天才シンガーソングライター/マルチプレイヤーのストレンジ・ポップ・マジック (2)

Watanabe's Pop Picks 263
"You and I (We Can Conquer the World)" - Stevie Wonder
from the album "Talking Book" (1972)

 彼の存在を知ったのは、いつぐらいだったか・・・中学生ぐらいの時でしょうか、TDKのカセットのCMに彼が登場したんですね。これです。



 調べてみると80年ですから、私中三です。しかしこうやって観ますと、ここの主旨とは関係ないですが、当時は日本のCMも元気でしたねぇ。素晴らしかったとは思わないけれど、金がかかってます。30年経って、こういう時代から、この国は実に遠いところに来てしまったなぁという感慨があります。

 そうそう、そして同じ頃に、東京音楽祭への彼のゲスト出演をTVで観たんだと思います。調べてみると1981年3月29日の第10回大会で特別ゲストとしてライヴをやってます。ちょうど高校入学を間近に控え、混乱と緊張と期待に胸をふくらませていた時期(そしてそれはものの数週間後に消滅するのですが・・・/笑)・・・これだ!



 当時はこと音楽に関しては兄貴にくっついて行くだけだった私、洋楽一辺倒になっていた彼の影響で、当然情報はバンバン入って来ていたのですが、この映像を全部ちゃんと観てたかというと心許ない。それに何より、ワンダー氏の音楽の素晴らしさを十分味わうところまで、耳が進んでなかったようにと思います。中三の段階では洋楽と言うとただひたすら観ては、へえ~、凄いなぁ・・・ひたすらそれだけでしたからね(笑)。

 前回書いた"Music Of My Mind"と同じ1972年に、スティーヴィー・ワンダーはもう一枚アルバム"Talking Book"をリリースしています。このアルバムが全米3位、2枚のシングル"You Are the Sunshine Of My Life"と"Superstition"(邦題「迷信」)がともに全米1位を獲得し、世間で言うところの黄金時代が始まった訳です。ちなみに、前作からの5枚が彼の"Classic Period"5部作であり、これがその2作目、とも呼ばれますが、これは何なのでしょう、本人がそう呼んでるのでしょうか?

 ともあれ、前作より格段にわかりやすくなった作品です。特に上に挙げたヒットシングル2曲が実に明快で、前者は完成された華麗なるスティーヴィー節のポップであり、後者も実に完成度が高く、ファンクさとポップさのバランスが絶妙。80年代のスティーヴィーというと既に完成された音楽を奏でるきらびやかなポピュラーミュージック界の人、という感じでしたから、70年代初めのこの作品で前作の項で書いた様なポピュラリティーを得て行く彼の基本線が完成されたというのがよくわかります。

 だけれども。だけれどもですよ、一際強調しときたいのは、やはり前項で書いたように全体としては相変わらずポップでいて摩訶不思議だということ。それはやっばり、私が個人的に好きな三つ目の線 - つまり美しいバラードにおける、あまり思いつかないような展開を見せるメロディーが、あれっ、ちょっと流れがおかしくなりそうだなと感じさせるその瞬間、スッと解決させて心地良くしまう彼特有のストレンジ・ポップ・マジック。これがやはりあるからだと思うんですよね。技術的にはもちろん、コードそのものの複雑さ、テンションコードの多用とか、また進行そのものの複雑さ(ポール・マッカートニーを比較に出しましたが、そういう意味では同時代のスティーリー・ダンと比較した方が良いような気もして来ました)などと言えてしまいますが、大事なのはおそらくはそれがわざわざ難しくしようと意図したものではなくて、心のなかで聞こえる音世界を頼りに自然と生まれて行ったものに聞こえるということ。たとえ技術的には真似出来たとしても、誰もここまでの歌心に到達出来ない訳で、そこがまぁ、この方のワン・アンド・オンリーたるゆえんなのでしょう。

 と、言う訳で、これぞワンダー氏のストレンジ・ポップ・マジック! ってのを選んでみました。まずはこの、美しいバラード。




 部分部分でポールもしくはウィングス、あるいはELOに通ずるとかよく思うんですが、比較として不適当でしょうか? でも、同時代でこれほど売れた作品ですから、彼らに影響を与えたのかも知れませんよね。それにしても、3:50あたりからの声の尋常でない伸びで展開して行く世界はもう、この方しか行けない場所。宇宙と交信してるかような、別世界の崇高さが漂って来ます。

 アルバム"Talking Book" (1972)からの楽曲をもう少しいくつか、好みのストレンジ・ポップ的な視点から。敢えてヒット曲は外してみましたが、他の曲も常習性(?)を持っていて素晴らしいです。

■"Tuesday Heartbreak"
 彼らしい不思議な、一筋縄で行かない曲。この手のタイプだとジャミロクワイなんかだいぶ影響受けたんじゃないかと思うんですが。




■"Blame It On the Sun"

並の歌い手が気持ちよく聴かせるには実はかなり難しい歌だと思うのですよ。




 ちなみに、この曲を共作したのは彼の元妻である故Syreeta Wright。こちらは1980年の彼女のバージョン。やっぱり難しい歌ですね。



■"Lookin' for Another Pure Love"
 これも日だまり感が美しいんですが、やっぱりちょっと変わった展開ですよね。気持ち良さへ落とすプロセスが上手い訳ですが、彼の場合技術的にやってるというより、どこか神々しいまでの柔らかさ、自然さがあるんですよね。ギターはジェフ・ベックだそうで。




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by penelox | 2010-03-04 23:53 | Pop Picks


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