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リッケンバッカーで虚空に描いた水彩画・・・Razorcuts

Watanabe's Pop Picks 190
"Try" - Razorcuts
from the album "Storyteller" (1988)
and the compilation "R Is For... "(2002)

 ここ何回かずっと書いている80年代後半の英国音楽シーンの回想・・・懐かし過ぎてついついくどくなるのですが(苦笑)、懲りずにもう少し続けさせて下さいね。

 この時代というと、やっぱり私など今改めて聴いて思うのは、思春期の頃80年代前半の、ポストパンクなインディー音楽 - 特にそのなかでも所謂「ネオアコースティック」と日本で呼ばれたような、ポップで、60年代の影響の要素の強い人達 - に当時聴き手として触れて、アイデアをインスパイアされた人達が、今度は作り手になってドバッと出て来た時期でもあったんだなぁと。ですからやっている人達は世代的にもほぼ私と同じで、いわば同級生みたいな感覚なんです。

 それゆえ、あれこれと個人的思いを綴ってしまうのは、多くのバンドがそれゆえ音楽的なアイデアとしてよくわかるからなのももちろんなのですが、また同時に、ほとんどが結局長期的な活動が出来ず消えて行ったからでもあるんですね。甚だ勝手な思い入れですが、そういう人達に対しては他人事とは思えない無念さというか、哀悼したい思いがどこかに残ってるんだと思います。

 まぁ、今となっては当時のことはこんな風に割り切って振り返ることも出来るんですよ。すなわち、当時、バンドのみならず、野望を持ったインディーレーベルも沢山出て来た訳だけれど、結局まだ過渡期で、商業的にしっかり無駄なく売る(凄い言い方!)という意味では、メディア、レーベル、ディストリビューター・・・全体としての合意がないからバラバラで上手く行かなかった。それが、「マンチェスター」でひとつポイントを掴み、次にアメリカからの「グランジ」来襲という危機が迫るに及んで、国全体で「ブリットポップ」で纏まった・・・いやらしく響くかも知れませんけれど、業界側から見ればこういうことだったというのももうわかるんですよ。売りやすいひとつの大きなブランドを立ち上げた訳ですね。

 まぁでも、もちろんこれは業界側からみた論理であって、当時聴き手で、いま作り手の端くれを、徳俵一枚で残してるだけのような人間からすると、そんな業界側の論理を全面的に受け入れたくはないというのもずっとあるんです。レコードは商品ですが、音楽はそれ以上のものですからね。そのせいでその寸前まで咲いていた美しい野花達が無惨にも押し流されてしまった・・・そっちの方にやっぱり目が行くんです。それは、ただの商品に留まらない音楽を創るという行為の貴重さですね。臭い言い方ですが、生きていけば行くほど、続けて行けば行くほど、その音楽創作という人間の営為が輝きを増すことを知ったからというのもあります。若い頃はわかりませんでしたが、個人的な経験として、レーベルのリストラに次ぐリストラや、震災、それに普段の生活のなかで意欲が潰されそうになりつつも、何とか続ける中で掴んだ実感でした。音楽創作とは何と貴重な営みかと。だから、彼らがそこまで意識してやってたかは別としても、その営為の煌めき、キラキラと輝いていた音像に永遠があったことは忘れたくないと・・・そのことを私が生きている限りはお伝えし続けたいと・・・そういう気分にさせられる訳です。

 また長々と書き過ぎました。
 このレイザーカッツも、おそらくは80年代前半の音楽、オレンジ・ジュースやパステルズ、それに特にアメリカはLAのペイズリーアンダーグラウンドの影響があったんじゃないかと思っています。1984年の結成ですから、おそらくその動きに刺激され、そこから60年代の音楽へアクセスして行ったんじゃないかと・・・60年代のバーズや80年代のREM、ロングライダーズみたいなリッケンバッカー12弦ギターサウンドに乗って、少年のようなVoがフワフワと風に舞いながら歌い上げる。あまりに力が入ってない斬新な歌唱は、プライマルスクリームやストーンローゼズでのち大いに知られることとなりますが、当時はこの組み合わせの新鮮さにビックリしたものでした。当時京都に住んでいた弟がいつのまにやらこういう新しい音楽を一杯持っていて、たまに訪れては刺激を受けていた時代。彼らが12弦ギターで虚空に描いた水彩画は、21、2の私にとっては、いやに共感させるものでした。そんな彼らの1stアルバム"Storyteller"からの一曲。

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■Sorry to Embarrass You(1986)
こちらはそれ以前、確かSubway Organizationから出ていたシングル曲。



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■Brighter Now (1988)
再び1stアルバムに戻って。ラストを飾る名曲。




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by penelox | 2009-10-23 12:10 | Pop Picks


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