2009年 12月 28日 ( 1 )

絵本の日々から 04

「ぶたぶたくんのおかいもの」
作・絵: 土方 久功 / 福音館書店 (1970)


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 アナグマ、犬と来ると次は豚・・・なんてつもりはないのですが(笑)、絵本で動物と乗り物は避けて通れませんよね!

 しかし、私が5歳だった1970年に発売されたこの絵本の魅力を語るのはなかなかに困難な作業です。物語自体はシンプルで、お母さんに頼まれて、買い物に町を回るだけなんです。最後のページで回ったコースが俯瞰されていて、それが幼児にとって楽しい、というのは確かにあります。でも、この本の魅力はどうもそれだけではないように思うんですよね。

 そもそも主人公の「ぶたぶたくん」が決して世間的に見て可愛いらしいとみられる動物ではない・・・これも奇妙なんですが、絵もまたどこか変なのです(笑)。いや、くすんだ色調も子供向けとしたらあまり普通ではないし、出て来る人物も売られてる商品も愛らしくない(顔つきパン!)。けったいなお店のけったいな人物達。出会う友達も特に仲がいいようにも思えない。何より、ぶたぶたくんが本名ではなくて、お母さんもホントの名前を忘れてしまったという・・・そんな、あちこちのねじが何本かずつ外れていることに、大人になって見ると不気味な感じがするのだけれど、子供の頃を思い出すと、十分現実的で、共感出来てたんですよね。その証拠に、この絵本を見ると幼少時、母に連れられて逆瀬川の商店街を回ったときのことを思い出すんです。当時の逆瀬川というのは、いくつかの商店街が無秩序に並んでいて、今から考えたらよくもまああんなところに・・・と思うような奥まった場所に奇妙な店があり、不思議なおばはんがいて、変なものが売られていたのですから。そしてそんな空間で、偶然特別仲良くない友達と会ったりして、それで何だか流れで同行してみたりして、また探検が続く・・・。80年代に入ってすっかり姿を消してしまうそういう商店街での、不思議な、だけど今となっては貴重な日々が浮かんで来ます。洗練とはほど遠く、どこでどう繋がってるのか訳がわからないような無秩序さなんだけれど、エネルギーのなかに温かみも冷たさも内包した迷路・・・そんな商店街が、子供の目には、遊び場として面白くて仕方なかった。

 今絵で生計を立てている弟が一番入れあげていたこの絵本に対してオフクロは、よく読まされたけど気持ち悪かった、あんたら何であんな本が好きだったんかねぇとか言うのですが(笑)、作者のベストセラーで、福音館の売り上げベスト100でも上位にランクしているらしい。子供の視点(の、言葉を介さないがゆえの自由さ)を思い出すのに良いのかも知れない、これもまた別の意味での古典なのかも知れません。
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by penelox | 2009-12-28 00:55 |