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Watanabe's Pop Picks 268

"This Is Zero" - TV21 (1981)
from the compilation "Snakes And Ladders - Almost Complete: 1980-82" (2010)

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 実はこのTV21については、mixiで以前取り上げていました。その際にはこの曲を演奏した当時の音楽番組"Old Grey Whistle Test"での映像を紹介したのですが、その後どなたかが正式音源のオーディオファイルをYouTubeに挙げてらしたり、かつ待望のベスト盤"Snakes And Ladders"が遂にリリースされたということもありましたので、それを元にまた書いてみます。
 まずはその前回も紹介しました"This Is Zero"のスタジオバージョンから。




 ベスト盤にある細かい記述を元に彼らの事を書いておきますと、1979年にスコットランドのプレストウィックの学校で友人であったノーマン・ロジャー(Vo/G)とアリー・パーマー(G)を中心に、いくつかのバンド活動を経てエジンバラで結成。自ら立ち上げたPowbeatからトロイ・テイト(レジロス、当時はシェイクのメンバーで、のちティアドロップ・エクスプローズにも在籍)制作によるシングル"Playing With Fire"を80年にリリース。その後Demonからシングル、そしてDeramと契約し1stアルバム"A Thin Red Line"をイアン・ブロウディーの制作により81年にリリース。残念ながらこのアルバム一枚と数枚のシングルを残して82年には方向性の違いにより解散しています。このコンピレーションはアルバムまるまる一枚と、そのシングルからの楽曲のいくつかを収録。


■"Ideal Way Of Life"




 このコンピを聴いて全体的な音楽性を捉えてみれば、やはりパワーポップ、ネオサイケデリックと称されるようなジャンルの両方にまたがる要素を有しているということが浮かび上がって来ます。バンド名から窺える60年代英国文化への愛情、社会にコミットした歌詞を親しみやすいメロディーに乗せて歌う部分はある意味当時のパワーポップ的(コステロ、スクイーズ、ジャム、XTC、ブームタウンラッツ、アンダートーンズといった人達。当時ジャムのポール・ウェラーが高く評価していたというのも頷ける話)で、管楽器や鋭角的なギターサウンドで緊張感ある音像を作り上げる部分はティアドロップ・エクスプローズのようなリヴァプール・ネオサイケを連想させる・・・という訳です。もちろん情熱的なボーカル、楽曲の歌心はスコティッシュならではという印象。細かく見れば、初期のシングルではギターサウンドやダブ的な処理にXTCにも通ずるポストパンク・ギターバンド的ニュアンスが感じられる(アルバム収録バージョンと相当違う"Ticking Away"や"This Is Zero")のが、次第にパーカッションが複雑に変化(ファンカラティーナの時代の空気もあるでしょう)し、ラストシングル"All Join Hands"ではエレクトロ/アンビエントに到達。当時としては決して不自然な変化ではないのですが、今となっては実に挑戦的に思えます。

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■"Ticking Away"




 要はこのベスト盤、たった2,3年というわずかな期間での彼らの急速な変化/進化を一枚で見せてくれる、とても興味深い作品になっているのです。また、ブックレットも読めば、意外な繋がり(実は意外ではないのですが、日本にいるとこういう情報は殆ど入って来ませんでしたから)、たとえばアンダートーンズからの影響、アナザー・プリティー・フェイス(ウォーターボーイズのマイク・スコットがスコットランドにいた頃やっていたバンド)やスキッズとの交流が見えて来て、ポスト・パンク期におけるスコットランド音楽シーンの豊かさの一端を垣間みることが出来ます。


 ひとつだけ残念なのは、 プラケース並びにデータべースでの曲表記の順番が間違っていること(ですからiTunesでも間違った曲順が出ます。amazonでも間違えたまま試聴されています。下手したらダウンロード販売も間違えたままかも知れません)。実はブックレットの裏表紙は正しいので、ここにも書いておきますと、8曲目に"Snakes And Ladders"とありますが、これは実は13曲目。9-13曲目までが実は8-12と前にずれこみます。また、14曲目の"What's Going On?と15曲目の"Something's Wrong"が逆になっています。こうなった理由を考えてみますと、そもそもは1-7曲目にレアなシングルが並び、8から18がアルバム全曲をLP時代同様に入れて19でラストシングルと、そういう時代順の構成なのですが、13がシングルにもなったので、もしかしたら当初はシングルを並べるつもりで13や19も前に置こうという計画があったんじゃないでしょうか。しかしながら、実は13はアルバムバージョンと変わりないので、それならばアルバムの構成は崩さない方がいいという結論になって元の13曲目に位置に戻したのだが、プラケースのデザインの段階で上手く伝わらずミスをしたのではないかと。14と15があべこべになっているのは単なる校正ミスかなと(苦笑)。まぁ、これらはすべて私の憶測ですが、そう思えるのです。自分でもCDを作って来ましたから、デザイン制作時のあれこれから想像出来るとは言え、こういうのは聴き手にとっても、アーティストにとっても残念なことです。アーティストがきっちり関わってたのかどうかわからないので何とも言えませんが、これだけがマイナス点。しかし総合的には、大変喜ばしい初CD化であるのは間違いない作品。

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by penelox | 2010-05-10 22:39 | Pop Picks


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