■Waiting In Vain - Bob Marley & The Wailers(27)
"No Woman No Cry"(1975年9月22位)、"Exodus"(1977年6月14位)に続く、ボブ・マーリー3曲目のトップ40入り。81年に残念ながら病死するのですが、この後も特に80年代前半にかけて何度もチャートインし続け、揺るぎない人気を保ちます。72年に英国アイランド・レコーズと契約してからの10年足らず、この時からはわずか4年足らずで、36年という短い生涯を終えてしまうこのレゲエ界の巨人。彼がこの時代にいたというのも考えてみれば凄いことです。決してレゲエを熱心に聴く人間ではない私ですが、もしこの場にボブ・マーリーが居合わせていなかったら、Punk/New Waveもここまでの厚みと大きな広がりは見せなかったということはわかります。 とは言え、レゲエがPunk/New Waveにどれくらい影響を与えたのか、それをチャートだけで細かく説明するのは難しいでしょうね。むしろ、このレゲエ・ビートを取り入れたバンドが(流行りも含めて)この時期英国にたくさん出現した、というところから、本格的なホワイト・レゲエバンド、人種混成バンドの登場、79年以降特に目立ちはじめるインディーシーンでのダンスミュージックの興隆に至るまで、現象的には様々ですけれど、この音楽のスタイル、そしてそこに含まれていたヴァイヴレーシヨン/メッセージが、当時の英国の若いアーティストと鋭く共鳴し、影響を与え、何かを動かしたのは間違いないと思います。やっぱりそこがとても大事だったんじゃないかと。 ■Your Generation - Generation X(36) ビリー・アイドルを輩出した、ということでよく知られるバンドですが、むしろ今のパンクバンドと並べても殆ど遜色ないところに特徴がありますね。現代のメディアで言うところの"Punk"のある種のプロトタイプなのかも知れないバンド。私自身は影響は受けてませんね(笑)。 ■No More Heroes - The Stranglers(8) 翌月リリースされ全英2位まで上昇する2ndアルバム"No More Heroes"の先行シングル。これでストラングラーズは3曲連続でトップ10入り、「パンク」バンドとしては非常に安定した人気を保っている印象。Punk/New Waveのポピュラリティーという意味では、彼等のコンスタントな人気ぶりはやはり特筆すべきですね。 ・・・なぁんて客観的に書いてますが、やっぱり4thアルバム"The Raven"の衝撃が忘れられない人間なので、どこへ持って行っていいかわからないある種の衝動を、またこの曲で着火されそうで恐い。そういう、恐い曲のひとつなんですけども。 彼等がこれほどのポピュラリティーを得た理由を私なりに分析してみます。やっぱり、パンクバンドとしての危険な香りと、ポップバンドとしての安定感の絶妙なバランスでしょうかね。こういうと、何か彼等をちゃんと評価してないみたいにきこえますが、安定感というのは、知性と良質のポップミュージックへの愛情に裏付けさられた穏健性、保守性、大衆性、エンターテイメント性の表出と言い替えて良いかも知れません。思うに彼等って、二つのイメージがあって、ひとつは特に初期の過激な発言や歌詞、これも初期のギグで問題になった暴力沙汰などから出来上がった攻撃的なイメージ。それと、これは特に80年代以降顕著になる、非常に静的なイメージな訳です。時代を経て変化し、前者から後者へと落ち着いて行ったという見方がよくなされますが、音楽自体を聴いて行って私が思うのは、もともとはじめから両面があり、それは攻撃的な表層と穏健な内面の本質、という構造になっていて、それが次第に表出するようになっただけなんじゃないかということ。初期においても、静的な佇まいはニヒルの鎧の下に見えている気がするのです。 で、一見相反するその両要素が矛盾することなく両立しているところに彼等の懐の深さがあり、その両面を乖離することなくつなぎ止めているのが、パンクバンドとして括るにはいささか熟練した演奏力やしっかりしたソングライティングであり、歌詞に表出する知性なのかなと。初期の暴力性というものも、演技ではないとしても、知性によってコントロールされたもので、むしろある種の勇気を持って振り絞った意図的な暴力性である気がするんですね。それはPunk/New Waveという時代の風に後押しされた部分でもあったかと。逆に言えば、それが日本で正当な評価を得られない理由(日本人が考える典型的なパンクバンドに見えない理由)なのかも知れないなと。私が惹かれるのはしかしながらそちらの要素で、たとえばこの曲も内向的な文系青年が多少無理して宣言してる感があって、今となってはそこに何とも惹かれます。その視点で見てるものですから、80年代の彼等は私のなかでは、どんとん肩の力が抜け良くなって行く印象がありますね。 知的営為としてのPunk/New Waveには興味あり、しかしスポーツ感覚、その場限りの馬鹿騒ぎという意味でのPunkにはあまり興味が無い・・・そんな向きには、以下のような経歴は彼等のそういう本質のバックグラウンドとしての証明になるのではないかと。すなわち-生物学の博士号を持つヒュー・コーンウェル(当時28才)、クラシックを学び高い技術力のオルガンプレイを際立たせるデイヴ・グリーンフィールド(当時28才)、ジャジーなドラミングを見せる当時酒類販売会社の経営者であったジェット・ブラック(当時既に39才。来年なんと70!)、そしてリードベースとでも言うべき独特のプレイをみせるジャン・ジャック・バーネル(当時25才)。彼はフランス系イギリス人で、大学で経済を学んだ彼はまた、当時は三島への敬愛と極真空手を学んでいることで日本贔屓ということが殊更に強調されていましたね-19、ハタチの熱い思いをぶつけたアートスクール出のPunksとは全く違う知的バックグラウンドと意気込みを持っていたというのはこれだけでもわかるのでは。もちろんこれらの事実を無視しても楽しめる音楽ですが、この経歴を知ったうえで、その音楽の核に注目するとより聴き所が見えて来るような気がします。 ■She's A Wind Up - Dr. Feelgood(34) ニック・ロウ制作、ブルース/R&Bをスピードアップした彼等独特の音楽を追求。余談ですが、スティッフレーベルというのは、そもそもこのバンドのVoであるリー・ブリローから(マネージャーのジェイク・リビエラが)お金を借りてスタートしたんだそうです。 その他、TOP40入りしなかったものとしては、こういうのもあります。 ■Dancing the Night Away - The Motors(42) 彼等の1stシングルですね。パブ・ロックバンド、ダックス・デラックスのメンバーによる新バンド、彼等もPower Pop/ロックンロールリバイバル的な初期Punk/New Waveシーンになくてはならない存在。ヴァージンからの1stアルバム"The Motors"は翌10月にチャートインし、46位まで上昇。 ■Search And Destroy - Dictators(49) MC5やストージズといったデトロイトパンクの流れも汲む、NYパンクのもうひとつのエネルギッシュな側面を代表する人達による、唯一UKチャートに入った曲。 やはりPunk/New Waveフィーヴァーは過熱する一方だったようで、この時期にはたくさんのPunk/New Waveシングルがリリースされたと思います。 ■Lovers Of Today - The Only Ones このシングルがこの月に出たのかは不明ですが、77年9月13日にBBCにてジョン・ピール・セッションを録音、この曲も入っています。 翌78年に1stアルバムをリリース(チャートインせず)するオンリー・ワンズのスタイルもまた独特で、あまり英国風ではないところに彼等らしさがあるのかも知れません。ピーター・ぺレットの独特のフワフワしたVoとサイケデリックな歌詞にはディランやベルベッツの影響、そしてもちろんNYパンクとも共振していた要素はあるのでしょう。世代的にはパブロックの頃からやって来た世代で、Punk/New Wave期に古い音楽をフレッシュな感覚で甦らせたという感じです。ペレットの拙い少年のようなVoスタイルは、のちの80年代のネオサイケやギターポップのある部分に与えた影響が少なく無く、マガジンとともに、まさに「早過ぎた」音楽と言えるのでは。 (アルバム) The Boomtown Rats - The Boomtown Rats(8) このデビューアルバムがトップ10入りし、先月のコステロの1stとともに、ますますNew Waveの動きは加速して行きます。このアルバムからはもうひとつ、"Mary Of the 4th Form"が11月にトップ20入りしますが、それはまた今度ということで。 Bob Marly & The Wailers ベストアルバム"Legend" The Stranglers アルバム "No More Heroes" The Only Ones ベストアルバム "Another Girl Another Planet"
by penelox
| 2007-12-02 17:24
| New Wave
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