ソウル・ディーヴァあれこれ その6

Watanabe's Pop Picks 253
"Love Ain't Love" - Florence Ballard (1968)

 前回はシュープリームスのヒット曲の数々を映像、しかもTV出演を中心に挙げてみました。夢見るような映像が改めて眩しく、ソウル云々以前に、60年代音楽の素晴らしさを再確認した次第です。

 それにしても映像を見ていてつらつらと浮かんで来たのは、その眩しい光と同時に、後にモータウンを巡るもっとも大きなエピソードのひとつとしてよく取り上げられるようになった、ダイアナ・ロスと他のメンバーとの確執という影のコントラスト。彼女達のことを事細かに知っていた訳でもなかったので、ただ楽曲や歌唱のの好みから、最後の"Reflections"以降の楽曲は、この曲は別としても個人的には何かそれまでとは違う印象ゆえに敢えて挙げなかったのですが、それは、無意識ながら、このあたり以降の曲は他のメンバーとの力関係が変わったなぁと、つまりは露骨に「ダイアナとその他ふたり」という匂いが強く感じられて、何かひとつの時代が終わった感というか、ちょっと魅力の物差しを変えざるを得ないな・・・というのがあったからなんですが。ほぼすべてのリードをダイアナが取っているのは以前と変わらないのですが、やはりそれまでの楽曲での歌唱には、他の二人のサイドボーカルとの有機的な結びつきによるSomethingがあったんじゃないのかなぁと。で、今また調べてから聴いてみますと興味深い符合に気づかされます。

 あぁそうだったのかと、妙に納得したのは、"Reflections"で実はメンバーがひとり交代していて、グループ名も"Diana Ross & The Supremes"に変わっていたということ。その経緯は - 66年頃から露骨になって行ったという、「ダイアナとその他ふたり」、という会社(ベリー・ゴーディー・Jr社長の)の扱いに不満を持ったメアリー・ウィルソンとフローレンス・"フロー"・バラード。特にフローは、その事で何度も社長と話し合ったが、解決しないとなると、露骨に会社の方針から外れた言動を示し始め、同時に鬱病とアルコール依存に苦しむようになる。で、やがて公の場や録音にさえ現れなくなり、とうとう67年の夏には解雇されてしまう。結局、彼女の代わりにシンディー・バードソングが加入し、上記グループ名でシングル"Reflections"をリリース・・・そういうことらしいのですが、当時音楽紙でどれだけ大きくその解雇劇が報じられていたのかはわかりませんが、当時の家庭用ビデオも普及してない時代ですから、流れて行く"Reflections"の映像をサッと観ただけだと、メンバーが変わっていることなど気づかない人も多かったかも知れません。しかし今、大方のことがわかっていて、舞台裏の事情を知れば知るほど、私のいつもの野次馬根性が頭をもたげて来まして(笑)、その眩しさの微妙なところをより一層賞味するという意味で、ふいにその反対方向の影の部分 - 表舞台から消えて行ったひとりの歌手の方もその足取りを辿ってみたくなりました。

 という訳で、長々と書きましたが(苦笑)、今回はその、もうひとりのシュープリーム、フローレンス・バラードの歌をいくつか。

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 3人のなかで一番背が高くスラッとしていて、メンバーのなかでは見た目としてはおそらく一番華やかなタイプに思える彼女、ABCに移籍して68年に出したソロシングル2枚を挙げてみます。

 まずは2枚目のシングルから。



 決して新しいタイプではないけれど、濃厚過ぎないオーソドックスな歌唱力を持っていますね。シュープリームスのサイドシンガーがこれぐらい歌えたというのは、もちろん当然としても、これでサイドに甘んじたというのはもったいないですね。モータウンのポップソウル路線よりも、もっと本格的なソウル/R&Bをたくさん聴きたかったと思わせます。

次にB面です。

■"Forever Faithful"



 バックの演奏と歌がもっと掛け合い的になっていればさらに良かったとは思いますが、元シュープリームスという有名さゆえにそのあたりで冒険しにくかったのかも。このシングルの売上げ、反響の少なさから、アルバムがオクラ入りになってしまった・・・そういうことでしょうか。しかし確かに難しい時代であったのは事実でしょうね。ブラック・ミュージックも新たな曲がり角を迎えていたこの時期、彼女のようにスターダムの名声はついて来るものの、リードシンガーとしては事実上殆ど何のキャリアも積んでいなかった人ならなおのこと。

 こちらは1stシングル。キャンディーソウル的というか(そんな言い方があるかわかりませんが)、シュープリームスの路線を踏襲させられたのかはわかりませんが、まだハラに力を入れて歌ってない感じ。可愛らしいです。

■"It Doesn't Matter How I Say It (It's What I Say That Matters)"



 続いてそのB面。有名な曲ですね。The Zombiesのバージョンが好きでした。

■"Goin' Out Of My Head"



 声の感じからすると、もっとアーシーなソウル/R&Bの方が合ってたようにも思えます。それだけにアレンジがいかにも甘口なのが惜しい気も。しかし映像を作った方、大変なファンなのでしょう、労作です。

 以下の曲の歌い方を聴くと、やはりこういう思いが強まります。つまり、都会的なポップソウルよりも、ブルージーさもたっぷり滲ませたサザンソウル的なアレンジの方が向いてたんじゃないかと。

■"Ain't That Good News" - The Supremes(1965)
 65年のアルバム"We Remember Sam Cooke"に収録された彼女がリードVo曲。実に良いです。



■"The Impossible Dream" - Florence Ballard (1968)
 オクラ入りになっていた68年の彼女のソロアルバムの曲。このアルバムは上のシングルやここに挙げた曲とともに2002年に編集盤"The Supreme Florence "Flo" Ballard"(上の画像)としてリリースされた模様です。明るく元気な歌声だけに、活動もままならないまま、76年に失意のまま亡くなったというのは残念な話。



■"Heavenly Father" - The Supremes (1962)
 これは62年のアルバム"Meet the Supremes"のセッションで録音されたものの収録されなかった彼女のリードVoの曲とのこと。彼女が歌うと全く違うグループのように聴こえます。こういう路線もあり得たんですね。当時としては新しくはないけれど、良い音楽。




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by penelox | 2010-02-11 09:00 | Pop Picks


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