人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Umbrella Day / The Penelopes

from album "Kiss of Life" (1997)


昨日の続き、さらなる考察(The Sound Barrier "The Suburbia Suite"を聴きながら)。

昨日書いたサバービア("Suburbia")という言葉、辞書で調べると、特にロンドン郊外を指す、しかも軽蔑を込めて、とある。

アメリカでの「サバービア」の定着もおそらくその20世紀初頭、日本同様、イギリスからの流れで来たのではないだろうか。Umbrella Day / The Penelopes_b0022069_2382162.gif日本の場合、戦前はアメリカの影響は戦後ほどではない。で、戦後の高度経済成長下ではひたすらアメリカに憧れ、追いつけ追い越せだったから、戦後の都市開発というのは、当時のアメリカ式住環境を模倣した訳で...それがイメージとして定着したのだな。

しかし、そもそも「古くからの住宅街」と呼ばれるところは、コンセプト的に昨日書いた英国的田園都市としてのサバービアがまず根っこにあると思う。日本の場合、そこに戦後、アメリカ的な大量消費文化が加わったと。で、宝塚の場合は、バブル、震災を経て、現在は南欧風に変貌中という訳だ(^^;)...これは考えてみれば、ある部分ではポスト消費文化として、英国的/欧州的価値観の見直しが起こっている、のかも知れない。揺り戻し現象というか。最近多いですよね、英国風庭園とか、オープンカフェとか。名前からして当然だが、古き良きアメリカへの思いからではないだろう。むしろ英国/欧州的な、落ち着きや安らぎ、さらには物質文化だけに寄り掛かるのではないある種の精神文化...そういうのに移行しつつあるのだと思う。あまり一般的には意識的ではないし、大衆化するためにまた違う方向にズレて行く可能性は十分あるが。

最初の話に戻ると、何故サバービアがロンドン郊外、しかも軽蔑を込めてなのかは、同じく書いたE.ハワードの書"Garden Cities Of Tomorrow"をもとに、1902年に実際にレッチワースという街がロンドン郊外で開発されていったから、そしてそれが必ずしも成功とは言い難い結果-つまり必ずしもより高い文化的生活が送れるようにはならなかった-であったからだと思う。たとえば、スキッズに"Sweet Suburbia"という曲があるけれど、これはたぶん理想的な郊外生活というものの薄っぺらさを皮肉ったものなのではないのか(...ないのか、というのは、これ、CDでは聴き取り不能と書いてあるのだ! スコットランド訛りがキツいからだと思うが)。スコットランドの郊外 -つまり、グラスゴーやエジンバラの周辺の住宅都市も、確かにイングランドと大差なく、美しいのだが、あまり個性的とは言えなかった。たぶん非人間的、無機的に捉えられていたのだろう。だから、パブ(=パブリックハウス)で楽器演奏することで人の交流がかろうじて保たれた、ということなのだろう(となると、パブリックハウスのない日本の非人間的さというのは相当なもんではないか。そして、たとえば昨今の犯罪にはその非人間的要素が色濃い。おそらく我々は新たな田園都市文化の創造へ向かわなければならないのだろうなあ..)。

まぁ話がそれたが。しかし、思い出してみれば、イギリスじゅうを旅行した時、次第にどこもかしこも似たような街だなぁということが印象に残るようになった。最初は美しさや古さに目が行くが、確かに都市計画的には、どこもかしこもほとんど一緒と言えば一緒-公園や緑の多さは当時実に羨ましかったし、今でもそうだが、ある意味ワンパターンとも言えた。そして、驚くことに宝塚とレディングは実に似ているところが多かった。これはやはり、郊外の住宅都市というのが、どこも20世紀初めの英国サバービア的な田園都市像を元に作られたからなのだろう。阪神間、阪急沿線が英国的な要素を持つのは、当然と言えば当然だった。もちろん、日本独特の部分もあるし、戦争や高度経済成長、震災などで、この100年、かなり変化もして来た訳だが。

私にも、皮肉や軽蔑を込めて(と言うより、その末に)、田園的に、阪神間での暮らしを匂わせて歌った曲がいくつかある。"Kiss Of Life"という3枚目のアルバムに収録した、"Umbrella Day"というのがそのひとつ。

特別阪神間を匂わすものはここでは出て来ない。
ただ、子供の当時(60's -70')、Umbrella(傘)というのは、核の傘(Nuclear Umbrella-つまり日米安保!)というのも連想させるものであったと思う、日本人自体は意識していなかったが。Umbrella Day / The Penelopes_b0022069_2384069.gifアメリカに守られている、そのかさの下で楽しい子供時代を送らせてもらった...そんな、少し苦味があるノスタルジーを、3拍子のワルツで描いてみたかったのだ。




話が前後しまくるが、スキッズの"Sweet Suburbia"の歌詞、彼等のHPにありました。

http://www.geocities.com/intothevalley/l-std.html#ss

やっぱりかなり強烈に揶揄してますね(^^;)。

思うに、田園都市のコンセプトは20世紀初め、世界的な流行となったのだろうな。しかし、器をどれだけ綺麗にしても、中身を洗練させられるかは人間次第である。消費文化で骨抜きにされ、受動的人間に仕立てあげられりゃあ、そりゃつまらないものになるのは当然である。世界じゅうどこへ行ってもそれは同じなのだろう。

クレイジーな叫びを孕んだ都市型ロック...個人的には、そういうのはもう十分ではないか、という気がしている。都市が病んでいるのはもう十分わかっているのだから。それよりも、豊かな郊外型ポップをやりたい...成熟したポスト工業化社会へと日本が進んだとするのなら、今はそちらの方に力点を置くことの方がより重要に思える。

それが色んな街を見て来て、いま自分が改めて思うこと。

http://www.jttk.zaq.ne.jp/penelopes/
by penelox | 2005-04-07 23:11 | The Penelopes関連


<< Victim / Mood Six Mornington Cres... >>