いよいよ78年に入り、Punk /New Waveの勢いも加速して来ます。一般的に言われるNew Waveというもののイメージは、特に79年以降の第2世代の登場、つまりパンクに触発されて活動を開始したロンドン近隣以外の地方都市のバンド、スタイル的にもパワーポップだけではなくエレクトリックポップやスカ、ネオモッド、ファンク、ゴシックなどの音楽・・・要するにポスト・パンクな音全般が出て来るあたりに重点が置かれていて、それが大きく世界中に(もちろん日本にも)定まった音楽の括りとして伝わって行った気がします。それはそれでまあわかるのですが、上り坂が無ければ絶頂期もない訳で。この78年はそういう意味でちょうどその上り坂、パンクからニューウェーブへと主役が交代し加速して行く年にあたると言えるでしょう。ニューウェーブ第一世代-パンクから変化して行く人達、それ以前から活動して来ていた人達の両方がいます-が次々と鮮烈なデビューを飾って行き、基礎部分がしっかり作られて行きます。パンクによって開かれた扉から、フレッシュな実力派ニューウェーブアーティストが次々と入って来る、という年。
主役交代の象徴的な出来事として、この1月に最初の三大パンクバンドのひとつに大きな動きがありました。1月14日に、セックス・ピストルズからジョニー・ロットンが脱退、事実上解散。初のアメリカツアー、ロスアンジェルスでの公演後のことでした。後はあちこちで読めると思いますが、ロットンの動きがむしろ重要ですね。「パンクは死んだ」というあの名ゼリフを残し、新バンド、Public Image Limited結成へと向かいます。 また、前年の11月に2ndアルバム"Music For Pleasure"、12月にシングル"Don't Cry Wolf"をリリースしたダムドも、この時期に至ってどちらも全くチャートインしないという事態になり、この春にはこちらも一旦解散してしまいます。前回に書きました先月リリースのワイアーの1stアルバムで既に匂わせていたパンクムーブメントの終焉は、この月にはやくも表面化し始めたと言えますね。 (シングル) ■The Morning Of Our Lives - Jonathan Richman & The Modern Lovers (29) 彼等はもうこの段階で実に安定した人気を誇っているというか、この頃が英国での人気の絶頂というべきでしょうか。ライブアルバム"Live"から。肩の力の抜けた、すっとぼけたユーモアを感じる彼の音楽は、チャートの常連であることとはまるで関係ない感じ。むしろPunk/New Waveとしての理解、というのももはや越えた存在だったのかも知れませんね。これは映像がありませんでしたが、こちらで試聴できます。14曲目です。 それにしても、全く古さを感じないのは、昨今彼に似た佇まいの音楽(特にこのモゴモゴした歌い方)が増えたからでしょうか。2007年にヒットしても全然遜色ないですね。 ■Quit This Town - Eddie & The Hot Rods (36) パブロックの出自を強烈に残す彼等。先月紹介したアルバム"Life On the LIne"からのシングルカット。これもYouTubeに映像はないようです。 ここで試聴できます。18曲目です。相変わらずスピード感のあるR&Rですね。 ■Rich Kids - Rich Kids (24) セックス・ピストルズを脱退したグレン・マトロックが、スコットランドの(アイドル的人気を誇っていた)バンド、Slik(スリック)にいたミッジ・ユーロらと結成したバンド、リッチ・キッズのデビューシングル(ちなみにそのスリックは、その後Zones(ゾーンズ)というNew Wave/Power Popバンドに変貌します)。New Wave初期の、まさに英国流Power Popの音というとわかりやすいでしょうか。非常に親しみ易い、キャッチーなメロディーが特徴のR&Rバンド。この特徴は、ユーロが後に参加する新生ウルトラヴォックスにさらに洗練され(もちろんタイプは違いますが)受け継がれますね。 ■Beauty And the Beast - David Bowie (39) 78年の東京公演から。やはりこの頃のPunk/New Waveも、そろそろロックンロールばかりだとバリエーションに乏しい。ちょっと単調なバンドは飽きられ、音楽の質が問われはじめる訳ですが、この時期にボウイのようなアーティストが一方で君臨していることで、これから数年の間に出て来るエレポッブ/ニューロマンティック/ネオサイケ/ゴシック(当時はポジティヴパンクと言ってましたが)、それにネオアコースティック系の一部などのアーティストの多く・・・要するにかなり多くのまだデビューしていない若者達にインスピレーションを与えて行ったという気がするのですが、どうでしょう。 ■Statue Of Liberty - XTC チャートインしませんでしたが、まさにNew Waveムーブメントの旗頭となる彼等の、シングルとしては最初の作品。変態ポップとも評される彼等ですが、オルガンが印象的な一見非常に伝統的なブリティッシュR&B的なサウンドでありながら、変わった和音構造と個性的なアンサンブル、アンディー・パートリッジのねじれたVoとひねりのきいたメロディーがおやっと思わせる・・・最初から彼等以外にあり得ない個性的な音ですが、よく聴けば過去の音楽-60年代ソウル/モッド/R&B、グラムとパンクがうまく出会った音でもあり、それをこなれた演奏で上手く収めているという感じです。それはある意味保守的ではあるのですが、その纏め具合、編集のアイデアが非常に斬新で、センスが良いというか、クレバーというか。そこが、彼等がPunk以後の、質が問われたNew Wave時代の先陣を切ったバンドのひとつと言える所以でしょうか。先に出した3D-EPは12インチという当時としては珍しいリリースフォーマットで、それが原因で売り上げに繋がらなかったと言われています。こちらの方は歌詞の一部が猥褻という理由で、BBCに放送禁止になってしまいます。チャートインしなかったのが実に残念な彼等のクラシック。 前にPVも観れたんですが、今は見つからないようですので、TV番組"Old Grey Whistle Test"からのものです。 (アルバム) この月にトップ40にチャートインしたPunk/New Wave系のアルバムはありません。チャートインしなかったアルバムリリースとしては、こういうのがあります。 ・The Album - Eater 平均年齢16才のパンクバンド、イーター。このアルバム1枚で消滅。 ここで試聴出来るんじゃないかと。 映像もありました。私観れないんです(苦笑)が、どんなもんでしょう。ベルベッツやボウイのカヴァーもやっていたというのが興味深いですね。16でそこまで音楽の趣味が良いというのも、英国ならではでしょうね。 ■No Brains - Eater ・The Modern Dance - Pere Ubu 素頓狂な痙攣ボイスをきかせる巨漢のリーダー、デヴィッド・トーマス率いるアメリカはオハイオ州出身のペア・ウブ。先鋭的アート性と狂ったユーモアが同居したバンドのデビューアルバム。ここで試聴できますね。 わざとこういう並びにしているつもりはないのですが、短距離走で燃え尽きんとしたパンクと長距離走のランナーを多数抱えるニューウェーブ。その主役交代という意味でなんだか象徴的な2アーティストです。 また、上に挙げたXTCのデビューアルバム"White Music"が1月20日に発売されています。これは2月にチャートインしますので、改めて書きたいと思います。 Jonathan Richman & The Modern Lovers シングル "The Morning Of Our Lives" Rich Kids シングル "Rich Kids" XTC シングル "Statue Of Liberty" Eater コンピレーション "The Compleat Eater" Pere Ubu アルバム "The Modern Dance"
by penelox
| 2007-12-27 11:11
| New Wave
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