from album "Lovely"(1988)
3/27 (3/26のmixi日記より) C88? (part 1) もちろんそんな言葉、ないんですけれどね。 C86、つまりNMEが作った"Class 86"(86年組)という括りが80年代半ばから後半当時の英国インディーポップを区切る代表的キーワードだった訳です。大雑把に言えば、New Wave後半の動き、「ネオアコースティック」的音楽に限ればその後の「ギターポップ」を総称した言い方、と言えるでしょうか。 でも、今振り返ると、C88、っていう区切りも出来た気がするんですよ、インディーに限らず、この年前後から一気に出て来た、女性をフロントに立てたバンドの動きをあえて括れば。 今でこそこういうバンドは特別珍しくはないのですが、この時期にいきなり増えたんですよ。その事を今さらながら思い出してみました。 01: "Crash" The Primitives(1988)(左) オーストラリア出身のトレイシー・トレイシー嬢をフロントに立てた、究極にスタイリッシュなギターポップ。 ガールズギターポップ制共和国の規範的な音楽。 02: "Burst" The Darling Buds(1988)(真ん中) 人工甘味料多め、作り込み風のプリミティヴズと並べると、メインキャラのアンドレア嬢の素朴さがよくわかる、ウェールズ出身、ドライヴィン・ギターポップ。 こちらで彼等の音、ご確認下さい("Burst"はないみたいですが)。 03: "Birthday" The Sugarcubes(1988) 全くもって個性的な味わい。もちろんあのビョークがいたバンドです。アイスランドと都はるみは相性が良いのか...とか思った22才の夏。 (続く) ========================================================== 思うに88,89年頃に沢山の才能ある女性Vo/アーティストが出て来たというのは、実は偶然ではない気がする。 70年代以降の女性アーティストの表現の多様化がベースにあるのはもちろんだけれど、自分とだいたい同世代にあたるこの人達、何より子供時代に幸せで豊かな音楽体験をしているのが大きいと思う。それは、お金があった、ということではなくて、子供時代に流れていたポップミュージックが本当に音楽的、芸術的にに豊かだったということ。ロックをたくさん聴いた、というよりも、クラシックや映画音楽、TVの音楽を含め、職人的技術がまだ大事にされていた頃の、しっかりした構成と豊かなアレンジの音楽を、デジタルの刺さるような音ではなく、アナログのまろやかな音でもって楽しむことが出来た時代に幼少期を送った...そのことが、自分の経験からもよくわかるからだ。80年代後半以降などとは、幼児の置かれている音楽環境はまるで違ったということである。 ロックとして一般的にイメージされる事をやっているくせに、とお叱りも受けるのも覚悟で書けば、うるさくて暴力的な音楽、というものから幼い耳は守られるべきだと思う。刺さるような音、心の混乱をそのまま映したかのようなギターノイズは、思春期の青少年が必要とするのは良いとしても、あまりに幼い頃だと恐らく耳を(もっと言うと脳を)破壊するように思えてならない。 優しく、温かい音楽。これがまず幼少時のベースにあるべきで、うるさい音楽、攻撃的な音楽は思春期にでもなって聴きたければ聴けば良いのだと思う。これは、近頃色んな子を見ていて確信になりつつある印象だ。 子供の頃は、まず人間どうしの信頼感や自然(周囲)との一体感、それがコミュニケーションの前提として、音でも絵でもその中に匂わせる方が良い。それが、無意識下に心の安定感、バランスのとれた情緒を形成するのだと思う。もちろんそれは、家族や、もっと言えば社会そのものが子供に対してそんな空気を形成してるのが重要なのだけれど。それにそもそも近頃では、大の大人の幼児化が著しいため、とてもそんな話にまで及ばないのだろうが。 このへんのアーティストは、色々な作風の違いはあっても、結局根源的なポップさ(=幸福感)が一貫してある。これは、真に無意識下に温かみのある音楽体験が蓄積されている結果じゃないだろうか。暴力的なギターやうるさいデジタルサウンドに子供時代を壊されていなかった、60年代末から70年代前半の幸福な音楽体験があればこそではないかと。それを思うだに、90年代に最初の音楽体験をした子供達の、何と不幸なことか。
by penelox
| 2006-03-27 23:59
| 80年代
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