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絵本の日々から 01


「チムとゆうかんなせんちょうさん」("Little Tim and the Brave Sea Captain")
エドワード アーディゾーニ(Edward Ardizzone)・著 / せた ていじ・訳 / 福音館書店


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 クリスマスですね。
 クリスマスと言うと、正直言って大人の事情なんかよりも子供のことを考えたいと思うんです。子供が幸せな思い出を作ってくれたら良いなと。というのも、子供がケーキを食べたり、プレゼントを開けて楽しそうにしていること自体はやっぱり見てて良いなと思うからなんです。幸せそうで良いじゃないですか。私の家、育った時代のせいなのか、個人的には子供の頃クリスマスが特に楽しかったという経験はないんだけれど(なぜなら、毎日がクリスマスみたいなもので・・・ちょっと大袈裟ですがね!)、子供というのは大したもので、たとえば絵本なんかで疑似体験したことで、それなりに楽しい思いをしていたりするのです。

絵本による疑似体験。

 子供時代に絵本で想像力を広げて、行けない場所や世界に思いを馳せたりするのは悪くない・・・どころか、とっても良いことなんじゃないかと思います。私自身、この時期に思い出すカラフルな記憶は絵本の世界のなかにあったんだなぁと、そのことを実感する今日この頃なのです。


 子供の頃大好きだった「チムとゆうかんなせんちょうさん」。最近偶然みつけて思い出した名作のこの部分。今にも沈もうとする船の上で、船長がチムにこう話しかける。

「…なくんじゃない。いさましくしろよ。わしたちは うみの もくずと きえるんじゃ。なみだなんかは やくにたたんぞ」

 荒れ狂う海の上でチムは覚悟を決めて、船長と手を握る。ここで幼い心がグッと来たのを今でも覚えているんですよ。何度も何度も、絵を見て、その部分を読んでは生まれたてのある感情を反芻していたんですよね。英語のサイトを見ると、原文では船長はこう言っていた。

"Come, stop crying and be a brave boy. We are bound for Davy Jones's locker and tears won't help us now."

子供向けの絵本で、子供に対してこんな言い方をしてたんだなぁ・・・。子供に厳しく、大人になれと促す、いかにも英国らしい本だったんですねえ。わかる。また、瀬田貞二氏の翻訳も素晴らしかったんだなぁ。

 そして、最後に救助されたあと、チムが飲む熱いココア! これが本当に味わってみたかったことも思い出します。

 こういう疑似体験を子供にぜひして欲しいものです。そこでの感動はたぶん一生忘れないんじゃないかな。
by penelox | 2009-12-24 23:54 |


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