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東京アウトサイダーズ(ロバート・ホワイティング・著、松井みどり・訳/角川文庫)

4/10

「東京アウトサイダーズ」読了。なんとも強烈な本でした。

「菊とバット」「和をもっと日本となす」などの名著で知られる、日本在住のアメリカ人ノンフィクション作家の、これは「東京アンダーワールド」に続く作品。一部ではかなり話題になったと思うのだが、意外と知られて無い気がするのは何故なのだろう...やはり内容が過激すぎるからか?

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戦後混乱期から現代に至る日本の闇社会(ヤクザ)とアメリカ、自民党政権の深いつながりを、主に六本木周辺の外国人たちの姿を通してこれでもかというぐらい冷静に(冷酷に?)浮かび上がらせる作品。人間のあるリアリティー - 欲望、いじきたなさ、低俗さというものを嫌というほど味わえる。

実際読んでいると空しくなること請け合いなのだが、まあ、こういうもんなんだろうな、と想像出来てしまうのも事実。そのあたりの人間臭さが、何ひとつ明るい気持ちにならない話の数々なのに、面白く読ませてしまうのだ。
つまり、この人間存在をまるごと抱きしめろと、そういうことなのだろうか?
インチキ臭い、いかがわしい匂いを全部受け止めろと?


著者のはじめに書いている言葉がそのまま答になると思う。

『われわれは人間だ。だれだって欠点はある。深くたどれば、だれもが傷ついた不完全な存在なのだ。純粋なふりをすることはできる。ほかの人間より純粋だと気取ることはできる。しかし、真に純粋な人間などいるわけがない。いくら正直者でも、どこかが腐っている。どんなに偉大な人物でも、ひどく低俗なことをしでかす可能性がある。人間は誰しも善と悪の混合体だという現実を受け入れれば、人はきっと前進する。自分は隣人より優れている-そんな発言や発想は、不寛容や差別の第一歩であり、行き着く先は、万人の知るところだ。身に覚えのある不快な話に、耳を傾けようではないか。人間はそうやっておのれを知るのだから。』

巷のニュース番組や雑誌、教科書では決して知る事の出来ない、清濁あわせ飲んだ戦後日本の裏面史。これと水木しげる氏の「のんのんばあとオレ」を併読していたので、(登場人物の置かれている環境、生きざまはあまりに違うけれど、それゆえにかえって)ある部分かぶる同時代の日本の姿を知る上で、さらに興味深く読むことが出来た。
by penelox | 2006-04-10 23:59 |


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