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Black / Wonderful Life

(mixi日記7/17より)

 80年代リヴァプール・ポップも、漁り続けて87年ぐらいまで来ますと、色々見えて来るなぁと、改めて感じ入ってます。

 何と言っても、「80'sリヴァプール・サウンド」が大きく広がって来ていて、ひとつの音で括るのはほとんど不可能になって来ていますね。まぁ、もともとカラフルでしたが、さらに広がっている。

 いわゆる、ネオアコースティック/ギターポップ/ネオサイケデリックの音が完成されて行く一方で、エレクトロポップ系も王道的ポップヘと変化。さらに汎欧州的なAORサウンド、ソウル系も大きくクローズアップされて来ましたし。ここでは良く知られているので出してませんが、もともとはこのシーンを出自としながら、ZTTによる大きな仕掛けでポップシーンに切り込んだフランキー・ゴーズ・トゥー・ハリウッドのようなバンドや、デッド・オア・アライブのようなディスコ的方向性に音楽をシフトしていったバンドもいた訳で、実にカラフル。着実に音楽的深化/進化を遂げて行くアーティストの思惑とは別に、音楽業界からの、ある決まった音楽性にこだわらない、才能の大きな宝庫としての注目がどんどん高まって来ていたのが何となく感じられます。


 アーティストを細かく見ますと、最初の先発組が大きく変化して行く一方で、その下で育っていた人達、裏方に回った人達の中での動きも浮上して来てるんですね(これがたぶん80年代末のマンチェスター期にまた開花するのですが)。New Waveという括りが、だんだん拡散して行くのも、87年ぐらいから顕著になって来る訳で、リヴァプールの変化自体がそれを象徴してる気がします。

 エコバニは、一旦活動を休止した後5枚目となる"Echo & The Bunnymen"を発表。安定した好ギターポップ・アルバムでしたが、その完成度から次の一手に苦慮したのか、そこにこの直後のドラマーの脱退、事故死という不幸も影響したのか、結局このアルバムが第一期のラストアルバムとなってしまいました。

 ティアドロップ・イクスプローズは既に80年代初めに解散しており、リーダーのジュリアン・コープはソロアルバムを数枚リリース、特にこの頃には既に大ヒットアルバム"Saint Julian"によりスターの座を獲得、一番油が乗り切っていた時期でした。

 ワー!を率いたピート・ワイリーは84年にヒットを放った後は沈黙していたのですが、彼が契約していたマネージメント自体は活発だったようです。そのマネージャーがピート・フルウェル、前回紹介しましたクリスチャンズ、イッツ・イマテリアル、そして今回のブラックのマネージメントを手掛け、イネヴィタブル、イターナルといったレーベルを主宰していた人物。

 
 メジャー移籍以前の事はあまり知らないので、今回サイトで色々参照してみましたが、もともとはトリオとしてスタートしたバンドの名前であったBlack(ブラック)は、フルウェルのレーベルからリリースされる段階では、ほぼVoのコリン・ヴァーンコムのソロプロジェクトとして機能していた模様。その後、メジャーのWEAの関心を引くこととなり、フルウェルのイターナルを通じて数枚のシングルとコンピレーションをリリースするも全く不発、契約を解除されます(WEAとイターナルの間にあった問題は、ワー!にも波及していたようです)。

 その後2年を経て、シングル"Wonderful Life"を再びインディーのアグリーマンからリリース。これが今度はA&Mの興味を引くこととなり、メジャーレーベルから1stアルバム"Wonderful LIfe"をリリース、一転、ポップスターの仲間入りを果たす事になったのですね。

 このPVはその、A&Mからの再録音による"Wonderful Life"、全英トップ10入りしたヒット曲。

 時代に流されない欧州的美意識に彩られたヴァーンコムの味わい深いVo、歌世界を堪能する...それがこのブラックの聴き所だとは思うのですが、いかにも当時(80年代後半)のメジャーなアーティストの典型的なアレンジが、彼の目指す世界とピッタリ合っていたのかな...今となってはそう思ったりもします。

 もし時代が時代なら、もっと地に足のついたマイペースな活動が出来たのかも。そういう、彼が求めていたものと世間一般からの印象との乖離が、ちょっともったいない人。これも、リヴァプールがホットな場所になったがゆえに起こったことだったとも、言えるのでしょうけれど。

 彼のオフィシャルサイトはこちら
by penelox | 2006-07-17 23:59 | New Wave


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