降の英国勢にとって、アメリカで受ける音というのは音楽的にも商業的にも大きなテーマだった訳ですが、ともかく、そういう意味でみると、彼らの音が遠く感じられるのは、私が英国産ネオサイケという色眼鏡で見るからで、視点を変えるとかなり他のバンドより早くすんなりカレッジギターバンド的な音に変身出来ているとも言えるのです。英国勢としてはすんなり過ぎるぐらい。まだ87年ですからね。これはどうしたことか。


 改めて驚くのは、先日MySpaceで彼ら(あるいはそのファンサイト)のフレンドになり、それで初めて彼らの音楽にしっかり向き合ってみて、また興味深い事実に出会ったから。彼ら実は、ロンドンに住む在英カナダ人を中心とするバンドだったのです。英国土着ではない感覚 - 地方都市に根を下ろした音楽かそうでないかは、たとえ暗い音でも、その底部に、大きなコミュニティーがあることから生じる内向きの心情がもたらす安心感、温かみのようなものが感じられるかどうかが大きいと思う。そこへ行くとロンドンは国際都市だから、一部の下町バンド以外、特に強い結束力を持たない移民となると、そういうものとは違う、根無し草的な孤独感と外向きの心情から来る緊張感のエッジが立って来るように思う・・・以上、私の勝手な推論ですが! - が、「ネオサイケ」と括られる他のアーティストとは違う匂いを発していた理由だったかと納得した次第。また、だからこそむしろアメリカやカナダのカレッジ系バンドのスタイルにすんなり移行出来たのだなと・・・そう感じていると、またわかりやすい情報が。実際彼らはREMとツアーしたりして、交流を深めていたようで、アメリカのカレッジチャートでも人気があったようなのです。それもあって、早い段階からアメリカに狙いを定め、英国産カレッジ系ギターバンド的スタイルを進めて行ったのでしょうけれど、レコード会社のサポート不足、財政面の弱さに振り回された挙げ句、結局2枚のアルバムで終わってしまった、ということのようなのです。


 上の楽曲はそのラストとなった2ndアルバム"Mania"からのものでしたが、こちらは1stアルバム"Undone"(1985)から。時代もあるのでしょうが、方向性としてこちらの方がよりネオサイケデリックな感覚が強い気がします。比較として相応しいのはThe SoundやComsat Angelsあたりでしょうか。

■Ephemeral (This Is Not Heaven)"



 要は、ネオサイケ後期のバンドがアメリカに打って出て今度はカレッジ系ギターバンドの原型を形成して行く・・・その好サンプルのような音がここにあるなと、感じ入った次第。



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アルバム"Mania" (1987) - これは見覚えがあります。









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アルバム "Mannia" - 2005年のリイシュー。こちらのデザインの方が現代ではわかりやすいかも知りませんね。










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by penelox | 2009-07-22 09:24 | Pop Picks


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